第七十四話 ほっと一息
二人の頭を優しく撫でていると、だんだん手が血だらけになってきました。
グーーッ
ニーファさんもデニアさんも、僕と違って生身のエルフです。
緊張が解けてお腹が空いたのに気が付いたのでしょう。
お腹の虫が鳴きました。
きっと顔が真っ赤になっているのでしょうが、血で真っ赤になっているのでわかりません。
「ふふふ、ニーファさん、デニアさん、少し汚れましたね。家に帰ってお風呂に入って食事をしましょう」
「そういうと思って、お風呂はここに用意したニャ、ノコ様も入るといいニャ」
マリーがニヤニヤしているので。
「僕はお風呂に入るほど汚れていません」
そう言って断ってやりました。
力強くきっぱりと。
「あのーノコ様、血で真っ赤です」
そう言われて体を見たら、ニーファさんとデニアさんを抱きしめたときに、二人の体に付いている血が付き真っ赤に汚れていました。
僕は恐る恐る、マリーの作ったお風呂をのぞいて見ました。
「さすがは、マリーです」
思わず口から出てしまいました。
男湯と、女湯がきっちり分かれています。
でも、まだ安心は出来ません。浴室は一緒で混浴などと、いうこともあり得ます。
「うわー、やはりマリーはすごいです」
すでに黒猫に戻っているマリーの手、いや、前足を持ってくるくる回転してしまいました。
浴室もちゃんと分かれています。
僕は、何だか久しぶりにのんびりお風呂に入れそうです。
お風呂は、日本の露天風呂の様になっています。
男湯と女湯はちゃんと板の壁でしきられています。
「これで良し」
洗い場で体を洗い、黒猫マリーも綺麗に洗って首まで湯につかりました。
でもよく考えると、僕はマリーと混浴をしていることになりはしないだろうかと。
「ねえ、マリー」
「何ニャ」
うん、普通に会話をしてきた。
「その、ニャっていうのは、なくせないのですか」
「ふふふ、色々な事情があって取れないニャ」
まあ、どうでもいい事なので深掘りするのはやめましょう。
「さあ、マリー食事の準備もあるのでさっさと出ましょう」
「ふふふ、さてはノコ様気付きましたねー……ニャ」
黒猫が、気持ち悪い笑顔になりました。
やはり、僕はマリーの作戦に引っかかっていたようです。
僕がマリーを抱き上げてお風呂を出ようとすると、当たり前の様にローズ達が男湯に入ってきました。
「ぎゃーー、な、なんで入ってくるのですかー。男湯ですよー」
「あら、間違えちゃいましたーー」
絶対わざとです、ローズたちの裸を見ないように、黒猫で顔を隠して、お風呂場を後にしました。
お風呂場を出たら、うちの使用人の皆さんが待っていて服を着せられました。
結局、僕の家の人は全員ここに集まっているため、夕ご飯もここでとることになりました。
中庭の中央に、人さらいのかしらの部屋をたたき壊して、盛大に燃やしてキャンプファイヤーのようにしてあります。
今日のメニューは豚骨ラーメン大盛りと、中華飯、唐揚げにしました。
「あのー、ノコ様」
この声は、うちの戦女神に、あるじがいることを、命の危険をかえり見ず伝えてくれた、勇気ある女性の声です。
「はい」
「私は、ベルランと申します。あまりのんびりしていると危険です」
ベルランさんはご飯も食べずに僕に訴えてきます。
「きっと貴族が裏にいると思います。こんなことをすればどうなるかわかりません」
ベルランさんはとてもいい人のようです。
本気で心配してくれています。
「捕まれば、何か罪をきせられて死罪にでもされるのでしょうか」
「残念ですがその通りです。この国はおかしくなっています」
「すみません、ベルランさんはどの様な立場のお方なのですか」
「私は、この国の貧乏貴族の娘です。王都へ向かう途中、護衛を殺されて連れ去られました」
「僕は、この国の死罪は恐くありません。それよりベルランさんの身の危険を心配しています」
僕は、ベルランさんという女性に恩を受けたと感じています。
そして何とかそれを返したいと、強く思っています。
この後、エルフの国は戦争に入って、その混乱の中で命を落として欲しく無い唯一のエルフ人です。
「でしたら、どうせ帰るところも無くなった私です。私も使用人として置いてはいただけませんか」
「何故帰る場所がないのですか」
「私には許嫁の婚約者がいました。このような誘拐事件に巻き込まれれば、傷物になったということで婚約は破棄、その後も嫁のもらい手などありません。ですから、家に帰れば厄介者です」
「ノコ様、この方には先程助けられました」
うちのエルフさん二人の助け船が入りました。
もう、断れませんよね。
ちなみに、ベルランさんは、きっとAクラスの檻に入っていたと思われる見た目の女性です。
「わかりました。仕事はニーファさんとデニアさんに教えて貰って下さい」
これで僕の家にエルフの住人が一人増えてしまいました。
食事が終ると、皆が柔らかいベッドで眠りたいとわがままを言い出して、結局我が家に戻って眠りました。
こうして、エルフの国の第一日目は終りました。
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