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5

「ああ、そうだ。魔剣化させれば俺も戦力になれるからな」


 俺の返事を聞いたシースは嬉しそうに笑っていた。


「ふむ、先程の魔狼の骨のボーンソード……このやり方はリベット帝国の陸軍式ですな? 実に良い出来ですが、ちょっとばかし預かりますぞ?」


 彼はそう言うと俺の手から骨を奪って行ってしまった。

(いったい何をするつもりだ?)

 そう言おうと思ったのだが、俺はアルティスに呼ばれたのでシースには後で話をする事にした。


「先程の魔装の話ですが、ローギウスからある程度聞きました。ブルーノーツと呼ばれる魔装は私も知りません。私達が追っていたのは『ロカイ』『ブラックリリー』の2つでセレスティア号で密輸されていた品です」


 アルティスの話しを聞いた後、第三の魔装という事がわかった以外謎が深まるばかりだった。

 食後、アルティスに気分転換に外の空気を吸いに出ることを伝え出たのだが、そこで見た光景も中々に興味深い物があった。

 ─── 甲板に出るとエリナ達がせっせと氷狼の解体作業を行っていたのだ。

 彼等は慣れた手付きで次々と毛皮を剥いでいき、内臓を取り出していく。そして肉を切り取り、塩漬け用の樽に入れていく。その手際の良さは見事としか言いようがなかった。


(成る程、確かにこれは大変だな)


 俺がその様子を見ているとエリナが話し掛けてきた。


「おい!ライル、アンタも手伝え!」

(ふむ、手伝っても良いか……良いよな?アルティスにも許可は得ているしな)


 そう思い俺は手伝う事にした。

 俺が作業を終える頃には、樽が4つ蓋をされていた。

 そこに二振りの剣を携えてシースさんがやってきた。


「ライル殿、爺の手慰みではあるが、整えと握りを拵えた二振り、良ければ使うと良い」

「良いのか?」


 俺がそう尋ねると彼は微笑みながら答えた。


「勿論ですとも、ライル殿には久々に帝国式の骨剣を見せて頂きましたからな」


 そう言って再び頭を下げると彼は樽を運んで行ってしまった。


(俺が帝国陸軍って言ったっけ?)


 そんな事を考えつつ俺は部屋へ戻ろうと思ったのだが、アルティスに呼び止められてしまった。


「すみません!少しお話があるのですが……」


 彼女の様子から大事な話だと感じたので俺は話を聞く事にした。


「明日の朝、人工物らしい建物を見に森に入ります。エリナ船長、シース、ライルさんが先行で翌朝までに戻ってこれなかった場合は残りの組が探索に向かいますので御願いします」

「ああ、分かったよ」


 俺がそう答えると彼女は船室へ戻って行った。


(ふむ、明日の朝出発か……)



 ───翌日────


 日が昇ると同時に俺達は森に足を踏み入れた。森の木々は鬱蒼と生い茂っているが、人の居た形跡は今の所無い。

 強いて言うならば獣道というくらいだろうか?

 中々歩き慣れない足場にエリナは苦戦しているようだが、シースさんは俺と同じペースで登っていた。


「アンタ達、こんな足場でよく普通に歩けるな?鍛え方が違うのかね」


 そんな会話をしていると少し先頭を歩いていたシースさんが話し掛けてきた。


「2つに分かれた道がある。どちらに行くかね、船長?」


 シースさんがそう聞くとエリナは悩みだした。


「うーん、どっちに進めば良いんだ?」

「それを決めるのが船長の仕事ですぞ」


 悩む彼女に笑いながら答えると彼は俺を見た。


(これは俺に決めろって事かな?)


 俺は少し迷った後、崖の上の彼に話し掛けた。


「なぁ、そこから細かい風向きは分かるか?」


 俺がそう尋ねると彼は考え込んだ後に答えた。


「……ふむ、やや北寄りの風が吹いていますな」

「そうか、なら右の道にしよう」


 俺がそう言うと彼は驚いていた。


「どうしてですかな?」

「もし俺達が目的の場所に着いたとして、見張りが居たら厄介な事に成る可能性もある。特に獣人や魔獣相手だったら風上からの匂いでバレる可能性が高い。先ずは迂回して風下側の高台から様子を伺うべきだ」


 俺の意見にシースさんは頷き、エリナは感心した顔をしていた。


(俺も一応は軍人だったからな……これくらいの知識はあるさ)


「では先に進もうではないか!いやぁ、お若いのによく考えておられる!」


 楽しそうに歩く彼に俺は話し掛けた。


「ところで目的の場所ってのはなんなんだ?」


 その言葉に彼は足を止めた後、俺を見た。そして頭を掻きながら困った顔で答えた。


「辛うじて見えただけですのでな、分かりませんのぉ……まぁ、人工物なのは違いありますまい」

「そうか……どんな建物なのか、それだけでも分かれば

 な」


 俺がそう呟くとエリナが不思議そうに尋ねてきた。


「アンタ、何でそんな事聞くんだ?」

「もし隠れ家的な物だったら警戒している可能性があるだろ?だから何人居るかで侵入するか否かを決めた方が良いかと思ってね」


 とはいえ、現状誰とも遭遇していないのが問題だな。

「ふむ、成る程ですな」


 俺の言葉に彼は感心していた。

 そこから少し歩き高台に着いた所で、望遠鏡を使い周囲の状況を確認し始めた。

 建物は襤褸襤褸な状態であり、周囲に人がある気配はない。俺は望遠鏡を彼に返した後、シースさんに話し掛けた。


「屋根は崩れ落ちているが、建物自体はしっかりしているように見えるな」


 俺がそう呟くと彼は答えてくれた。


「そうですなぁ……辛うじて残った扉も薄く開いとるようですしな、見張りの1人は居るやもしれませんぞ?」


 そんな彼の言葉を聞いた後、エリナは俺に尋ねてきた。


「あの建物は何だと思う?ライル」

(さてどうしたものか……)


 俺がどう答えるか悩んでいるとシースさんが俺達に話し掛けてきた。


「ここは1つ中を調べるか、一度引き返すかの何方かでしょうな?」


 彼の言葉にエリナは俺を見ながら答えを待った。


(どうする?何か良い案はあるか?……あ!そうだ!)

「あそこが隠れ家なら何かしらの痕跡がある筈だろ?一旦戻るぞ!」


 俺がそう答えるとシースさんは笑っていた。


「では戻りましょうかね」


 俺の言葉を聞いたエリナは少し不満そうな顔をしていた。

 ───拠点に戻ろうと森を進んでいる途中、シースさんが話し掛けてきた。


「ライル殿は不思議な御方ですな?」


 彼の言葉に俺は首を傾げていた。


(うん?何でだ?)


 彼が何が言いたいのか正直良く分からない……ただ俺自身は普通だと思っていたんだがな。

 そんな事を考えつつ俺が彼に逆に質問してみたのだが何故か呆れられながら答えられた。


「いやなに、これからあの中に偵察の為に少数の者達だけで侵入する計画でしたが……お気づきかな?!」

「あぁ、正確な位置は判りにくいけど、視線を感じたから戻ったっていうのもある。人数は三~四って所だろうな」

(多分、三~四人って所だろうな……気配察知で分かったけど襲うとしたら人数が少な過ぎるのも変だからな)


 俺がそう言うと彼は愉快そうに笑っていた。


「はっはっは!これは頼もしいですな!」


 そんな中、エリナは別の意味で驚いていたようだ。


「はぁ?!何でわかったんだ?そんなのアタシは分からなかったぞ?!」


 そんな彼女に俺は答えておいた。


「簡単さ、俺の魔力感知は視界外もある程度把握出来るんだよ」


 特に軍人時代、人質の居る場所を調べる時に重宝した技能の1つだ。


「というわけで、出てきてもらおうか!!」


 茂みの方へ向かって話し掛けると、大柄な男達が四人現れた。

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