第七十話 荒ぶる戦女神
「よし、その三人は、Aクラスの檻だ。その六人はBクラスの檻。残りはCクラスだー」
「おい、おめーは、Cクラスだってよ。ひーっひっひっひ」
何だか、むさ苦しいおっさんの下品な笑い声がする。
僕は馬車から降ろされる前に、頭から袋を被されて、膝の上を縄できつく結ばれている。
おかげでペンギンの様によちよちしか歩けない。
そして、尻を蹴られて、動かされている。
「さっさと歩け!」
「いたっ」
また蹴られた。あまり痛くは無いけど、一応痛い振りをしておいた。
「おい、待て、そいつはかしらの部屋の檻だ。あんまり手荒にするなよ。おい皆ー、Cクラスの女どもは好きにしていいが、他には手を出すなよ。かしらに殺されるぞー。」
「いたっ」
また、蹴られた。
「おい、お前、そいつを余り手荒にするな。そうだ、そのボロ袋取ってみな」
「いいんですかい、若頭」
「かまわねえ、取ってみろ」
その言葉と同時に僕の袋が外された。
「なっ、何だこいつー、みんなー、見てみろよー」
そこにいる数十人の男達が手を止めて僕を見てくる。
「なー、なんだこいつは……」
皆が驚いている。
「だから手荒にするなって言ったんだ」
「滅茶苦茶、美しー」
はぁ、むさ苦しい男共にそんなことを言われても嬉しくもなんともありません。
まわりの様子を見ると、四方を塀に囲まれた山賊の砦のように見える。
僕は顔をさらしてからは丁寧に扱われて、かしらの部屋に運ばれた。
そして部屋の中の檻に入れられた。
まわりは、日が暮れかかり少し薄暗くなっていた。
「きゃーーー、いやーー」
「やめてーー」
「おとうさーん」
「おかあさーん」
悲痛な叫び声と泣き声が聞こえる。
僕の檻の前には、若頭と三人の賊が見張りをしている。
「よかったな、おめーは特別扱いだ」
「若頭、かしらが戻りました」
部屋の外から男が入り、筋骨隆々の男を若頭と呼び、報告している。
その後すぐに外から髭面の大男が入ってきた。
その男は真っ赤な剣を素早く振り、僕の足下に血を飛び散らした。
「こりゃー、初めて見る、神々しいねーちゃんだ。高く売れそうだ」
人さらいのかしらは、すごく嬉しそうな顔をして、僕を見てくる。
「賊共ー、娘をかえせー、俺はS級冒険者ルフだ」
外が騒がしくなった。
「かしら、冒険者十数人が門の前に、来ています」
「聞こえているわ! おまえら逃げられないように見張っておけ、若頭行くぞ!!」
「へい!!」
どうやら、S級冒険者の娘まで誘拐してしまったらしい。
「ふふふ、おめー、助かった、見たいな顔をしているな」
見張りの男が、僕の顔を見て勝手に話し出した。
「うちのかしらは、S級冒険者なんぞよりはるかに強いぞ。それこそ化け物だ。だからこそ、やりたい放題やれているんだ」
外は騒然としていたが、すぐに静かになった。
「があーーはっはっはっ、見たかあいつの顔、最期は娘の名前を呼んで死んでいったぞ」
人さらいのかしらが笑いながら入ってきた。
そして、血まみれの剣を振り、また僕の足下に血しぶきを飛ばした。
S級冒険者を含む冒険者十数人を、数分で倒してしまったようだ。
恐ろしく腕が立つようだ。
「ふふふ、いいつらしているな。俺にそんな顔をして生きている奴はいねえんだが……」
少し頭にきている僕の表情を見て、人さらいのかしらが目を血走らせている。
「かしら、殺すのですか」
若頭がニヤニヤしながら、かしらに聞いている。
「いや、殺せばもうけがふいになる、どうせ、金持ちに死んだ方がましと思えるような仕打ちを受ける身だ、好きにさせておけ」
僕は、この国が戦争を起こす理由に疑問を感じ始めていた。
そう思えたという事は、来てよかったということでしょうか。
「か、かしらー、かしらー」
部屋に慌てふためいた男が飛び込んできた。
「うるせー、何の用だ」
「はい、町で荒ぶる戦女神の様な二人組が、暴れまくっていると報告がありました」
「それが、どうした」
「はっ、その二人は、さらわれた主人を探していると言って、すでに数百人の人間を斬り殺していると……」
「な、何ー。憲兵隊はどうしたんだ」
「殺されているのが、普段悪事を働いている奴らなので黙認しています」
「ふん、奴らは、恐くて動けねえのさ、情けねえ」
そう言うと若頭が床に唾を吐きました。
「そして、その二人がこっちに近づいていると……」
「そりゃあそうだろうな、これだけ目立って人さらいをやってりゃあ、ここに来るだろうさ。いったい誰を探しているのかはわからねえが、女二人組程度返り討ちにしてやる」
かしらは、目を血走らせたまま口元に笑いをうかばせて言い放った
「野郎共、戦支度をしろ。勘違いやろーを返り討ちにしてやる」
かしらの言葉を聞いた若頭が緊張した表情で大声をだした。
その表情は、荒ぶる戦女神に何かしらの恐怖を感じているようだった。
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