プロローグ
こんにちは。tipperという名前で始めさせていただきました。よろしくお願いします。初心者なので、誤字脱字や分かりづらい表現があったら、遠慮なく教えてもらえると嬉しいです。
青い世界の小さな島で男は一人歩きながら考えていた。
“さて、この監獄のような島からどうやって出たものか”と。
一年前までにも七つの海を渡り、世界を又にかけた彼ではあったが、今では彼を頼っていた仲間たちももうこの世にはいなかった。全員が飢えによってこの島で死んでしまったのである。その時には猛々しく映えていた金髪も、今となってはくすんでいて、未だ四十歳である彼の見た目はボロボロで見るも無残な姿だった。
では、なぜ何もない島で彼らは朽ちて行っているのか。船が難破したわけでもない。しかし、この島には絶望的な特徴があった。
なぜか分からないが、何度出航してみてもこの島にしか戻ってこないのである。最初この島を発見した時にはなんと美しい島だと感動した彼らでもあったが、十回目ほどで大分嫌気がさしてしまった。確か、記念することのできない百回目の帰還で発狂しかけたものもいたという記憶が彼の脳裏にかすかに残っている。
そして、彼らが飢えた原因は食料がこの島になかったからなのだが、これには理由があった。
この島に生えていたように見えた一連の植物はすべて、何やら得体のしれない鉱物―とても柔らかいにもかかわらず、食べても消化のできないものだった―でできていたのだ。
「いつ見てもこの無機物の茂みは、まるで迷宮のようだな。」と、そんなことを言いながら男は弱弱しく苦笑した。島から出る方法を考えている彼ではあったが、もはやそんなことはあきらめて、自分の死ぬ日を待っているようである。
それでも意識が薄れないように必死に何かを考え続ける彼だったが、その時、ふいに男の体から力が抜け、足元から崩れ落ちてしまった。
「―ッ!……はは」
一瞬何が起こったか理解できなかった彼だが、その後、ついに自分が死んでしまうと直感で感じた。“ああ、じぶんはやっと死ねるんだ”と。たとえ仲間が自分の前で死んでいこうと決してくじけなかった彼だが、やはり誰にだって限界は来る。彼だって機械ではないのだ。
おかしなことに、最後の最後で彼は「死にたくない」と感じた。しかし、それを行動に移すほど彼に力は残っていなかった。
あきらめた男の瞼が閉じられようとした瞬間、彼は視界に何かをとらえた。それはまるで天使のような、かつ悪魔的なまでに神々しいーまさに女神のような―女性だった。それを見て、彼は最期にこういったのだった。
「あんたのような人か住んでいるなら、あの世だって、悪くはないな。」
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―百年後。
その島の海岸にボロボロの少年が三角座りをしながらつぶやいた。
「…最悪だ。」と。
少年は半泣きだった。