告白してきた相手を振るのは心が痛む
これで臨海林間学校が終え、学校から電車にて帰宅途中。
ほとんどが学校の荷物だったので、俺たちの手荷物は水着と着替え程度で、さほど多くない。
恋人らしく雛菊と一緒に帰ろうと思ったが、今は愛生と電車で二人。
電車内の座席は空いていたが、座っていても落ち着かないため、俺だけ立っている。
「ねぇ、聞いてる〜?」
「え?あぁ、聞いてる聞いてる」
「それでね〜夜は色々あったの〜。王様ゲームやったり、その話の繋がりで恋バナしたり〜楽しかったよ」
「望月さんがエグい要求してそうだな」
「そうでもないよ〜。意外と良心的だった!パンツの色教えて、とか〜」
「普通にセクハラじゃねーか…………でも、確かに優しい方……か……?」
俺は首を傾げる。
あの人の普段の奇行に比べたら、優しい方な気がしないでもない。
「望月さんの書いたイラスト見たけど、あんなの書いた人が王様ゲームやったら、もっと変な命令すると思ったよ〜」
あの百合イラストを見たのか……。
生徒会メンバーの女子たちの煽情的なイラスト。
俺は過去に見た。
下着姿とほぼ裸の生徒会女子たちのあられもない姿のイラスト。
望月さん曰く、ホクロの位置まで完璧らしい。
細かい所は違っているかもしれないが、大体同じだろう。
同人誌のネタにされることの恐ろしさを、前回で初めて知った。
あれを当人たちが見たら、反応に困って空気が最悪になるだろうし、王様ゲームで何を命令されるか予想すらできない。
「俺は見てないけど、そんなにヤベーのか」
「興味あるの〜?しゅんちゃんなら本物見てもいいんだよ〜」
「興味ねぇよ。てか電車で言うな」
「え〜〜興味あるくせに〜」
「はいはい、降りるぞ」
電車を降りると、蒸し暑い熱気に身体が覆われる。
ループするなら春か秋が良かった。もしくは冬。
暑さは対策なんてできないし、好きじゃない。
それからも、愛生と何気ない会話をしているが、俺の内心は全く落ち着かないでいる。
このままだと、愛生がトラックに轢かれた後、一度死んで狂ってしまう。
その結果、雛菊や俺が殺されるなんてことあってはならない。
だから俺は色々考えた。
愛生が死ぬことは、絶対に回避しなければないが、タイムリープ系のアニメだと、世界線の収束とか言う、些細な変化を起こしても、人の生き死等の重大なことは変えられないという。
それが本当か嘘かなんて分からない。
トラックの事故を防いだとしても、もう一台の車が通るかもしれないし、バイクに轢かれるかもしれない。
はたまた、通り魔に刺されるなど、考えたらキリがない。
だったら、前回と同じ状況を作り出し、愛生の事故を防ぐ方が確実だと考えた。
もうすぐ事故が起こった横断歩道の近くを歩く。
「聞いてる〜?」
「え?なんて?」
「だから、明日は何か食べたい物とかある〜?明日は時間あるし、しゅんちゃん家で作ってあげるよ〜!」
「…………そのことなんだけどさ。俺は愛生に言わないといけないことがあるんだ」
話を切り出すなら今しかない。
「会長さんと付き合ってること?」
愛生からの不意の一言に胸がどきりとした。
雛菊には、俺から伝えるので言わないで欲しいと連絡している。
愛生が知るなら、雛菊からではない。
であれば、
「見てた、のか……」
「うん、昨日の夜、だよね」
愛生の表情は怒っているわけでも、悲しんでいるわけでもなく、事実として受け入れているように見える。
一周目、雛菊との会話を見られてたなら、「会長さんのことどう思ってるの」と聞いてきたのも合点がいく。
なら、言葉を選ぶ必要はない。
「そう、昨日俺が会長に告白して、付き合うことになった」
「そう……なんだ」
「世話になってるし、愛生には最初に言っておくべきだと思ったし……そういうわけで」
愛生が悲しんでも、どうやっても、伝えなければならない。
「もう俺の家には来ないでほしい。これは冗談じゃない」
俺は、正々堂々、気持ちを伝える。
誰かと付き合うというのに、他の女子が家に出入りしているなんて、俺からしたらあり得ない。
たとえ、どんな事情があろうとも。
「だから、俺の家の鍵、返してもらっていいか。今も持ってるよな?」
淡々と告げる俺の言葉に、愛生は驚いていない。
むしろ、受け入れているようにさえ見える。
「うん……分かった」
愛生はバッグから大事そうに鍵を手にする。
俺は手を差し出し、無言で催促する。
それを感じ取ったのか、愛生は唇を噛みながら寄ってくる。
そして、素直に鍵を手渡すと思った寸前、ピタリと動きを止めた。
「どうした?」
不思議に思った俺に、愛生はポロリとこぼす。
「私って何がダメだったの?」
「え?」
「だから、何がダメだったの?」
「ダメとかそういう……愛生が悪いわけじゃない。それ以上に会長が、雛菊が好きなんだ」
俺が言うと、愛生は急に顔を青くさせ、呼吸を荒くする。
「はは、そうなんだ……ごめん、私、今、凄くめんどくさいこと言おうとしてる。頭がぐちゃぐちゃで、何言ったらいいか分かんないや」
どう声をかけたらいいのか、分からない。
歪な関係を築いてしまったのは俺のせいでもあり、こうなることを恐れていた。
でも、向き合わねばならない。
「はい、鍵。じゃあ、私、先に帰るね」
愛生は俺に鍵を押し付けると、逃げるように場を後にする。
警戒していたはずなのに、俺は一歩出遅れた。
後を追うため、俺も疾駆する。
正直に言うと、雛菊を大切にするなら、ここで愛生を引き止めることは間違いかもしれない。
でも、愛生が死んで自暴自棄になってしまうことが、一番避けたいことである。
だから、今度は追いつく。
「愛生!待てよ!」
なんて声をかけたらいいか分からない。
でも、目の前で死ぬことを止めない方がおかしい。
「前!!」
愛生は左右を全く確認せずに横断歩道を駆け抜けようとする。
横からはトラックの影。
俺が言うのも変な話だが、愛生は俺のことになると周りが見えない時がある。
愛生はまだ車両に気づいていない。
そんな愛生の手を車道に出るすんでのところで掴んだ。
「あっぶね――――」
俺は愛生を引き寄せ、事故を未然に防いだ。
愛生は驚いたような顔をしていて、瞬時に自分が事故に遭いそうな所だと自覚したよう。
俺は心の底から安堵した
これで何とか事故と殺人を回避した
と思ってた。
「えッ――」
愛生を車道から引き寄せた瞬間、逆に俺の身は引っ張られるようにして、車道に投げ出させる。
原因は明らか。
愛生が俺の手を強く引き、入れ替わるようにして車道へ引き出されたのだ。
ゼロコンマ数秒後には、轟音が予想させる刹那。
最後に見た愛生の顔には、
どうしようもなく狂気的な、満面の笑みが張り付いていた。
※※※※※※※※※※※※※
全身が痛い。
が、ちょっと暖かい。
ぬるま湯の水たまりに浸かってる気分だ。
灰色に塗られていた視界が、赤く塗られていってる。
身体は冷たくなってくるのに、暑さで温められたコンクリートと俺から流れ出た生温かい血が、何とか意識を保たせている。
「しゅんちゃんはさ、私に祝福して欲しかったんでしょ。おめでとうって。私は涙を堪えて、次の恋に行くこととか望むんでしょ」
愛生が話している。耳だけは何とか聞こえる。
「ねぇ、そうなんでしょ」
そんなんじゃない、と言い返せない。
確かにそういうのを望んでいた節もあるが、答えがなくても時間が解決することもあるとも思っていた。
何より雛菊を大切にするって決めたんだ。
愛生との関係が悪くなることくらいは、予想していたけど……
「間違えちゃったんだよね。分かるよ、大丈夫。目を覚ました時には、会長さんをこの世から消しといてあげるから。しゅんちゃんの記憶が飛んでたら、もっと良いんだけど……そうだ!ちょっと待ってて」
何が間違っていたんだ?
愛生は死んでない。だから狂うこともないはずなのに。
あの顔は……、俺を殺す時に、なんであんなにも笑ってたんだ?
「ごめん、今から痛くするね。理由はそうだな……ソウスっていう不死身なんだから、死んだ方がきっとすぐ治るよね〜。一番良い救急救命だよ!」
手を大きく振りかぶったところで、俺は愛生と目が合う。
愛生は手頃なコンクリート片を持っていて、俺に笑顔を向ける。
一周目と同じ、悪びれもしない無垢さ。
何も変わっていないのに、なぜだ?
女子の変化なんて俺に気づけるわけない。
変わっているのは、髪色くらいか?それとも、数センチ髪を切ったのか?
その後、意識がなくなっていても、脳みそが飛び散るまで愛生に殴られ続けた。
※※※※※※※※※※※
おまけ
【もしロリ先生がインフルエンサーになったら】
「どうもこんにちは!元教師でインテリ系You○uberの合法ロリことロリカです!今日やっていくのはこれ!」
画面の幼女は、缶チューハイと謎の冊子を机に広げる。
「【共通テスト】を酔っ払いながら解いてみた!そして、多分満点が取れるので、解説までやっていきます!では早速……」
缶チューハイ(9%)の缶を開けて、幼女が酒を飲み出す。
「ぷっはぁぁーー美味しいです!!教師時代にも世話になったぁ、君は最高です!」
そうして、缶チューハイ(9%)を2本飲んだ所で、問題を解いていき、50分後
「ひとちゅめが終わりました〜!これなんだっけ?あ〜数学I・数学Aだ!ちょっと時間がかかったけど、こんなもんです!!」
「たぶん満点だと思いますが、一応採点していきまーす」
コメント欄に目を通すと、色々ヤバい。
〈合法ロリガチ草〉
〈この人本当は何歳なの?〉
〈こんな先生が欲しかった〉
〈しっかり満点なのヤバすぎだろ〉
〈お酒飲んでみたい〉
〈踏まれたい〉
「次の動画は、【解き方を徹底解説】です!その次は難易度が跳ね上がって、【偏微分と電磁気の基礎】でしゅ!それでは、また次の動画で!おゔぅぇぇぇ――――」
動画の再生数は5時間で18万再生。初動で凄まじいほど伸びていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
勢いで書いてしまったので、あまり誤字脱字の訂正ができていないかもしれません。というわけで、誤字訂正があれば是非ともお願いしたいです。
また、私のモチベーションにも繋がるので、ブックマークや評価等よろしくお願いいたします!
【追記】
ひゃっはぁーー!!また瞬記が○んだぜ!!ヤンデレヒロインに◯させるってなんて幸せ物なんでしょう!!
………嘘です。冗談です。間に受けないで下さい。
これからの瞬記の活躍が楽しみですね!頑張って欲しいです!




