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不完全な私たち二人が、生き残った理由

 私と彼は、他のみんなとは違う。

 皺だらけの肌。張りのない身体。どうにも頼りなく、すぐ潰れてしまいそうな私たち。

 みんなの肌は、つやつや輝き光を反射している。引き締まった弾力のある身体はプルプルして、水でも何でも弾きそう。

 私と彼以外、誰もがキラキラしている。不完全な私たちは隣同士、ずっとつながっていた。


 まれに、私たちのような不完全な者が生まれてしまうらしい。

 みんな私たちを可哀相な目で見る。生まれつきだから仕方ないって。

 つやつやプルプル、私たちには関係ない。だから、私はつやつやなみんなを、羨ましくは思うけど、妬んだりはしない。隣の彼も同じ気持ちだろう。

 たまに、つやつやになったら、どんな気持ちなんだろうって思うけど。

 プルプルになったら、世界は眩しく見えるのかなって考えるけど。


 私の仲間たちは同時にいっせいに何百万と生まれ、そして幾千ものコロニーに分かれた。

 私のいるコロニーはそれほど大きくなく、千人ほどの仲間がひしめき合っている。

 そしてみんなが噂する。世界の終わりのことを。


 コロニーの中には、恐ろしい終末を迎えるものがあるそうだ。

 突然、天から、巨大な岩の塊が現れ、何度もコロニーを襲撃する。そうなると、多くの場合、コロニーは終焉を迎える。残るは、岩塊に圧迫された私たちの残骸。

 まれに、メンバーの一部が残る場合もあるが、それでも、コロニーの役目は果たせない。

 私たちの役目……それは、この身の愛で、世界を包むこと。


 だけど、私と彼は不完全だから、皺だらけの肌に張りのない身体だから、役目を果たすことはできない。

 でも仲間は優しいから、私たちが不完全だからといって、責めたてたりはしない。

 しかし……私は願ってしまう。決して思ってはいけないことを望んでしまう。



 突然それはやってきた。噂通りだった。

 巨大な塊が落ちてきた。それは仲間を残酷にも一人一人、押しつぶす。私たちを全滅させるつもりなのだ。仲間は潰れるたびに一声悲鳴を上げて、消滅してしまう。

 完全たる私の仲間たち。つややかな肌は破れ、張りのある体は潰れ、死屍が累々と積み重なる。

 私と彼は不完全体同士で、身を寄せ合い固まるしかなかった。

 少しずつ、その塊が近づいてくる。

 ついに、私の隣の仲間も、同じように消えてしまった!

 私の終わりがやってきた。


 私は覚悟を決めた。その塊が私に触れ、圧し潰そうとする……が、私は潰れなかった。

 何度かその塊が私を押しつぶそうとしたが、私は無傷だった。

 同じように不完全体の彼も無傷だった。私たち二人は助かった。

 そして、塊は他の仲間への攻撃を開始した。


 無残にもコロニーは滅び去った。私と彼だけを残して。

 完全たる私の仲間は、消えてしまった。

 そして醜い不完全体の私と彼だけが、コロニーで生き残った。


 私はこの状況を……世界の消滅を願っていた!

 ただ、彼と二人でいることを願っていた!

 不完全で役に立たない醜い自分を、どれほど呪ったことだろうか。

 つややかな肌に張りのある身体。どれほど欲しかったことだろうか!

 が、私と彼は不完全ゆえ、生き残ったのだ……世界は今、私たち二人のもの!

 笑いたかったが、私も彼も不完全ゆえ、声を出して笑うことはできなかった……。




 三十センチ四方の小さなコロニーは、たった今、無惨にも破壊された。

 ジェノサイドをもたらした者は、一つの世界を終わらせ、満面の笑みを浮かべていた……。



 プチ・プチ……この潰す感触、たまらないよね~。お菓子の缶にプチプチのシートが入ってたから、また潰しちゃった。

 始まると、全部のプチプチ潰すまで辞められなくなっちゃう。

 でもさあ、たま~にだけど、潰れないヤツあるんだよね。隣のプチプチとつながっちゃってるから、押しても破裂しないで、空気が隣に移動するだけなの。

 あれ、地味にストレスたまるんだよね~。


 プチプチは川上産業の登録商標で、一般には気泡緩衝材と言うそうです。

 登録商標をそのまま小説に登場させるのは、問題ないみたいです。

 なんと勇者も王様も天使も登録商標だそうです。登録商標にどんな言葉があるかは、特許庁のサイトで確認できます。

 最近の気泡緩衝材には、あえて隣の気泡とつなげて、潰れにくくしている製品があるそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私は、エアキャップという名前で記憶していました。 でも皆、プチプチって言いますよね!
2024/05/13 19:57 退会済み
管理
[良い点] こちらにもお邪魔させて頂きました。 二度目まして。 さてさて、カビの話かなー。それとも菌類のコロニーでキノコとか、なんて考えながら読んでいて、まさかのプチプチにびっくりしました。 …
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