【プロローグ】恋愛否定の主人公
恋は麻薬だ
恋をするだけで毎日が楽しく、恋人がそばにいるだけで幸せな気分になれると言う。
だから、誰もが欲する物だし、本能的に恋をするように人間はできている。
一方で好きな人に拒絶され、もう手に入らないと思うと絶望で立ち直れなくなる。
悔しくて、死にたくて、もう2度と誰かを好きにならないと決意することもある。
そのはずなのに、喉元の熱さを忘れたように、新しい恋を求めて傷つくことを躊躇わず、また誰かを好きになる。
そんな理性ではどうしようもないことに振り回され、時にはどんな馬鹿な行為だって正当化される。
恋はつくづく依存性が高い。
こんな考えをしている俺は、世間からは異端とされるだろう。
だが、恋がそんなに尊いものなら、なぜ離婚する夫婦がいるのだろうか?
どうして愛し合って俺を産んだのに別れる必要があるのか。
俺の親は本当に恋に落ちて、子供を産んだのだろうか。
日本では、3組に1組が離婚している。
つまり、世間からは幸せとされる結婚生活を手放すのは30%以上ということだ。
それならば、恋をして結婚することが最上級の幸せだと誰が断言できるのか。
そんなことは不可能ではないか。
恋がそんなにいいものなら、父さんは俺を捨てなかったはずだ。
母さんだって、心の穴を埋めるためにあんな奇行に走ることはなかった。
だから、恋なんてしても身を滅ぼすだけ。あいつの笑顔が見たい、あいつが隣にいてほしい。
そんなのは「恋という快楽」を優先した一時的な幸福だ。
だから永遠の愛が美化され、誰もが追い求める。
物語の主人公は愛する人のために自分自身を犠牲にする。
俺から言わせれば、そんなのは恋愛中毒者だ。
身を滅ぼしてまで得ようとする快楽なんて、薬物と何ら変わりない。
だから俺は決めたんだ。
恋人なんて作らないって