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冷静に考えたらツンデレってDVと似てる


「なんにもない部屋ね」


「あぁ」


 アンナは玄関で濡れた靴下を脱ぐと、手持ちのタオルで軽く足を拭いて勝手に部屋に侵入し、淡白に感想を述べた。


 一体どんな部屋を期待してたんだ。


「そうだ先に……これ、プリント」


「おまッ、雑だな」


 アンナはバックからプリントを取り出して、投げやりに突き出してくる。


 何やら苛立っているように見えたが、触らぬ神に祟りなしだ。


 突っかかるのも面倒くさい。


 俺がそれ以上追求せずプリントを受け取るや否や、アンナはテーブルや机を一瞥して


「体調って何が悪いの?薬とか、何もないじゃない」


 と、不審そうに言う。


 ポンコツのくせに、こんな時だけ勘が鋭い。


 確かに体調不良であれば、テーブルに薬の一つでもあるはず。


 アンナのことだから、俺が学校をサボったとか思ってるんだろうな。


 心底、面倒くさい。


「腐った牛乳飲んだら食中毒になった」


「ふーん…………そう」


 決めていた俺の回答に、悪態の一つでも吐きそうだと思ったが、アンナは口を閉じた。


 しかし、どうにも腑に落ちないようで、証拠を探す探偵みたいに捜査をし始めた。


 ゴミ箱の中、カーテンの裏、その他死角になる場所等くまなく。


「だから、なんもねーよ。エロ本でも探してーのか?」


「あんたが、なにか隠してると思って……」


 アンナは目を細めてボソリと何か呟く。

 

「え?なんて?」


「なんでもない!そうだ、これだけは言っておきたかったの!返信はちゃんとしなさいよね。スマホどこ!?」


「うっせぇな。たしか……脱衣所の棚、だな」


「持ってきなさい!」


「はいはい、声量落とせよな」


 アンナはいつも以上に口うるさく、必死そうだった。


 お節介もここまでくると、厄介を通り越して苛立ってくる。


 人様の家に来てるのに、何様のつもりだよ。


 舌打ちをしながら頭を掻くと、髪の毛が数本抜け落ち脱衣所の白い床に存在を示す。


 ただでさえ今の俺は精神的に参っているのに、アンナのお節介は逆効果だ。


 スマホを持って部屋に戻ると、通知を確認する。


 そこには過去にないほど、数え切れない通知が溜まっていた。


「後で必ず返す」


「後でじゃなくて、今しなさいよ!」


「だから、声がデカいんだよ!別に今じゃなくてもいいだろーが!」


「今しなさい!どんだけ先輩たちが心配してると思ってるの!それを見届けるまで帰らないから!」


 鬼気迫るほどアンナは感情的で、呼応するように俺も声を荒げた。


 怒られたり嫌味を言われることは多々あったけれど、ここまでのは初めて。


 耳障りだ。今の俺には、不協和音でしかない。


 早く消えろよ。じゃないと俺が殺……


「イッ……」


 黒い感情を抑えるような頭痛。


 今、俺は、何を考えた?


 本気でアンナを殺そうと思ってしまった気がする。


 俺も、不死身のせいでおかしくなってきてるのか?


 ソウスの特性なのか、ストレスなのか、分からない。


 分からないのは……怖い。


「大丈夫?ちょっと、言い過g……」


「俺が悪かったよ。今から返信するから」


 頭を切り替え、自分を律しろ。


 そうしないと、何を考えてしまうか分からない。


 演技は得意だったろ。


 完璧な笑みをアンナに向け、椅子に腰掛ける。


 現状、(やかま)しいクラス委員長が、家に来てうるさくしてるだけ。


 また、面倒だが一言「返信遅れました。体調は大丈夫です」とだけ送れば済む話。


 それからアンナを返した後、俺は終わればいい。


 とっとと済ませよう。


 スマホのロックを外すと、


「自殺って、調べてるの?」


 ほんの一瞬、検索していた画面をアンナに覗き見られた。


 タイミングが悪いにも程がある。


 こいつはいつもそうだ。俺の邪魔ばかりしてくる。


 言い訳を探すために、少し黙っていると、


「スマホ貸して」


「おい!」


 不意打ちのようにスマホを取り上げられた。


「なにこれ……」


 信じられないような物を見る目でスマホをスクロールすると、俺に目を向ける。


「なんで自殺って調べてるの?しかも、こんなに」


 率直に、ウザいと思った。思ってしまった。


 人に悪い感情を抱くのは、初めてな気がする。


「……お前には、関係ない」


「関係なくない!!」


 今にも泣き出しそうな顔して、アンナは声を荒げる。


「今のあなたはおかしい!!何か隠してるんでしょ!」


「なんだよ、俺は普通だろ」


「そんなわけないでしょ!!!一目見れば分かるわよ!」


 アンナの怒鳴り声が頭に刺さるみたいだった。


 気分が悪いし、ウザい。ストレスが溜まる。


 多分、アンナの言いようは心配からくるのだろう。


 しかし、理性では分かっていても、負の感情が頭を支配するのに抗えず、心が制御できなくなる。


「愛生さんと喧嘩でもしたの?話しなさいよ!」


「だから、お前には関係ないって言ってんだろ!」


「お前って言わないで!!私の名前は、アンナ!今のあなたは異常よ!自分で分からないの!?」


「さっきから、うっせぇって言ってんだろ!!」


 我ながら、苦しい言い訳だと思う。


 俺のことを案じてくれているのに、最低なことしか言えない。


「いいから、黙って帰れよ……」


「帰らない!聞くまで絶対に帰らない!」


「何でそこまで俺に構うんだよ」


「愛生さん、凄く悲しそうな顔してた。聞いても話してくれないし、どうしちゃったのよ」


 愛生が悲しそう?何の冗談だ?


 笑顔で人を殺すような奴の名前すら聞きたくない。


「うるっせぇ!お前に何が分かるんだよ!一回死んでから言えよ!」


「死ぬって、どういうこと?」


「……」


「私、馬鹿だから、言ってくれないと分かんないよ。それで、できることなら、なんだってしてあげたい。心配なの……」


 アンナはしおらしく言う。


 さっきまで喚いていたのが嘘のよう。


 まるで、DVをする奴の典型例みたいで、さらに苛つく。


「じゃあ――」


 俺はアンナを突き飛ばして、お互いベッドに倒れ込む。


 下になったアンナを上から見下ろして、


「やらせろよ」


 考えてもないことが、口から出た。

およみいただきありがとうございます。うつてんかいがつづいてわたしもやんできています。でもやめるつもりはありません。


ぶっくまーくをしてくれるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] アンナたん最高すぎる!
[一言] 待ってましたー! 最近配信行けなくてごめんー 学校始まったから忙しくてなかなか行けない やらせろはどっちのやらせろなのかな?
[一言] 更新おめでとうございます!我らがアンナ回かと思っていたら、まさかの筆おろし回なんですね笑 書籍化してほしいってずっと思ってましたが、なんか最近、書籍化したら炎上するのでは、、、?と考えるほど…
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