ハーレム展開って実際あると大体ボッチ
6月20日
外は夏の近づきを感じさせる熱気に、肌を焦がすような太陽の光。
そんな真夏に近い休日に、俺たちは学校帰りにクーラーの効いた喫茶店で早めの昼食を取っていた。
「おまたせいたしました。スペシャルミルクキャラメルチョコレートフルーツパンケーキ、オプションで生クリームマシマシカラメルマシとデラックスヒンヤリイチゴアイスふわふわもっちりパンケーキのオプションでチョコチップ生クリームマシでごさいます。ごゆっくりどうぞ〜」
店員さんは当然のように長い注文を言いきり、品をテーブルに置いて席から当然のように立ち去る。
「なに今の?新しい磔の呪文か?」
俺は目を輝かせている愛生に真面目に聞いてしまう。
「違うよ〜最近流行りのスイーツなんだよね〜」
円形テーブルで俺の左隣に座る愛生はバッグからスマホを取り出し、色々な角度から楽しそうに写真を撮っている。
「こ、これが流行り…」
ゴクリ、と右隣のアンナは目の前のパンケーキにビビりながら唾液を飲む。
そして不安そうに
「会長、本当に奢りでいいんですか?」
と会長におずおずと確認をする。
「いいんだ。3人とも休日に学校に来てくれたし、おかげで12時を過ぎる前に生徒会の仕事が終わった。これは感謝の気持ちだ」
「大したことはしてませんけどね」
俺はそう言いつつ、正面の会長に感謝の意を込めながら奢りのサンドイッチを頬張る。
サンドイッチはいつもコンビニで食べるよりも具材が多めに挟まれていて満足感が桁違いだ。なによりも、仕事の後という最大のスパイスが味覚を刺激し脳に快楽を与える。
昨日、会長に指示されたとおり、俺たちは生徒会の仕事を手伝うために、休日に学校に行くことになった。
そこで、球技大会で使用するくじ引きやトーナメント表、体育倉庫にあるもろもろの点検などを行った。難しい作業ではなかったが、いちいち手間がかかるので、俺と愛生がいなければ倍以上の時間がかかっていただろう。
そんな俺たちの働きのおかげか、昼を過ぎる前に仕事が片付いたので、こうして喫茶店で早めの昼食を取っている。
勿論、昼食を取るだけなら俺は直帰していたが、会長が奢ってくれると言うので、その言葉に甘えることにした。
学校帰りに向かう駅の途中にある落ち着いた雰囲気のこの喫茶店は、人が多くはないが静か過ぎることはなく、雑談をすることに向いている。
席はカウンターや普通の四角いテーブルの他に丸や三角のテーブルもあり、芸術の概念が分からない俺にはこの店のこだわりが理解できなかった。
会長は頼んでいたナポリタンをフォークで巻き取り、機嫌良さそうに口に運ぶ。
「私がそうしたいと思ったからいいんだ。こういうところは忙しくてあまり来れないからな。それに、生徒会は学校から少し多めに補助金が貰える。だから遠慮するな」
生徒会は補助金が多めに貰えるというのは初めて知った。しかし、どの程度かにもよるが休日に学校に来てまでお金が欲しいと思う生徒は少ないだろう。
プライベートな時間を割いてまで働くなんて割に合わない。
「いつもあんな感じで仕事してるんですか?」
俺は今日の仕事を思い出す。
基本的に会長が指示を出し、俺たちはそれをこなす。会長の指示は的確で分かりやすいため、俺たちはやることが明確だった。
そのため分からないことは少なく、多分最短で作業を始末することができたと思う。
出来る人だとは予想していたが、それ以上に会長の手腕が半端ねぇと午前中はヒシヒシと感じていた。
しかも、休日に働いた人を労う為に昼食を奢るなんて、上司の鏡みたいだと思う。
「そうだな。今回は雑務が多かったが、基本的には」
パスタを巻くフォークには迷いがなく、会長は自然に応える。
「しゅんちゃん、もうちょっと右に来て〜」
「右にいったら、俺が少し写らないか?」
「それがいいんだよ〜、彼氏とデート的な?これを見たら私に告白してくる人も少なくなるし〜」
俺が右に寄ると制服の一部がカメラに入り込み、男子と一緒にパンケーキを食べていますよ、という写真が出来上がる。
「そのための工作か」
「まぁ、私がしゅんちゃんを大好きなのは本当だし〜!」
満足そうに写真を撮り終えた愛生はパンケーキを切り始める。
「そうかよ」
「2人は仲が良いようだが、深嬢と時透は付き合っているのか?」
会長は素朴な疑問のように俺たちにその話題を投げかけてくる。
やはり女性はそういう恋愛模様について敏感なのか?
まさか会長がそんなことを聞いてくるとは思っていなかったので、いつもと違って俺の反応が遅れる。
「将来を誓い合った仲です〜」
パンケーキが美味しいのか、笑顔に磨きがかかった愛生は頬に手を当てて会長に妄言を言う。
「違いますよ。付き合うわけないじゃないですか」
食い違う俺たちの言動に会長は表情を曇らせ、隣のアンナに助けを求める。
「どっちが本当なんだ?」
アンナはといえば、写真など撮らずにパンケーキを食べ進めて、残り半分近くまで量が減っていた。
食べるペースめちゃくちゃ早くないか?どんだけ夢中で食ってたんだこいつは…。
軽く口を拭いたアンナは迷うことなく、
「深嬢さんが付き合ってるって言ってるなら付き合ってるんじゃないですか?」
と訳の分からないことを言い出した。
「どうしてそうなるんだよ!」
俺は食い気味に否定するが、それをより否定するようにアンナは語り始めた。
「だって、深嬢さんとあんたのどっちを信じるかなんて深嬢さん一択でしょ!深嬢さんは凄いのよ!勉強もできて運動もできるし、クラスの中では人気者!それでも謙虚で今回みたいに面倒な事は進んで自分からするし、私やあんたとはレベルが違うのよ!そんな深嬢さんが付き合ってるって言うんだからそれが真実なの!」
「なんかの宗教団体かよ!付き合ってるように見えないなら素直にそう言え!」
「確かにあんたと深嬢さんは釣り合ってるようにはミジンコ程も思わないけど、あんたに深嬢さんの好意を拒む権利があると思ってるの!?」
こいつ、言いたい放題言いやがって、、、!
でも、言い返したらそれで終わりだ。こいつと同じ土俵に立つ必要なんてない。俺は珈琲を一口飲んで落ち着く。
「ま、そういうことです会長。俺と愛生は付き合ってませんよ」
俺とアンナが口論をしていると、意外にも愛生が口を挟んできた。
「こんな風にいつも拒まれちゃうんですよね〜。それよりもアンナちゃん!深嬢さんはやめてよ〜同じクラスなんだしさ〜。普通に愛生でいいよ〜」
「いや、でもッッ恐れ多い……っ」
あんなは愛生のことを尊敬しているのだろう。
アンナは真面目だが不器用でポンコツだ。しかも、中学の時は不真面目な奴らをよく注意していたせいで、クラスでは孤立気味になっていたこともある。
対して、愛生は要領が良くクラスでの人望がある。アンナからしたら尊敬の念を持つのはあるかもしれないが、これは少し大袈裟だ。
「いいからっ!ねっ!」
首を傾け笑顔を向ける愛生。
「わかりました。愛生…さん」
アンナも嬉しそうに顔を赤らめて、慣れない呼び方の練習する。
「仲が良さそうでなによりだ」
「俺は嫌われてますけど」
「そうなるのも理由があるんだろ。聞いた話によれば時透は授業中に居眠りばかりしているようじゃないな。あまり感心しないな」
会長はジロリと俺を睨みつける。
会長に説教をされるとは思わず、流石の俺も少しは気が引き締まってしまう。
でも、なぜだろう…………口元に付いたケチャップのせいで言葉の重みが半減している。
「会長……」
俺は指摘した方がいいのか思考を巡らせる。
「会長さん、口の周りにケチャップ付いてますよ〜」
意外にも直球に指摘したのは愛生だった。
会長は顔を赤らめて、愛生から手渡された紙で口元を拭う。普段の態度や口調とはまた違った一面。
可愛いやないか。
「会長さんって少し可愛い所あるんですね〜。私てっきり氷のような人かと思っていました〜」
「そんなこと…ない」
氷のような人が実は抜けてる所があるとか、可愛いじゃあねぇか()
この後、愛生のコミュニケーション能力のおかげで話題は広がっていった。愛生がマジパねぇ。女子陣は楽しそうに会話を広げていった。流行りの服や人気の音楽、最近買ったものとか、俺は話題が振られて反応するだけで良い。
「最近、私は果物ナイフ買いましたよ〜」
「私は参考書とか。あと、肩こりに効くものですね」
「俺はゲームだな」
「私はBLぼn……特にはないな」
最後の会長の言うことは聞き取れなかった。
こんな雰囲気で生徒会を運営していくなら、仕事も悪くはないと俺は感じていた。
※※※※※※※※※※※
愛生は寮に戻ると鼻歌交じりに服を脱ぎ始める。
「今日は楽しかった〜」
今日は夏を感じさせる暑さということもあり、すぐにシャワーを浴びてしまいたい。
「会長さんは意外と可愛い所あったな〜♪アンナちゃんはやっと名前で呼んでくれた〜♪」
愛生は普段から独り言を多く言うタイプではない。
今は、今日のことが楽しかったと、自分を悟すように言い聞かせている。
そうしないと悪いことを考えそうで、みんなに申し訳がない。
制服をハンガーにかけると、机のカレンダーに目がいってしまう。
もしも生徒会の仕事がなかったら、まだ瞬記とデートしていた時間なのではないかと、ふと考えてしまう。
2人でしたいことのプランも練っていたし、勝負下着だって選んだ。
今日が楽しかったことは事実である。会長は可愛いかったし、アンナからは名前呼びをしてくれた。
それなのに、、、、、、、、、
「会長さんがしゅんちゃんを生徒会に誘わなければ……ッッ!」
ドス黒く湧き上がる負の感情が、愛生の身体を支配する。
「まただ…………ッ」
最近、不安だったり後悔のような気持ちになるとどうしても感情が制御できなくなってしまう。
気分を入れ替えるために、シャワーを浴びるようとするがシャンプーがないことに気づいて浴室を抜ける。
「シャンプーの詰め替えは買ってたはず……あっちの収納か〜」
愛生の部屋はきっちりと整頓されていて、目立った所はない。
ただ、机の上にある、今日のために書いたデートプランの紙がどうしても愛生の目を引く。
どこに行って何をしようかお昼や夕飯での食べる物など細かく調べた形跡に、自分でもよくやったとさえ思う。
「ーーーーっっ!!」
不意に、愛生は引き出しに入れてある果物ナイフを手に取り、取り憑かれたかのように浴室に向かう。
そして、愛生は自分の左手を浴室の壁に押し当て、ナイフを持った手で殴るようにして自分の左手を貫き始めた。
「あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!あいつらがいなければ!」
傷はいくらでも再生して、自分自身の手で元通りになることを阻止する。
顔は普段の笑顔を見る影もなく狂気を浮かべ、派手すぎる自傷行為に快感すら感じているようにも見える。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
抉って、抜いて、再生して、抉って、抜いて、再生して何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…
壁から溢れているような赤黒い液体は、足元にまで滴ってくる。血は生温かく、誰かに触られてるかのような人の温もりを感じる。
吹き出した返り血は眼球に僅かばかりかかるが、瞬きすら忘れて自傷を繰り返す。
そんな狂気に支配された中、スマホの着信音がメッセージの通知を知らせ、愛生は我に返る。
「あれ?私…………何やってるだろ……」
疲れているせいなのか、愛生自身でさえも分からない。ただ、今のところは、自分が異常だと言うことは理解できる。
「リフレッシュしなきゃ……」
そうして、愛生はナイフを握った手にいつも以上の力を込めて、自分の首筋を切り裂くのだった。
グロシーンを書いてたら、良い気分になった、どうもなめろう巻です。
グロシーン多めという希望があったので、グロを増したつもりです!
合わない人がいましたら申し訳ございません、でも辞めません。
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