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10日目

10日目



異世界に来てから10日目になった。

ここまでのなんやかんやは説明するととても長くなるが、展開としてはやっすいライトノベルにいくらでもあるような内容なのですっごく簡単に説明すると。

ある日クラス全員が異世界に転移した。

そんで、よくあるクラス全員異世界召喚だったらしく、これまたありきたりのどっかの王様がでてきてこの世界を救ってほしいとかうんちゃらかんちゃらで、俺たちには勇者になれる素質が眠っているとかなんか、そしてその素質を目覚めさせて魔王を倒してくれとか制圧してくれとかそんな内容をくっちゃべっていた。


んでなんやかんやあって3日目に素質を目覚めさせる儀式があった。


これまた異世界に転移した俺たちだけの特権で素質を目覚めさせると自分のステータスや使えるスキルとかが見えるようになるというお決まりの展開にクラスの奴らの半分は盛り上がり半分は戸惑い、という感じで俺はどうでもいいから日本帰りてーと思っていた。


なんでこんなに投げやりに説明しているかというと後で話すけど正直俺自身がすごく投げやりな気分になっているからだ。


当然のようにクラス全員強制で素質を目覚めさせる儀式が行われたのだが、俺の番が来て素質を目覚めさせたところ、


「剣士」


これが俺の素質だった。


まぁ「ふーん」って思うじゃん。

クラスの奴らの中では竜騎士とか聖女とか魔女とか明らかに強そうな素質だったり、賢者とか発明家とかの使えそうな素質の中では「剣士」ってなんか普通じゃないですか。

あれ、これちょっとまずくね?

自慢じゃないがバカではない頭を回転させてみても展開としてはあんまよくない気がするのよ。儀式をした神官もそれまでの「おぉ!」とか感嘆の声を上げずに「・・・」みたいな感じだし。


「え、この『剣士』って素質はレア度的にはどんな感じですか?」

聞いちゃうのはしょうがないよね? そしたら

「レア度ですか……正直ノーマルといいますか、いわゆるどこにでもある素質です」

とか神官答えてくれちゃうの。





あ、終わったー




これ絶対ダメなパターンだ。って瞬時に悟ったね。



だってもう皆ざわついてるし。

たまたま見に来ていた王女様も憐れなものを見るような目に代わってるし。


先に「竜騎士」を目覚めさせて得意げになっていたリュージも

「ちょwwwwアリトお前ノーマルの素質ってwwww」

とか調子乗ってるし。


彼女(おそらくこの時点でサキにとっては『元』カレになったのだろう)のサキも

「え、アリト……嘘……」とかドン引きかましてるし。


俺のおかげでクラス成績永遠のナンバーツー。ちょい陰が入っているナガレも「ふっ」とか嘲るような笑い出してるし。しかもそのあとこいつ「勇者」の素質目覚めさせるし。


そんなこんなで素質を目覚めさせる儀式で俺は「剣士」という超ノーマルのモブキャラを決定付けられてしまった。






そんで、4日目、5日目とすぎるうちにあれよあれよとモブキャラとしての宿命をすぐに体感していくことになる。


まずグループがそもそも違ってくる。


自慢じゃないが転移前はカーストトップの上位グループにいた俺が、同じく運悪く「剣士」(ほかに2人いた)の素質のクラスメイト(名前度忘れした、A君B君としとくか)と一緒になり、とにかく雑な訓練や明らかに放置的な自由時間を言い渡され、どう考えても戦力として扱われていないような部屋に雑魚寝するようになった。


もうダメだと思ったね。このままじゃお先真っ暗だ。たぶんクラスのグループの荷物運びがいいところになってしまう。


そう思って5日目の自由時間から城の中のいろんな人に話を聞いたらどうやらそれどころじゃないらしい。

とても仲良くしてくれたメイドさんがこっそりと教えてくれた。


「転移されてきた人で使えないと判断されたら魔物の大群の攻撃をうけた際に盾に駆り出されたり、明らかな死地に飛ばされたりしちゃうの」


確かにこの国に無能を大切にするメリットはない。かといって処分することもできないとなれば当然発生するのはパージか。


いや、しかもこのクラスは転移前と序列が変わったことによって俺のことを邪魔だと思っている奴は多いかもしれない。めちゃくちゃ危ないかもしれない。


このままじゃまずい。家に帰ることもできずに俺はこんなところで野垂れ死ぬわけにはいかない。




そんなことを考えながら今日10日目。




リュージが俺に「これでジュース買って来いよ」と投げてきた100ゴールドを握りしめ俺は城を抜け出した。



こんなところでモブで終わってたまるか!

何としても元の世界に戻ってやる!

でもその前にクラスの奴ら、この世界で俺を見下した奴らを見返してやる!

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