早過ぎた水着回
ということで、今日は8月6日。
水着に着替えた俺たちは、砂浜の空いている陣地に荷物を置く。
すると、樹は両腕を挙げ、海に向かってお決まりのように叫ぶ。
「海だーーー!!」
今日は風が強くないので、波は緩やかで海水浴にはピッタリな日だろう。
その後ろで、俺は樹の身体をマジマジと見ながら思う。
男の水着は腹筋がついているかで大きく見栄えが変わる(偏見)
樹はギチギチに隆起するほどの筋肉はないものの、腹筋は割れていて、海を背景にするのがよく似合う。
それに対して、俺は太っても痩せてもないし、腹筋も薄らとしかでていない平平凡凡な身体。
腹筋鍛えておけば良かったな……
照りつける真夏の太陽。紫外線は肌を焼き、蒸し暑い熱気は汗を滲ませる。そんなインドア派にはキツイ環境で、唯一の救いは海から吹く風が涼しいことだけ。
正直に言うと、早く帰って寝てたい。
しかしそうもいかないので、周りに目を向け、楽しそうな物を探すことにする。
ビーチは人でごった返しているわけでなく、穴場スポットらしさが窺える。海水は透き通るほど綺麗というわけではないが、浜辺にゴミはなく清潔感がある。
また、どこもかしこもカップルばかりかと想像していたが、家族連れもいる。
まぁ臨海学校に派手なビーチを想像してなかったので、想像通りといった所だ。
「けっこう良い場所だな」
「おい、瞬記!テンション低いぞ!どうしたー!」
俺のテンションの低さに気づいたのか、樹は俺の背中を強めに叩く。
「イッてぇなーー。暑いし、潮でベタベタするのは嫌いなんだよな。海行くぞ!ってなるとテンション上がるけど、ここに来ると砂浜は鉄板並に熱いし、売店は高い。あれだあれ、夏休みは始まる前が1番楽しい的な」
「そんなの必要経費だろ!実質パンツ1枚、しかも屋外っていう開放的な空間で、ほぼ下着姿の女の子をナンパできるのは海だけだぞ!その気分を味わうのがいいんじゃねーか!」
「言ってることが変態なんよ」
「このビーチはいい!人が少なめだから初心者のお前でもオススメできるぞ!大人数いたら緊張するだろ!」
「んなしょうもないことはいい。そんなことより、会長たちが来る前に、レジャーシート敷いておくか」
「だな!いや〜楽しみだ!美女たちの水着姿!」
樹は胸を膨らませて、俺の持っているシートの反対側を摘む。
こいつはふざけるだけじゃなく、こういう面倒なことを当たり前にするのが良い所だと改めて思う。
ちなみに、俺も生徒会役員の水着姿には興味がある。学校では注目の的で人気もあり、容姿も完璧ときた。
目の保養として、こんなに胸が膨らむことは他にない。
数十分後、俺たちがシートを敷き終わり退屈していると、ようやく女子たち2人がやって来た。
「お待たせ〜」
「後輩くんたち、荷物ありがと!」
最初に来たのは愛生と望月さんだった。
愛生の水着はパレオといったか、腰に巻きつけられた抑えめな朱色の花柄の布が印象的で、麦わら帽子とよく似合っている。
普段は可愛らしいという印象だが、水着姿は大人っぽさもある。そして何より、制服を見る機会が多いからか、胸がいつもより大きく見える。
着痩せするタイプだったのか、俺が意識して見てないかっただけなのか……
「どお〜?似合ってる〜?」
「おぉ、似合ってると思うぞ。普段とは違う魅力がある気がする」
「えへへ〜」
俺が素直に褒めると愛生は満更でもないようだ。
ただ、どさくさに紛れて抱きつこうとするのはやめろ。
「先輩もめっちゃ似合ってますね!写真撮ってもいいですか!?」
「いいぞいいぞー!存分に撮りたまえ!」
対して、望月さんは黒っぽいワンピースタイプの水着で、銀髪との色合いが絶妙である。下ネタ好きの望月さんだから、露出が控えめな水着は少し意外だ。
「先輩身長があるから、読モとかいけるんじゃないっすか!?」
「そんなに褒めないでよ。興奮するじゃぁーないか」
樹が褒めまくると望月さんも満更でもない感じでポーズを撮り始めた。この状況だけ見ていると、本当に凄腕のカメラマンが被写体を褒めてることで魅力を引き出しているようにさえ感じる。
「てか、だいぶ遅かったけど、何かあったのか?」
「あ〜……それはね〜」
愛生に聞くと、答えづらそうに目線を逸らす。
本当に何があったんだ??
「すまん、待たせたな。権正の説得に手間取ってしまった」
「意外と遅かったですね、かいちょ…………!!」
俺は振り向くと、会長の水着姿に言葉を失う。
会長の水着は水色の三角ビキニ。砂浜よりも白い肌によって身体のラインがくっきりと映る。透き通る白い肌が光を放つかのように輝いて見える。そんな露出が多い水着だからなのか、上着を手に持っている。
「どうした?そんなに私に見惚れたか?」
会長はニヤけながら俺に問う。
「んなことないっすよ。それよりもアンナはどこいったんですか?」
「あぁ、それなら……ここに」
会長は背中の方を見るように促されると、会長の影に隠れて、アンナは身体を抱えて蹲っていた。
「望月さん許さない!望月さん許さない!望月許さない!許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
あぁ、なるほど。
アンナの水着はどう見てもスクール水着。昔の水着のようなデカデカと名前は書かれていないものの、豊満な胸を隠せるわけもなく、イヤらしい目で見られても文句を言えないくらい際どい。正直、球技大会での体操着なんて比にならない。
きっと、アンナが着替え途中でゴネていたせいで、着替えに時間がかかったのだろう。
「アンナ……その……ドンマイ」
「ばか!!見るな!!!!」
アンナは恥ずかしそうに顔をうずめる。
「いや〜本当に持ってくるとは思わなかったよ!マジでエロいね!」
撮影会をひと段落すませた望月さんは、言葉を選ばずいう。
「望月さんのせいなんですね」
「いやね〜私は学校の行事だから、学校とかで使う物でもいいと思う〜って言っただけ。ほんのちょーーーっと、膨らませ過ぎちゃったかな」
本当、いい性格してるよな、この副会長。
「うぅ……死にたい」
「死ぬのはやめておいた方がいいよ〜」
愛生はアンナの頭をよしよしと撫でる。
ここだけ切り取ると、百合の花が咲きそうだな。
「ん?この状況はどうした?」
望月さんの写真を整理していた樹は、次なる被写体を求めているようで、カメラを手に持っている。
「海なのにスク水なんだと」
俺が適当に説明すると、樹は水を得た魚のようにテンションが跳ね上がったようで
「え!いいじゃん!写真撮っていい?」
「殺すわよ」
と、撮影を拒まれるのだった。
「き、気を取り直して遊ぼうぜ!あそこでバレーできるみたいだぞ!」
樹は遠くの海の家を指差す。
「お〜。それはいいけど、ボールはどうするんだよ」
「私持ってきてますよ〜」
愛生が大きめのバッグから持ち出したのは、ちゃんとしたバレーボールだった。
「準備良すぎだろ」
「しゅんちゃんの球技大会でのプレー見そびれちゃったからね〜」
「まぁ動機はどうあれナイスだな」
「じゃあ6人だから3対3だな。負けた方は夕飯のカレー作りを担当するってのでどうだ?」
会長は自信あり気に賭けを持ちかける。
「いいよ。面白そうだし」
「みんながいいならそれで〜」
「俺、バレー苦手なんですよねー。やりますけど!」
と望月さん、愛生、樹はそれぞれ同意する。
「私、弱いですよ」
乗り気じゃないのはアンナだけ。そりゃ前の球技大会では散々な目に合っているから当然だろう。
でもこいつを乗り気にさせるのは簡単だ。
「なんだよアンナ。俺に負けるのが怖いならそう言えよ」
俺が安い挑発をすると、アンナの琴線に触れたのか
「ふざけないで!誰があんたに勝負する前から負けを認めるもんですか!!」
と、急に立ち上がり威勢が良くなる。
チョロすぎて、逆に心配なってくるな。
「それじゃあ、グーパーて分かれるぞ。グーとっp」
そして、俺たちの戦いは始まった。
2週間書かなかったら書き方を忘れました、どうも、なめろう巻です。
今回は初めての水着回のつもりでしたがいかがだったでしょうか。正直、水着を着させるのが難しくて投稿が遅れた節もあります。
グロいシーンを欲している読者さんが多いみたいなのですが、もう少々お待ち下さい。
鬱展開って日常パートがあるから映えるので。




