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知らないは幸せなこと  作者: 鈴白さわ
第1章 闇があるから光がある
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1  きっかけはきっと偶然じゃない

すっかり遅れてしまいました。

ごめんなさい。

僕の名前は、白中玄(しろなかしずか)志那杜ヶ丘(しなずがおか)学園に通う、中学三年生だ。


平凡な中学生だった僕の日常がまるで変わってしまった一番のきっかけは、彼女が転校してきたあの日。およそ1カ月前に彼女と友達になったことだ。






――――――――――――――――――――


「みなさんはじめまして!今日から転校してきました、佐倉ふたば(さくらふたば)です!仲良くしてください!」


よく通る元気な声が教室に響く。

今日から転校してきたというその子は、ふわふわした髪を二つにまとめた、小柄で可愛いらしい女の子だった。


今日は三学期の始業式。変わった時期からの編入にざわつく僕たち。まぁ、男子たちのざわつく理由はそれだけではないと思うけど。


「はーい静かに。佐倉さんは白中くんの隣の席ね。」


「っえ?」


僕の隣の席なの?

確かに、空いてるけどさ……。


「はーい」


元気に返事をした彼女、佐倉さんは笑顔で僕の席まで歩いてくる。歩くたびに髪がゆれている。


ずいぶんと元気な子だなぁ。ちょっとうらやましいや。


「はーい、佐倉さんの歓迎の場などは、後にして、授業を始めます。」


一瞬で空気が授業モードに切り替わり、みんな一斉に準備をはじめる。

次は英語だったけ?


「ねぇ!君!」

「!?」


ずいっという効果音が聞こえてきそうなほど顔を寄せてきた佐倉さんは、


「教科書見せて!」


と言った。僕は驚きながらも教科書を見せた。パーソナルスペースが近めな人なんだなぁ。


授業はいきなり習っていない英語の文法が理解している前提で始まった。

予習していて良かったと安心しながら、ちらりと佐倉さんを盗み見る。


進学校であるこの学園に編入するだけあって佐倉さんは、楽々と授業に取り組んでいるように見える。まぁ、うちのクラスはそこまで頭が良いクラスではないんだけど。


うちの学園にはA組、B組、C組、D組、E組、F組まであってうちのクラスはD組だ。

まぁ、中の下って感じだね。


やば、当たる順番だ!


「はい!えっと……」




始業式なんて関係なくみっちり授業を受けて昼休みになった。持ってきた()()のお弁当を取り出す。


「ねぇ、白中くん。もし、お弁当持ってきてる人だったら一緒に食べませんか?」


「っぅわぁ!」


またしてもずいっと顔を寄せてきた佐倉さん。この距離の取り方慣れないとなぁ。


「…うん。いい、」


「ねぇ!!佐倉さん!」

「お話しよう!」


急にドタバタときた女子達。取り囲まれる佐倉さん。

あぁ、結構頑張っていいよって言ったんだけど、聞こえてないよね…


女子達からの質問の雨にタジタジになっている佐倉さん。大変だなぁ。


「あぁ、せっかく二人で話してたのに、取られたよ。俺の佐倉さんなのに。」

「おいやめて、紺野。僕の真似ヘタ過ぎでしょ。」


突然僕の頭にのしかかる腕、降りかかる声、新学期早々からかってくるこいつは、紺野悠人(こんのゆうと)。小1からずっとクラスが一緒の幼馴染だ。ここまでくると呪われているのかと思うほど、長い付き合いだ。


「いやぁ、やるねぇしずかちゃん。転校生に昼飯に誘われるなんて。」

「…聞いてたの?」

「ここ最近、身長と女顔しか弄れなくて退屈だったしずかに、からかえそうなネタができたんだよ?見逃すわけ無いでしょ。」


もうため息しかでない。いっつもそうだ。毎年、毎年身体測定の度にからかわれ、バレンタインには、わざわざ僕の下駄箱にチョコを入れてくる悪趣味っぷり。


なのに、背は高くて、イケメンで、運動できて頭もいいなんて、神様は理不尽だ。

意地悪なのに、そこが良い!と女子からモテてるし。意味がわからない。

分かりたくもないけど。


「ごめんなさい!」


佐倉さんの声で心の声をやめると、佐倉さんが女子達に謝っている姿が見えた。


「今日は、白中くんと食べるんだ!」


おおっとー。沢山の好奇の視線と一つの意地悪な視線が僕にささる。

やめて、声が聞こえたのはよかったけどその反応は誤解と怨みを買いそう。










「いやー、屋上は良いね、清々しい。」

そう言った悠人から僕は、そろーっと視線を逸らす。

クラスのみんなからの視線から逃れるため、悠人を引っ張って、佐倉さんと僕と悠人の3人で屋上にやって来たのだ。


「屋上なんて、ひっさしぶりだなぁー!」

やたらと屋上を推してくる悠人。

佐倉さんの手前、ニコニコしてるけどあれ、絶対怒ってる。


「私、屋上でご飯食べるの初めて」

僕と悠人のピリついた空気に気づかず、のほほんと話す佐倉さん。


「そ、そうなんだ!!」

ありがたい、全力でこの空気からの脱出を試みる。


「……というか、良かったの?佐倉さん。僕としては嬉しいけど、女子に誘われてたよね?」

脱出する為の話題でもあるが、僕は気にしていた事を佐倉さんに聞く。


「うん、みんなとは今度一緒に食べる。だって、先に約束したのは、白中くんだからね、お隣さんとは早く仲良くなりたいし。」


ふわりと素敵な笑顔でそう言った佐倉さん。

仲良くなりたいなんて面と向かって言われると、照れ臭いけど嬉しい。


おい、悠人そのニヤニヤはなんだ。



「それでねっ、!」


佐倉さんの声に悠人に向けていた視線を慌てて戻す。


「私のことは、佐倉さんじゃなくて、もっと気軽に呼んで欲しいな。」


「うぇうあ!?」

「……だめ、かな?」


「ゔっ、」


そういう頼み方をされてしまうと、断るなんて出来ない。

気軽にって言ったって、名前呼びはハードルが高いからなぁ…


「じゃあ、佐倉って呼んでもいいかな?ぼ、僕の事は好きに呼んでもらって構わないから!」


自他共に認める草食系の僕には、漫画の主人公のように爽やかに呼び捨てが出来ず、声が裏返ってしまった。かっこ悪い…


悠人、ニヤニヤするな。


「ありがとう!しずか!!」


輝くような満面の笑み。名前で呼び捨てされるとは思いもしなかったから、僕は分かりやすくうろたえた。


「……う、うん。ど、どういたしまして。」 


「…くっ、良かったね、しずか。……ぷっ!」


おい、ニヤニヤでとどまってないぞ、悠人。


僕たちはそれから、ご飯を食べながらいろいろな話をして仲良くなっていった。


余談だけど、佐倉は悠人のことは悠人くん、悠人は佐倉を佐倉ちゃん、と呼ぶことにしたらしい。

佐倉って呼ぶって決めたのは僕だけど、僕と佐倉の距離感が近いように誤解されやすいのでは、と気づいて今あせっている。

ちゃん付けにしとけば良かったなあ。















次こそは、きっと早めに!


面白い!と思っていただけたら、評価よろしくお願いいたします。

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