女子の髪の変化に気づける男は変態(いい意味)
太陽が地平線に隠れ始め、夜の訪れを匂わせる。
俺は球技大会の後始末を終え、電車に揺られて帰路についていた。
満員電車ではないものの、座る席がないのは運がないのかもしれない。しかし、座ったら座ったで寝てしまう可能性もあるのでそれでもいい。
今日は疲れた。
バレーの試合を始め、副会長はキャラが濃いし、アンナや会長との一件など色々あった。
球技大会だから普通の授業より楽だと考えてたが、見通しが甘かったようだ。
目を閉じるとしっとりと感じた人の体温と、柔らかい感触を思い出す。
俺はバカだな
電車から降りてホームまで行くと、見慣れた風景が安心感を与えてくれる。最近引っ越してきたはずなのに、数ヶ月経つとだいぶ見慣れた。
惚けていると、サイレンの音が変わるように何かが近づいてくる。
「しゅーーんちゃーーん!」
「おぉ、こんな所で抱きつくな」
人目を憚らず愛生は抱きついてくる。引き離して歩こうとしても一筋縄ではいかない。
「同じ電車なら一緒に帰れたんだね〜」
「そうだな」
無理矢理愛生を引き離すと、距離をおくために歩き始める。
「なんか調子悪い?」
愛生は俺の顔を覗き込み、不思議そうに聞いてくる。
相変わらず感が鋭い。てか、歩きながらなのに顔が近い。
「まぁ、少し疲れたな」
俺の言葉に納得がいったのか、愛生は身を引いて微笑む。
「生徒会のお仕事は大変だったけど、楽しかったね〜」
「おー」
「しゅんちゃんが生徒会に入るとは思わなかったよ〜」
「おぉーーおぉん?!?!」
生返事をしていたが、思わず愛生の方に振り向いてしまった。
「それ、聞いてないんだけど」
「え?もう届け出してあるって会長さんが言ってたよ」
「……マジか。ま、いいか」
無断で進めるなんて会長マジでやってくれたな。でも今はそんなことより早く帰って寝たい。
「めんどくさがりなしゅんちゃんが嫌味を言わないなんて……大丈夫?変なもの食べた??」
「そんな事ねぇよ。給料でるならやってもいいってだけ」
俺は適当に流そうとするが、愛生の足が止まり
「…………会長さんに何かされた?」
と声色を黒くしていう。全て見透かされているような表情は僅かに憎悪があった。
「な、なんもねーよ」
俺がそう答えると、愛生の顔は元に戻る。
「へーーーーー、そうなんだ〜」
「その長い溜めはなんだ」
俺たちが歩いていると冷めた風が吹き付け、髪を靡かせる。この時期でも夜になるとまだ冷える日がある。
そういえば、隣の愛生を見ていると気になることが一つある。
「なぁ、髪の毛染めたか?以前より色が薄い気がする」
「え?何もしてないよ〜」
「プールいったとか?確か塩素は色が薄くなるらしいし」
「プールは行ってないねぇ〜」
俺の気のせいか。
「気のせいならいいんだけど、俺たちって何が起こるかわからねぇわけだし」
この時に気づいていればよかったんだ。
愛生の微細な変化に。
でも、そんなことに気づくのは不可能で、気づいた時には手遅れだった。
それは、俺も同じだ
最後までお読みいただきありがとうございます!
これから約2、3週間は引っ越し関係で投稿が難しくなると思います。
それでも1週間に一度は投稿したいと考えているので、ぜひ応援の方よろしくお願いいたします!
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