第六十三話 世界一恐い顔
「おまえ、女なのか」
「ふん、それがどうした」
そう言うと、僕の服の襟とメグちゃんの服の襟をつかんで、二階の窓から飛び出すと空を飛んだ。
その時ぴょんと黒猫マリーが僕の肩に飛び乗った。
マントだと思っていたのは、仮面女の翼だった。
「ぐえーー」
メグちゃんは、ネグリジェのような寝間着を着ている。
襟をつかんで持ち上げられ、首が絞まって息が出来なくなっている。そして嘔吐いて、目からは涙を流している。
「あんた、この子が苦しがっているし、パンツが丸出しになっている」
僕はあえてメグちゃんと呼ばないようにした。
二人を連れていくということは、どちらがノノコかわかっていないと想像出来るからだ。
もし、ノノコじゃ無いとわかれば、投げ捨てられるかもしれない。
「ちっ、面倒くさい奴め」
そう言いながらも仮面女は、近くの校舎の屋根に降りて、服の背中に持ち直しをしてくれた。
おかげでメグちゃんの呼吸は楽になり、パンツも丸出しから半分出しになった。
「お、お前胸はどうした」
そして、ブラジャーで誤魔化していた僕の胸がぺっちゃんこになって、仮面女が驚いている。
「ほ、ほっといてください」
メグちゃんと黒猫マリーがゲラゲラ笑っている。
廃実習棟の影につくと、少し高い位置から僕らを地面に投げ捨てた。
「どっちが、ノノコだ?」
「……」
「まあ、答えるわけが無いか」
「僕が、ノノコです。この子は関係ありません、助けてはいただけませんか」
どうせ二人とも殺すとか言うのでしょうけど、一応言ってみました。
「そうか、お前はあっちへ行っていろ!」
「えっ、いいのですか」
メグちゃんまで面食らっている。
まさかとは思うけど、この仮面女いい奴なのか。
いやいや、こいつは五人の何の罪も無い生徒を行方不明にした犯人だ。
「関係ない奴は消えろ!」
「メグちゃん、ここは素直に逃げて下さい」
僕はメグちゃんにローズが隠れている方向を指さした。
「ふふふふ、お前の策略にのって姿を見せてやったぞ。どうするつもりだ」
「素直に、行方不明の生徒の行方を教えて下さい」
「ふふふ、それを教えると思うのかー」
仮面女は、すごい一撃をくり出した。
それは、常人では考えられない攻撃だった。
「エリサ先生、始まりました、大丈夫でしょうか」
「ヒュナちゃん、メグちゃんをまずは保護して下さい」
建物の影からメグちゃんを手招きして、抱きかかえました。
もっと怯えているかと思いましたが意外と落ち着いていることに驚きました。
私は、いけないことと知りながら、結局じっと出来ずにエリサ先生の後を付けて、ここへ来てしまいました。
最初先生は、怒った顔をしましたがすぐにため息をついて静かにするように言ってくれました。
そして今、ノノコ様と仮面女の戦いを見つめています。
凄まじい攻防が続いています。
仮面の女はS級冒険者よりはるかに強いと感じます。
「これは不味いですわ」
エリサ先生が恐い顔をしています。
やっぱり相手が強すぎるのでしょうか。
「どうしたのですか」
「仮面の女に感心を持ってしまわれたようです」
「えっ」
「人間の高校生があの異常な強さです。すごく心を奪われています」
「ローズ、この仮面女のジョブを教えてくれー」
ノコ様が戦いながら、エリサ先生にステータスの確認を依頼してきました。
「バンパイアです」
「な、何だってー、本当かー。すごいぞ。賢者の知識の中でバンパイアって初めてじゃ無いか?」
「はい、初めてです」
「ふふふ、バンパイア純血種か」
そう言ったノコ様の顔は、赤く紅潮して、最高に嬉しそうに見えます。
「ヒュナちゃん、大変です。ノコ様があの仮面女に夢中になっています」
エリサ先生が、とても焦っています。
まさか、ノコ様が、あの仮面女に恋をしてしまったのでしょうか。
「ふふふ、お前の実力はわかった。それでは僕に勝てませんよ。奥の手があるのでしょう、やって見てください」
ノコ様は何をしているのでしょう、首を差し出して指をさしています。
まるでここを攻撃してこいと言わんばかりです。
「お前はわかっているのか。私のこの技を受ければ正気でいられなくなるぞ。どうなっても知らんからな」
そして仮面女は事もあろうに、ノコ様の首筋にチューをしました。
私はほっぺだったのに、あの女はあろうことか首にチューをしました。
なんだか、仮面女の方がエッチです。
許せません私のノコ様に。
「ぎゃーーー!!」
横を向いたら、エリサ先生の顔が鬼より恐い顔になっています。
思わず悲鳴が出てしまいました。
人生で一番恐い思いをしました。
メグちゃんも先生の顔を見たのでしょう、私にしがみつきガタガタ震えています。
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