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初恋のもだもだ  作者: 歩道
9/12

呪いの言葉と下足室ーside U

スピーカーから終業の鐘の音が聞響いているのに、担任の水口先生は伝え漏れ事があったようで、まだ話している。


早く終われよ。


これから、意を決して彼女と話すのだ。

ソワソワしながら、何て話しかけようか考える。


まずは、「この間はありがとう、嬉しかった」と伝えたい。

それからそれから、夏休みの花火大会。

いや、テスト期間に一緒に勉強なんかも捨てがたいのでは。

自分で言うのもアレだが、俺の成績はそこそこなのだよ。


1人で居たらそりゃもーベスト。

周りに人が居たらば恥ずかしいし、モゴモゴ不可避。

それ。かっこ悪い。オレ。恥ずかしい。


担任が遅くなってごめんなー。と言ってショートホームルールをやっと終わらせた。


カバンに教科書と体操着を詰め込んで、廊下に出る。

今日からテスト期間なので、部活はない。

クラスメイト達がゾロゾロと出てきた。

隣のクラスの廊下は、うちのクラスより先に帰宅を開始していたらしく人もまばらだった。


ソワソワしながら辺りを見る。廊下に、彼女の姿はない。

階段を少し早足で駆け降りて、下足室に向かおうとしたしたところで「宇っ知山くん!」と、後ろからクラスメイトの渡辺さんに話しかけられた。


「この前、シャー芯借りたでしょ?だからこれお礼なんだけど!」

と言って、カラフルなペンで「ありがとう!」と書いてある苺っぽい匂いのする付箋がついた新品の消しゴムを差し出された。


「え?あ、ああ。別にいいよ。シャー芯くらいで…」

目線で下足室を軽く確認しながら返事をする。

いない。


「えー!そんなのダメだよー。この消しゴムオススメでね?私も持ってるんだけど……」


渡辺さんが何か話してるけど、俺はそれどころではなく、遠目で隣のクラスの下駄箱を順番に見て行った。


「…でね?今日図書館でみんなで勉強しよって話しててさ…。宇知山君もどうかな?って…」


隣のクラスの下駄箱はほとんど上履きがしまってあった。

もう帰ってしまったのか?と意気消沈して、心の中で担任・水口に呪詛を吐く。


トイレで用を足した後にトレペがありません様に。

キャラメル噛んで銀歯が取れます様に。

靴の中に小石が入りますように。


軽く息をついてから渡辺さんに目をやると、渡辺さんは「どうかな?」と髪についているピン留めを触りながら尋ねてきた。


全然そんな気分じゃない。

でも、彼女とならば…。

いや。こうなってしまっては、一刻も早く家に帰って部屋を暗くして布団を被っていたい。


「ああ。いや用事があるから…。ミンナデ勉強ガンバッテ…」


と覇気のない声で返して、横を過ぎようとすると

「えぇ〜そっかぁ…。じゃあ今度は一緒にね!!」

と言って、カバンに消しゴムを捩じ込まれた。


カバンから消しゴムを出して返すのも億劫で

「ああ…。」

と、生返事をしてそのまま自分の下駄箱に向かう。


はぁ。


朝礼の彼女を思い返す。


彼女は、こっちを見た。

それって俺を気にしてたんだよな。

いや、、たまたまだったのでは…?

立ち上がった決心が萎れる。


はぁ。


昨日と同じ、ため息色の帰宅か。


砂がじゃりじゃりした下足室のコンクリの地面に自分の靴を放り投げた。

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