”彼ら”の歴史
「さて、どこから話したものか…そうですね、長くなりますが最初から話した方が楽でしょうね、あなた方にも、我々にとっても。
私が現在のシステムに適用されるよりも7世代…200年ほど前の世界は現在のような状況ではなかったそうです。人は多く、環境を案じ、動物はいたって温厚で、地球は球形で、“月”という衛星もあったそうで…まあ、そんなことはよいのです。過去に思いをはせようが今は今なのですから。問題はそこではない。とにかく、そのような時代に、“彼ら”はやってきたそうです。自らを神と名乗る人間よりも高位な存在がね。彼らには人類側の神と邪神の二勢力に分かれていたのですが、わかりやすいように人類側を善神、邪神側は…そのまま邪神としましょうか。
先の大戦(といってもあれが最後に起きた大戦争でしょう)が起きたとき、善神の方々はこの星に舞い降りました。神々の名はバアル、ダゴン、バフォメット…と様々でした。そしてその中から我らがアルフ教の最高神であられる光明神ルシファー様が前に出て、自らを救世主としてこの世界を救ってやりたいと話し始めました。彼らの主張する旨はこうでした。“今起こっている争いはこの星に太古から存在する邪神の影響である。今こそ邪神と戦い、人類が、そして我々真なる神々が自由を取り戻す時である。”
最初はもちろん人類も疑いました。しかし、彼らが見せた数々の奇蹟や邪神たちの悪行が証明されたとたん、一部を除いた大部分の人類はみな彼らを信じました。そして我々の星の上に立ち、我々を支配するあの憎き邪神たちを殺そうとなったわけです。そして、邪神と人間の壮絶な戦争がはじまりました。
戦争は100年以上続きました。その戦争で、人類はたくさんのものを失いました。アルテミス計画の失敗により衛星を失い、代わりに巨大人工衛星“クリフォト”を打ち上げる羽目になりました。テスカトリポカ征伐において、中央アメリカは海の藻屑となりました。そして、最も悲劇的な事件…デウスの力によって人類は当時90億人から40億人まで減少し、南極の一部に流星群が降り注ぎその場所は星の中心からえぐり取られ、今でもその場所は本当に何もない空白地帯となり果てています。しかし、彼らも必死に抵抗しました。善神によって力―この力は様々です。魔法、超能力、仙術など。これは後々説明いたしましょう―を授かり、神々と戦いました。彼らはまた我々のために戦い、我々を守ってくださいました。そして西暦2099年、現在では“黄昏戦争”と呼ばれる戦乱は終結し、邪神の中でも前時代に“最高神”と呼ばれた幾柱とその他逃亡した邪神の他の神の神格の破壊に成功し、残りの最高神もタルタロスという地球全体に広がる空洞への封印に成功しました。人間が勝ったのです。
戦争が終結したのち、バラバラになり国境が存在しなくなった世界を彼らは作り直しました。そして、自分たちに真実を教え、ともに戦った善神たちを祀り、アルフ教を世界宗教とし、世界には束の間安泰が訪れました。
しかしその36年後、私の祖父がシステムの管理者になっていたころ、事態は発生しました。封印した邪神たちが封印を解こうとしだしたのです。彼らは眠りにつきながらも迷宮というものを作り、自分たちの復活を阻止する者たちから己を守るために様々な罠をしかけました。邪神を復活させまいとした祖父たちはもう一度善神の方々のところへ赴き、そのころからまた新しく神々から力を与えられ、そして我々はもう一度戦ってきました。勇者様方が来る前にも10基ある迷宮のうち、第二迷宮“釈迦如来”、第五迷宮“アフラ・マズダー”、第十迷宮“テスカトリポカ”はアルフ教十二聖人によって破壊されています。しかし、期限は着々と迫っていました。神託の神ラプラス様によるとあと3年。しかし我々だけでは絶対に神格全ての破壊なんて不可能だ。そこで先日の会議で異世界から勇者様方を召喚させてもらったわけなのでございます。
さて、ここからが本題です。我々の世界はこのままでは未曾有の脅威に襲われることとなるでしょう。いやなら嫌と言ってもらっていただいてもかまいません。しかし、お願いです。皆さんは、邪神と戦い、我々を救ってもらえませぬでしょうか?」