第八十八話 準決勝
さあ、いよいよ準決勝と気合いを入れていましたら、その前にお昼の休憩が入りました。
居酒屋貴賓席に、主役の四人が登場します。
「あのー、皆さんこんな時ぐらい家族と一緒に過ごしてもいいのですよ」
律儀に僕の元に来てくれる四人に、笑顔で家族と過ごすことを提案しました。
「はーーっ」
全員からあきれられた。
「あの、ノコ様、私にとっての一番の家族はこちらの皆さんです」
ンデラちゃんが真っ赤な顔をして、もじもじしながら言いました。
ンデラちゃんはいい子ですねえ。思わずハグをしたくなりヨタヨタ、ンデラちゃんに近づきました。
師匠のローズが僕の行く手を阻みました。
そ、そうでした、これはセクハラです。
「ぎゃーはっはっはー、それもあるけど、ここに来れば美味しい食べ物があるのじゃ、他所には行けないのじゃー」
ユーリさんが身も蓋もないことを言います。
その言葉を聞いた四人が真っ赤になりました。
ず、図星なのですか。
今の、居酒屋貴賓席は大変な事になっています。
回転寿司をはじめました。
レーンは水路を作って流れる水に桶を浮かせて作ってみました。
そこにお寿司や、デザートをのせて流しています。
これなら、遠慮しないで好きなものを好きなだけ取って食べられます。
主役の四人も喜んでくれているようです。
食事が終るといよいよ試合開始です。
観客席からは、ややヒュナコールが多いですが、
全員の名前を呼ぶ声が聞こえます。
それぞれのファンがいるようです。
そして、向かって手前の舞台では、ローズの弟子ンデラちゃん対アクエラさんの弟子のヒュナちゃんの試合。
奥の舞台ではユーリさんの弟子ツェシュちゃん対デルイドさんの弟子メグちゃんの試合が始まろうとしています。
「はじめー」
手前の舞台では、ヒュナちゃんが攻撃を仕掛けます。
ンデラちゃんが、つらそうですが、何とか裁いています。
レベルが高いヒュナちゃんが力で押して、それを技術のンデラちゃんがさばいているように見えます。
「あーー、だめだー」
僕がつぶやくと、ローズが僕の顔をのぞき込んで来ました。
ンデラちゃんは、必死でローズの修行についていったのでしょう。
考えられないぐらいの体さばきで、ヒュナちゃんの攻撃を裁いています。
でもレベルの差が大きくついているのがわかります。
魔王のレベルアップの恩恵は、ヒュアちゃんとンデラちゃんのレベルの差を、百や二百じゃないほどの大きな差にしていると思います。
「僕は、魔王の本気を見誤っていたみたいですね」
「そうです。私がンデラちゃんのことを、心配した意味がわかって貰えましたか」
ローズが心配したように技術で何とかなる差では無いようです。
「うん、でもそれだけ差があるのに、うまく戦っています。さすがですね」
「ふふふ、自慢の弟子です」
必死で戦うンデラちゃんでしたが、勝負に決着がつく瞬間が来ました。
痛んだ舞台の石畳の窪みにンデラちゃんが、ほんの少し足を取られました。
その瞬間ヒュナちゃんの渾身の一撃が放たれました。
「きゃーーー！！」
ンデラさんは、ここまでヒュナちゃんの攻撃の力を、上手に受け流しながらたたかっていましたが、この攻撃は両手で真正面からうけてしまったのです。
悲鳴と共に吹き飛ばされて、体があり得ないほど回転しています。
清楚でおしとやかなンデラちゃんのパンツがもう丸出しです。
「おおおおーー」
会場から低いどよめきの声が上がりました。
場外に綺麗に着地したンデラちゃんが赤い顔ですかさずスカートを直しました。誰だーこんなけしからん服をンデラちゃんに着せたのわー。だめですよ。
奥の舞台では、ツェシュさんとメグちゃんの試合が続いています。
この戦いは静かです。
良く見るとツェシュちゃんの足が動いていません。
派手な動きがある戦いはそれなりに実力が接近している時起るようです。
小学生位に見えるロリ顔のメグちゃんの可愛い顔が、緊張にこわばっています。
「うわあーー！！」
メグちゃんが声と共に渾身の一撃を加えました。
ンデラちゃんと同じようにツェシュちゃんは、それを両手で受けました。ですが、体を回転させ場外へ飛び出したのは、メグちゃんの方でした。
「おおおおーー」
会場から低いどよめきの声が上がりました。
メグちゃんが可愛いパンツが丸出しのまま飛んでいます。
綺麗に着地したメグちゃんが赤い顔をしてスカートを直しています。誰だー、こんなけしからん服をメグちゃんに着せたのわー。だめですよ。
ツェシュちゃんは、ヒュナちゃんの顔を見つめています。
同じ攻撃では私は倒せませんよと、言っているように見えます。
決勝戦はヒュナちゃんとツェシュちゃんの戦いとなりました。
居酒屋貴賓席でも二人の師匠が睨み合っています。
「をちろひゅらひゃんふぁふぁちゅにひらってふぃふぁしゅ」
「ほんりゃほろふぁらひろじゃ。つぇふつぁんふぁふぁちゅろしゃーー」
アクエラさんとユーリさんが、口一杯にお寿司を頬張ってしゃっべているので、もう、何を言っているのか分かりません。
居酒屋貴賓席に帰って来た、ンデラさんがローズに抱きついて泣いています。
可哀想なことをしたと僕は反省しています。
メグちゃんもデルイドさんに抱きついています。
決勝戦は王様によく見えるように手前の舞台で始まるようです。
次はいよいよ決勝戦です。
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