スケルトンと甲冑の童 2
短めですみません。
降り掛かる雨、馬車が行き来する大通りの角に彼は立っていた。
目の前の光景に、自分はゲームの世界に来たことを実感する。傘等の文化が無いのか皆外套を身に纏い生活を行っている。
身体に降り掛かる雨 馬車を引く馬の蹄の音 どこか焼き上がっただろう出来たてのパンの匂い。
五感精度を上げる為、オートナンバー手術が必須と謳ったメーカーの言葉に頷くしかない。
だが自身の身体を見た時、今までの感動が打ち消されてしまう。
「なんだよこれ……」
彼がキャラクターメイクで選択したのは等身大の自分自身。ペンだこの再現は出来ないにしてもある程度の完成度は期待していた。
だが実際、今彼の目に写っている右手は理科室にある骨格標本と同じ骨の手、右手以外の部位も同じ仕様になっている。
「どうなってるんだ……バグなのか??」
顔に手を当て確認するが伝わるのは肉感ではなく武骨な手触り、右下の奥歯も無い事から自分の身体なのだろうと納得するしか無い。
「そうだ!!再度ログインすれば、直っているかも知れない」
名案だと思いメニュー画面を開いてみる。
チュートリアルで教わった通りのメニュー画面が出ているが、ログアウトの項目だけ何故か選択できない。
詳細設定・ヘルプの項目は選択出来たが開いてみても『読み込み中』から更新されない。
「どうすれば良いんだよ」
メニュー画面を閉じる。
名案が潰れ、解決策が出ない事で座り込んでしまう。
これからどうすれば良いか考えていると、彼に声を掛ける者が現れた。
「あんちゃん素っ裸でどうしたんだ??野盗にでも襲われたのか??」
見上げればそこには犬……いや狼の顔をした二足歩行したナニカがいた。
思いもよらぬ者に声を掛けられ彼はおもわず……
「ま、間に合ってます!!」
と会話が成り立たない返答でその場を逃げ出した。
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あれからしばらく走り、呼吸を整えた彼は、ようやく周りの状況の違和感に気付いた。
石畳・建造物・馬車などはファンタジー映画に出てくる物に似ている。
そして本来なら人の姿をしたNPC、魂人と呼ばれるプレイヤー達がいるはずなのだが、誰1人いない。
代わりに存在しているのは多種多様な姿をしたモンスター達。
人に似た姿の者も居たが、角や鱗などが付いていた。
彼の知っている人の姿・種族は何処にも存在しなかった。
再び彼はメニュー画面を開き、ステータスの項目を選択する。自身の種族を確認する為だ。
キャラクターメイクで選んだ種族はヒューマン。
だが目の前のステータスには違った種族が表示されていた。
「スケルトンってどうゆう事だよ……俺は夢でも見ているのか??」
あり得もしない現象に驚きが隠せない。
自分は違うゲームをしているのではないかとも思ってしまう。
夢かどうか確認したくても、彼にはつねる頬がない。
ただ降り掛かる雨の冷たさが、夢ではないと証明するのだった。