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初恋のもだもだ  作者: 歩道
1/12

初恋の情景ーside S

水色の空がオレンジとマゼンタに煌る。


部活帰り いつもの通学路。

1人、十字路を渡って進む。

左側のガードーレールの内側、車屋が並ぶ前を歩き、真新しい大規模マンションの前を過ぎた。ふと顔を上げると20メートル程前に、背の低い男子と背の高い男子が並んで歩いている。


目を丸くして、左側の男子を見た。

急に顔が熱い。


2人は歩きながら、何やら楽しそうに話している。

何を話しているんだろう?

チラチラと時折、笑った横顔が見えた。


脳に心臓があるみたいにドクドクと音が頭に響く。

顔は、まだ熱い。


男子2人が片手を挙げて別れた。右側の男子は、道路の右側に渡って行く。急いでいるのか小走りで走って行った。

その先にある防音壁の着いた高速道路を、歩道橋で渡るのだろう。

あいつは私と同じ方向。


1人になった彼を見る。

通学カバンを肩にかけて歩いていた。

周りを見渡してみると、他には誰もおらず、この道を歩くのは私と彼だけだった。


なんだか恥ずかしくなって俯いた。

頭が茹だったみたいになってきて、ソンソワと、いてもたっても居られなくなる。

隣のクラスだし接点なんて、ない。


でも、私なんか、だって


纏まらない思考の中「こんな場面2度とないかもしれない。私を認識して欲しい」と言う気持ちが芽吹いた。

瞬間。

私は走り出していた。


ーーねぇ待って!


首だけで一度振り返る彼。

私を見てから、どうしたんだろう?と言う顔をしたまま体ごとこちらを向く。


呼び止めてしまった。


どうしよう。恥ずかしい。何を話そう。どうしよう。私のこと知らないよね?どうしよう。いきなり何を話せばいいんだろう?どうしようどうしよう。


ぐるぐるした頭のまま、彼の前に辿り着いてしまった。運動部なのに、たったこれだけの距離でビックリするほど息が上がっている。きっと顔は真っ赤だろう。

そして息を切らせて下を向いたまま…


「好きですっ!ずっと好きでした。

付き合ってください!」


…何を言っているんだろう私は。

混乱する頭で考える。

恥ずかしくて怖くて顔を上げられない。

どうしようどうしよう。無理だ。

私のことなんか知らんだろう。無理だ。


返事はない。


どうしよう。せめて友達から…。

花火大会一緒にって…いや、こんな知らん女子とじゃなくて友達と行くか。

返事は要らないから、まずはお知り合いになりたいって、私の存在を知って欲しかったと伝えようと決心し、私は茹ダコの様な顔を、恐る恐るあげる。


水色の空がオレンジとマゼンタに煌る。

彼越しに見える空の端の方は紫が混じっていた。

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