16日目①
16日目①
宿は前情報通り可もなく不可もなく、王城に比べればひどいが、それでも寝れない事はない。
「アリトさーん、朝食できてるよー!」
猫のカバン亭の看板娘、イリアちゃん ー12才、おかっぱな感じのキューティクル多め、将来はパパと結婚したい、だけど昨日俺といろいろ話したりお風呂上がりに一緒に遊んだりしたら「アリトさんも有りかも」と言い出していきなり宿屋が修羅場になったーが部屋の外から呼んでくれたから部屋をでる。
朝食はウインナーとパン
うん、普通。コーヒーがあればなお良かった。
そう思いながらモサモサと食事をとる。
城からでてなんだかんだいってようやくちょっと落ち着いた朝。今日はこれから今後どうするかを考えていかないといけない。
一番にやるべきはこの国を出ることだろう。とくに逃げたことを気にしていないようだが、人をいきなり召喚して素質がないと露骨に放置するような国はこちらから願い下げだ。
あと今の状態でクラスメイトに会うのはいろんな意味で辛い。リュージ達に対抗できる手段もないしな。
当面はどっかの国に行ってそこで生き延びる手段を身につけるのが第一優先になるだろう。
「お義父さん他の国の事とか詳しいですか?」
「おい!テメー何が『お義父さん』だ!!そのセリフを聞くのはまだ10年は、ぐずっ...は、早いだろうが!?」
アントニオさん-45才宿屋の亭主、娘にめちゃくちゃ甘く、泣き虫-とはすでに昨夜の緊急家族会議?で停戦済みだ、むしろ茶化すと必ず涙目になるのが面白い。
「そうだなー近隣の国は知ってるっちゃ知ってるが聞いた話しくらいだな」
「全然そんなので良いですよ、この国でてどこで暮らそうかなと考えてるんですよね」
「そうだなー南にあるビッグマン国は海を挟んだサンブック国とちょこちょこ戦争してるくらいしかわからないなー、あとは北にデューレイン共和国があるが、あそこの情報は全然降りてこないからわからんな」
「なるほど!ありがとうございます!」
俺は努めて爽やかに返す。
なるほど、確かに情報は少ないが近隣も近隣で穏やかじゃない事はわかった。
一見危ないように思うが、俺からすれば不安定な方が入り込みそうだし、金を稼ぐ手段もありそうで、有難い。
「別の国に移るのって簡単にできますかね?」
「どうだろうな?普通の国民だと難しそうだが、お前さんは事情がありそうだしな。あとは冒険者ギルドや商人ギルドとかに入ればギルド管轄で他国に出入りはできるかもしれねぇな」
冒険者ギルドや商人ギルドねぇ、これまたベタな設定ではあるな。俺が入るとしたらやっぱり冒険者ギルドになるのかな?
「アントニオさんありがとうございます!」
「おう、またなんかあったら聞いてくれよ。あとイリアと遊んでくれてありがとな!」
それからはしばし朝食を楽しんだ後、外へ出かけた。
「商人ギルドに入るにはある程度の金、もしくは経歴、もしくは素質が必要……か」
とりあえず商人ギルドとやらに行って情報を聞いたが、結果としては無駄足に終わった。
まず入るにあたって資格が必要という事だった。それ自体は元々そんなもんだろうと思っていたのでしょうがない、経歴というのは、過去有名な商会に所属していたかどうかというもので、基本的に個人事業はある程度の上納金がないと入らない仕組みになっていた。
また国を行き来できるが、その際にはその国の商業ギルドに改めて所属し直す必要があり、商業ギルド毎に所属の条件が違うらしい。
しかも国内にもいろいろな商業ギルドがあり統一されていないとのことで、なんというかいろいろ残念な団体のようだ。
まぁ、この文明レベルで考えればそんなもんか。ちなみに俺は元の世界で経営学も独自で勉強してたが、経歴にならないと鼻で笑われた。俺が入る価値はほぼない。
そうなると冒険者ギルドしかないようだ。
そう思いながら俺は冒険者ギルドの建物へ歩いて行った。