初心者同士の試合はサーブをミスらなければ大体勝てる
俺がバレーを選んだのは理由がある。
結論からいえば、サーブがあるからだ。
俺にとって球技は苦手ではないものの、特別得意というわけもなく、部活をやっていて日々努力している奴等には当然勝てない。
ただ、同じ初心者同士という条件なら俺に分がある。
――――――――――――――――――――
〜瞬間記憶力の応用編〜〈これでみんなもサーブの達人〉
ステップ1:
まず、YouTubeの動画でさまざまな角度からサーブの動画を見る。
ステップ2:
そして、動画の真似をしてそれっぽくサーブをしてみる。
【ここが大事】自分のサーブを客観視して、動画のサーブに寄せるのがポイントだぞ。
ステップ3:
誤差を修正する。
―――――――――――――――――――――
こうすることでサーブだけは一丁前にできるようになる。
初心者同士の球技はサーブができたら大体勝てる(持論)。みんなも実践してみてくれ。
子役の時はこの原理でダンスなどをほぼ初見で完コピするなど、飲み込みの早さが尋常ではない、とよく言われたものだ。
ちなみに俺はジャンプフローターサーブを練習した。バレーの授業があるので、練習にはもってこいだ。
いや別に、ハイ○ューの山○に憧れたとかじゃねーし!
俺自身、良い仕上がりだと感じていたので、チームの足を引っ張ることはないと、始めはそう思っていた。
※※※※※※※※※※※※※
太陽が南に登って気温が1番暑くなるころ、俺は保健室に向かって1人でとぼとぼと向かっていた。
「いってーーーー。あいつら強すぎだろ」
惨敗を喫した俺は、左小指の痛みを感じながらぼやく。
俺のクラスの男子バレーは、順調に勝ち上がって準決勝までいった(俺はサーブくらいしかしてない)。
チームの足を引っ張らなければいいと若干消極的に考えていたが、2戦目にサーブで8点連取した時はまるで異世界最強系主人公のような無双感で気持ちよかった。
しかし、準決勝の相手クラスは半分がバレー部で残りが経験者というチートクラスだった。もちろん勝てるわけがなく、ベスト4で俺たちの試合は終わった。
その試合で出しゃばったせいで、俺は左手の小指を突き指した。
普段は出しゃばるキャラではないのだが、なんだか楽しくなってしまって、前衛で月○vs牛○みたいにバレー部のスパイクをブロックしてやろうと思ってしまった。
けれど、考えが生クリームくらい甘かった。
大砲のようなスパイクを打つバレー部を初心者が止められるはずがない。
バレー部強すぎ。もうバレーやだ。
俺は痛みを確認するように右手で何度も指を揉む。
「なんでみんなすぐ治んだよ」
俺は不思議そうに呟いてしまう。
指先の痛みが全くひかないどころか、治ったことを確かめる為に何度も指を動かして、さらに悪化している気がする。
普通の人なら瞬時に治らないだろうが、俺たちなら、この程度の怪我すぐに治るはずだ。
保健室に辿り着き、苛立ちを含めドアを勢いよく開けても人影はない。
当然だ。この学校に保健室に来る奴なんているわけがない。なぜなら、傷は放置していたら治るのだから。
傷の治りには個人差がある。
例えば、通常の人は痣ができたらは治るのに1〜2週間かかる。しかし、俺たちソウスなら早くて数秒、遅くて数分くらいらしい。
俺は怪我をしても試合を続けたので、かれこれ10分以上は経つ。もう完治してもおかしくはない。
まさか、俺だけ間違いで入学しちまったとか…………考えたくねぇな。
俺はテーピングを探すため、保健室を見渡す。
ベッドが2つに、養護教諭が座りそうな大きめの机と椅子。応急処置の用具がありそうな引き出しがいくつかある。
白がベースのこの部屋は他の教室とは違って病院を彷彿とさせる。
そんなごく普通の保健室で俺は数ある引き出しを順番に調べて目当ての物を探す。
静かな部屋で1人で物を漁っていると犯罪者になったみたいだな。エ○漫画だったら、証拠写真を撮られて○○隷エンド。
…………誰かに見られる前に早く見つけなければ。
「おっ、見つけた!……って、きたねー」
テーピングはあった。しかし、何年か放置されてたせいなのか糊が溶けて黄ばんでいる。
まぁ使えないこともないし、これでいいか。
俺は近くにあったパイプ椅子に座り、不慣れな手つきで自分の指にテーピングを巻く。
テーピングの巻き方ってどうやるんだ?適当にぐるぐる巻いたらいいか。
試行錯誤していると、体育館からはバスケのドリブルの音が微かに響いてくる。まだ、試合をしているのだろう。
そういえば、生徒会役員の活躍が凄まじかったのを思い出す。
会長はバレーコートの隣のバスケで見かけた。髪を後ろに纏めている会長は新鮮で、3ポイントシュートは吸い込まれるようにゴールネットを通り、見ていて清々しさまで感じた。
生徒会の仕事の時、会長はバスケやバレーは未経験とか言っていたが、それが嘘のような動きだった。
愛生はバスケとドッヂをしていて、連戦連勝。集中している愛生は誰も止めることができず、どちらも素人の俺から見ても十分に活躍していた。
ただ、俺にアイコンタクトをしてくるのは、反応に困るからやめて欲しい。
そんな2人の活躍に対して、アンナは完全にネタ枠だった。女子のバレーをしていたアンナはボールに好かれているのか嫌われているのか分からないが、何故か引き寄せられるようにボールが顔面に集まった。
顔面レシーブをはじめ、味方のサーブは後頭部に何度も直撃。
コートいる全員から虐められてるのかと錯覚するような光景は狂気すら感じた。
本人は必死にプレイしているので、周りはいじることができず、なお痛ましい。ちなみに一回戦敗退。
「ぶっ――(笑)」
流石に思い出し笑いをしてしまう。アンナは芸人になった方がいいな。
そんなくだらないことを考えながら、テーピングを適当に巻いていると、無造作に保健室のドアが開かれる。
ブックマークしてよぉぉぉぉ!たのむよぉぉぉぉぉ!
お読みいただき誠にありがとうございます!
私、球技大会ではバレー部部長のジャンプフローターをリアルに顔面レシーブをしました。マジで取りづらかった。
ということで、これからも継続して投稿するためにブックマークや評価の方よろしくお願いします!