子供に下品なネタをやらせるのは面白い(2/2)
会長は強い眼差しで俺を見つめてくる。
それには力強い信念があるようで、俺には全くないものだ。どこからその向上心は湧き上がるんだ?
男性が苦手ならわざわざ会長なんかに成らなくたっていいじゃないか。教室でひっそりと影を潜めておけばいい。
だってこういった恐怖症は一朝一夕で治るわけがない。それなのになんで……
知りたい。そうしたら俺も変われるかもしれない。
……そうか……俺は変わりたいのか……
熟考した上で俺は
「わかりました。手伝いくらいならしますよ」
と見事に会長の口車に乗せられてしまった。
「ほんとか!!ありがとう」
微笑みを浮かべる会長は心から嬉しそうだった。この笑顔に胸を打たれた感覚になるがすぐに平静を取り戻す。
「不本意ですけど」
よくよく考えても、そんなに俺の何がいいのだろうか疑問に満ちる。
恐喝まがいのことをやってまで会長が得られることがあるのか俺には分からない。
会長は不敵に笑みを浮かべる。
「お互いの秘密を知ってしまった仲じゃないか。これからよろしく頼むよ。とりあえず、今日の放課後はこの生徒会室に来てくれ」
「わかり…ました…」
煮え切らない思いがある俺を察してか、会長は次の約束を取り付けた。
「それでは失礼しました」
多少の不安はあるものの、解放されてよかったと安心した俺は生徒会室を後にする。
会長が男性恐怖症で、俺の子役のことを知ってて、生徒会に勧誘されるって、普通に叱られるよりタチが悪い。
男手が欲しいって言ってたからきっとこれから重労働をさせられるのだろうか。面倒くさいけど仕方ない。
「そういや、飯まだだったな」
昼休みは残り20分。会長との話は早く済んでよかった。
弁当を食べて全てなかったことにしようと、俺は部室まで向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※
緊張したぁぁぁぁぁぁ。
男の子とこんなに話すなんていつぶり!?お父さん以外でそんなことあった!?ないないないないない!てかお父さんもない!!
ちゃんと生徒会長できてたかな!?
変に思われてないかな?っていうか男性恐怖症なの言っちゃったよ!!
でも生徒会手伝ってくれるって言ってたし、それは素直に嬉しい!
あーーーでも、見栄張らなきゃ良かったかもぉぉぉぉぉぉーー!!!!!!
私は自分の行いに後悔と反省を重ねる。そして一息つくと、いつもの会長モードに切り換える。
「でも私は強くありたい」
私は胸ポケットから大事そうにテレホンカードを取り出す。
金色に光っていた表面はボロボロになっていて、使い物になるかどうがわからない。
このご時世にこんな物を持ち歩くなんて物好きしかいないだろう。
「あの時のことなんて忘れてるよね」
私は子供の頃から我が強かった。
女の子だろうと関係ない、守られるだけの女は嫌。
小学生の時もしっかり者だった。男子からはウザがられたけど。
そんな私の父は少し有名な俳優で、ドラマの主役もした人だった。父は私の憧れだった。
しかし、事件は唐突に起こった。父の不倫報道だ。
いつもの父が憔悴しきっていて、何度も頭を下げて謝ってきたことは脳裏に焼き付いている。
テレビで報道されたというのもあり、それは学校中に広まった。
これが理由で私は小学校から虐められるようになった。いつも強い言動をしていたのもあって目障りだったのだろう。
ちょうどいい理由ができたとばかりに私はイジメの標的になった。
ただ、それだけならまだよかった。
ある日、私自身でなく私の勉強道具を隠されたり汚されたりすることがあったので、先生に相談してどうにかしてもらおうと思った。
しかし、その教師は私の弱みに漬け込んで猥褻行為をしてきた。
児童からも人気のあった先生だったし私も信頼していたあんなことをしてくるなんて思いもしなかった。
その時から男性に触れられるのがダメになった。
また、その教師は懲戒免職になったが、何故だかそれは児童の間で私のせいとされた。
いつもの優しい先生がそんなことするはずないと思ったのだろう。
しかも、それから交代で入った教師は宿題の量が多く、クラスメイトからは私のせいだと言われた。
私のメンタルは父と同じでボロボロになった。いつもの自分を全てが否定してくるように思えてならなかった。
私の何がダメだった?自分を貫くことの何が悪い?父のようにカッコよくありたかっただけなのに。
男も嫌い。弱い自分が嫌い。
嫌い嫌い嫌い…………生きてる価値なんてある……?
その時に声をかけてくれたのが君。
(強く生きなくてもいい。手を抜けよ。生きたいようにすればいい)
君はそう言った。それはきっと人を堕落させる言葉。
手を抜いていいんだと私を諭してきた。
しかも、私が思い悩んでいそうだからと、その時に宝物と言ってテレホンカードを渡してきた。
電話番号なんて教えてもらってないのに。
生きたいように、、、、
そこで私は思った……
<<やっぱり弱い自分は嫌!!!>>
結局、私の考えは一周して自分の原点に帰ってきた。
強く生きるために頑張る!誰にも否定させないし、私は男嫌いだって克服してみせる!
何度でも挑戦して立ち上がって上を見るんだ。
何回ゲロを吐いたって、苦しい思いをしたって、私はめげない。
だから出来る会長として振る舞うし、それが私の強さだと信じている。
「君がいれば、なんか克服できそうな気がするなんて言えるわけないわよ」
そうして、私はお守りであるテレホンカードを胸ポケットにしまった。
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