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星屑の魔術師たち  作者: ふらんべるふらんべべ
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プロローグ

私、この本かき終わったら、結婚するの....




って夢を昨日見ました。

宇宙。広大な歴史の中で、人類が考えたこともないような時を過ごしてきた世界。ビッグバンという細胞の誕生から爆発的な成長を進め、今農中の膨張のスピードは光速をも超えている。最速は光の速度、というがこの時点で、光の速度は最速ではないことが証明できる。

 時に我々の太陽系のある、銀河とは、恒星が集まり、銀河となる。それは何時しか群れて銀河団になる。そしてさらに群れて超銀河団になる。そうして銀河は網目状にその体を広げているのだが、今、人類が見ている遠くの銀河はすでに其処に存在していないといわれている。その寿命の長さのわりに、光がこちらに届くまでが遅すぎるからだ。因みに、光はマッハ九十万という速度を誇る。つまり一秒間に光は地球を凡そ七周する計算になる。

 そんなすさまじい速度を誇る光だが、結局は宇宙にとってその程度でしかない。

 光、という速度の中では、時間の進みが極端に遅くなるという。いや、まず早いものに乗っていれば、時間の進みは必然的に遅くなる。それは新幹線でも例外ではない。

 人類は、自らの銀河以外に、太陽系の様な恒星の周りをまわる惑星群があると推測している。もしくはこの銀河の中に、あると考えている。なんとも稚拙で愚かだが、そこがまた、人間らしい。

 星の終わりには超新星爆発という華々しく、そしてその周りを無に帰すものがある。普通の星ではこれは起こらない。恒星。つまり光を発している星でなければこれは起こらない。惑星でも同様にこれは起こらない。なぜなら、惑星は鉄の塊の周りに岩石が集まってできたものだからだ。

 超新星爆発の後にはある一方向にγ線という放射線を放つ。過去に一度、その超新星爆発によるγ線を、地球は浴びたことがあるらしい。そして当時の生物は全滅した。一部の生物を残して。

 さて、ここまで長ったらしく宇宙について話してきたが私は宇宙について何も知らないからカンペ読んでいただけに過ぎないのだ。

 あぁ、堅苦しいキャラあきた...ぶっちゃけると私、宇宙の知識っていったら星間戦争っていうもっぱらな題名の映画でしか得てないから意味わからない知識しかないのよ。例えば、すべてのものにはフ〇ースっていう力がはたらくものがあってぇとか...まぁそのくらいの知識しかないのよ!さっきまで「カンペを読んでいただけに過ぎないのだキリッ」とかやってたけど、そもそもが私そんな性格じゃないし。先ず、貴方って、そもそも、私が誰ナノかも知らないわけよね?そうよね。名乗った記憶ないもの。初対面だしね。私の名前はイシュタム。知らない人もいるかもしれないけれど、私はこれでもかみゅ...神よ///それも、自殺を司る、ね。

 私が普段どんな事をしているか...っていうのは、すべてあなたのご想像にお任せするわ。おそらく、全部貴方の創造している通りよ。

 それでなんだけど...まぁ、なんで唐突に宇宙の話をしだしたかって事なんだけどね。貴方。いえ。貴方達というべきね。それであなたたちはみんな、ペテルギウスっていう恒星の超新星爆発により放出されたγ線によって死んでしまったのよ。これで合点が行ったでしょ?記憶もなしに突然あなたがこんなところに飛ばされたんだから。ってあら?意外と驚かないのね。私はもうちょっと驚くと思っていたんだけど、そうでもないのね。まぁいいわ。その方が楽だから。

本題に入る前に、なんで私が突然あなたたちの学習した宇宙の推論を出したかって言うとね、今あなたのいるこの世界は貴方達の推測通り、別の銀河系の中の太陽系、なのよ。もちろんこの世界にも人間がいるわ。ほら、私の体も人間の体でしょ?まぁ、獣人とか、亜人族とか、そっちじゃ普通じゃなかった人類もいるんだけどね。

 そういえば、私の名前は、貴方の世界にも存在していたはずよ。私たちは、ずっと、この銀河に住んでいた。貴方達よりも前に。ここに。それを貴方達の先祖が見つけたのよ。だから今も貴方達の世界に私たちの名前が残っている。凄いわよね。貴方達の世界にも、多少なりとも魔術の概念があったことの証明になるのよ。これ。地上からアンドロメダ座銀河の中を覗こうだなんて不可能だもの。当時の私たちは、貴方達も魔術が進歩すると思っていたんだけど、違った。結局魔術の概念はすたれていったわ。そうして鉄とかを使った機械を介して生まれる力を糧として動くモジュール。まとめて科学が進歩した。貴方達に魔術の才能がなかったの。

 もちろんこの世界には科学の進歩はなかったわ。でも魔術は進歩した。魔術以上の科学は私たちにっては存在しないわ。それは貴方達も同様だったでしょ?科学以上の魔法はないって。そういう事よ。

 と、話がそれるわね。本題に入りましょう。私さっき口走っちゃったんだけど、アンドロメダ座銀河。なんで出てきたかなんとなくわかるでしょ?その通りよ。ここはアンドロメダ座銀河。その端の方に生まれた太陽系。その中の、私が作った異空間よ。同じ宇宙。私が突然宇宙の話をし始めたのは、これが理由。まぁ、それだけが理由じゃないんだけど、どうせそれはすぐにわかる。

 さて、そろそろ時間よ。私が一方的に話してごめんなさい。これからのあなたは自由。もしかしたらまた会うかもしれないけど、その時はちゃんと、お話をしましょう?まぁ、貴方が死ぬときって言ったら、その寿命によってだけどね。

 

 さぁ、後ろに振り向きなさい。そこに大きな光の渦が見えるでしょう?それがあなたの行くべき道。そして、貴方の新しい人生が待っている。さぁ行きなさい。これからは自由よ。


_____さぁ______




  「Sternenhimmel Kind」


 大陸から一本道を通って行けるようになっているある孤島には、不思議な場所があった。一本の木を中心にして広がる花園。現地の人間はそこをプラタート花園と呼ぶ。

 見渡す限り、ただ延々と続いているように見えるその広大な花畑には、色鮮やかな花が咲き誇っている。ここは季節も何も関係なく年中ずっと花が咲いている。現地の人間も、この花畑の謎は知らない。

 様々な花が、咲いている。菊の花。百合、薔薇。何も珍しくない花や、咲いていること自体が珍しい花でさえも、この場所であれば関係はない。全ての花、植物、生命は、ここに均一に集まる。集まるようにプログラムでもされているように、ここにあつまって来るのだ。

 この花畑の花は、いくら積んでもまた次の日には元通りに咲いてる。そのことから人々は呪いだといってなかなか近寄ろうとはしない。

 誰がこんなにも大量の花を植えたのかも、誰がこんなにも強大な花畑を作ったのかもわからない。まず、いつからあったのかさえも誰一人知る物は居ない。ここは、完全に外界からの危害を拒絶し、どんな攻撃であろうとここを飛ばすこともできない。まさしく人々が言うようにのろいだ。

 地平線の先まで咲く花々の真ん中に、堂々たる風格でたたずむ大樹の姿がある。その木になる全ての葉は、力強い緑を放つ中、少しばかり光を帯びていた。

 その木陰には、ほかにはない、たった一輪だけ、白く、光り輝く神聖な雰囲気を持つ花が咲いている。見た目は彼岸花の様で、その周辺には、光の胞子の様なものが漂っていた。触れれば崩れてしまいそうなほど繊細なその花を売ろうと、手折ろうとする人間も数多くいたが、そのうち一回も折れたことはなかった。

其れとは対照的には、たった一輪、反対側に昏い光を放つ禍々しい雰囲気を放った花が咲いている。

その周辺には、花から染み出す様に、赤黒い胞子が出ている。

 その二つは対をなす存在だが、同じ大樹のもとに咲く、同じ存在。そしてお互いがいなければどちらかが枯れ果てて終わる。そのさまは、光と闇。まるでそれが、同じものであるという事を示唆しているかのようだ。

 今日は、雲一つないすっきりとした天気だ。湿度も低くも高くもなく、気温も二十度前後とちょうどよい。優しい風が吹くたび、枝が揺らされ、葉と葉がこすれてさーっという静かな音が鼓膜をやさしく揺らす。

 花弁に乗った朝露が、太陽の光に照らされてきらりと輝く。

 青い空と、青々と茂る、草木のコントラストが、目に優しく、色鮮やかな花の自然な色味が、目に過度な刺激を与えない。

 ここは、現世のもとは思えないほど美しく、そして底知れぬ恐ろしさを秘めている。まるでその場所にだけ、神がいるみたいに、

 そんな場所に、今日も一人の少女が、空を飛んでやって来る。毎日、決まった時間に、一日も忘れることなく。幼いころから続けていた花摘みをしに。

 栗色のふんわりとしたロングの髪の毛を揺らした、童顔で、垂れ気味の目はおっとりとした印象を与える。体格は比較的細く、おとなしそうな顔付きからなのか、体つきに色っぽさが際立っている。

 彼女は、中央にある、大樹のふもと、その花の咲いていないところに、静かに着地をする。

 着地後、ゆっくりと後ろに振り返った彼女は、花のもとへと駆け寄ると、身を低くし、花に顔を近づける。花を見つめるその笑顔は、ここにあるすべての花より美しく、けなげにも思えた。

 彼女は、気に入った花を、やさしく、根本から手折り、持ってきたかごへと入れる。その手さばきは非常に手慣れている様で、ほとんど力を入れているように見えないのに、花の茎が自然に折れている。これは長年の経験からなる技術なのか、手折られて直ぐの花は、基本的にすぐに元気がなくなっている印象だが、彼女が手折った花は、いつまでも美しく,まるでおられたことに花が気づいていないかのように、自然なままだった。

 ここには彼女の好みの花が多く咲いている。それどころか、ここに咲いている花すべて彼女にとっては美しく、可愛らしく見えている。特に好きな花は、甘く、その匂いだけで、頬が落ちてしまいそうな、芳醇な香りを含めた美しい、淡いオレンジ色をしたみずみずしい花。恐ろしいほど美しい、ワインレッドに朝露のきらめきがのる、美しくも、棘のついた攻撃的な花。淡く繊細なコバルトブルーが、印象的な、大きく開き切った花弁の特徴的な花。全てがこの世界では貴重であり、この場所では普通のもの。だが、誰も近寄ろうとしないゆえに、それが表に出ることは一切なかった。つまりは彼女が、この世界でも一輪数十万にもなる花を独占していることになる。

 基本的に摘んだ花は押し花にして栞にしたり、そのまま飾ったり、薬品の調合、香水の調合に使ったりなど、そこからさらに趣味を広げていく。特に花から作る染料はこの世界では非常に貴重で、作っては売るという作業をよくしている。今花を摘んでいるこの瞬間も、次は何を作ろう、どう鑑賞しよう、かなど、多くのことを考えて花を摘んでいる。

 いつだって花は彼女の心を癒していた。

 彼女は、夢中になって花を摘んでいた。その様は、無邪気な子供の様にたのしそうで、可憐だ。

 十歳のころから、ずっと唯一の楽しみとして花に触れてきた。彼女は生まれもよく、親も厳しくしつけていた。彼女がその名に恥じぬ大魔導士となるために。彼女自身、真面目な性格もあり、親の期待にそぐえるような努力をしてきた。親は、一番とまでは言わなかった。平均でいいと、常日頃から言ってきては居た。無理をして体を壊してほしくなかったからだ。だが、彼女は真面目な性格なこともあり、努力を惜しまず、自分の実力を少しでも伸ばせるように時間を使ってきていた。そのおかげで、才能も相まって、成績や、魔法技術など、当時の最善性んでも遅れをとらない実力にまで至っていた。ただ一時期を除いて、一番を逃さなかったほどに。

あの日も、魔法の修練のために森の奥深くに入った。比較的高度な戦闘を要されるその森での狩りを、彼女は修行の材料としていた。だが、森の魔物の呪い「迷いの森」を掛けられ、その森から抜け出せず、魔物に食われるまでただ彷徨うことを強制された。そんな時、一筋の光が、森の奥にあるのを見つけた。町のあかりだと思って走り出した彼女は、その森を抜けて、感銘を受けた。森から出てすぐに、圧倒されたのだ。その花畑の美しさに。宵闇を照らす月明かりに反射した露のきらめきと、夜に飛ぶ閃光虫の輝き。そして中央にたたずむ巨大樹の果実の輝き。そして幽玄に広がる空の眩い星たちにも似た、花々のきらめき。力強く咲き誇る、多くの花たちの美しさは、今まで魔法と親の期待に応えること以外に興味がなかった当時の彼女にとっては驚くべきものだっただろう。一本しかなかった道を、何本にも広げてくれた。彼女のなかった楽しみと、精神的な余裕を与えてくれた。この時の彼女が流した涙は、こういうものなのだろう。

 彼女にとってこの花畑は出会いの場所なのだ。

 人生何があるかわからないなと考えているうちに、持ってきていたかごがいっぱいになってしまっていた。これ以上無理に花を摘むとせっかく摘んだ花が傷んでしまうので、今日はこれくらいで帰ることにした。

 私は花がほとんど咲いていない大樹の木陰に入ると、足元に魔力を集中させる。空を飛ぶイメージが頭の中に膨らむ。体の中心から足元にかけて、感覚的に不思議なものが流れていく。多くの人間が体内で生成することのできるマナが、足に伝わり、酸素に触れ、膨張する。そしてそれは、さっき私がイメージした、空を飛ぶという感覚に代わる。足元に伝わった魔力がm、さく裂し、空へ飛ぶ。浮いた体を支えるように随時新しい魔法イメージが適用されていく。体全体を覆うようにマナフィールド(魔法の有効圏)が広がる。目には見えないが、力を使う感覚として、認識できる。体が宙に浮くと、体中に広がった、マナフィールドが体内に蓄積されたマナを消費して飛び始める。私はその状態を確認すると、後方にマナフィールドを展開し、爆発の様なものを起こす。正確には空気をマナで強くたたいている。体は逆方向に一気に飛ぶ。風を切る音が耳に入る。かなりのスピードが出ている証拠だ。私はこの状態を保つと、空気抵抗をなくす魔法をさらに上書きする。空気抵抗がなくなったことで、任意に行わない限り減速をしないし、軽い力で飛行できるようになる。

 ここから、私が住む首都ラプラス第三十二区オピニオンまでは、直線距離で41Pt(ペンタツア=1Pt=0.633Km)ある。今の速度で行けば十分程度で着く。

 私は、花を摘んだかごを落とさないように両手で抱えながら、鳥とかに注意しながら慎重に飛行路をたどった。

 街までの道はほとんどが緑に包まれている。目を凝らせば森の中に道があるのが見える。だが途中からその道はかすれて消えている。その道はさっきの花畑につながる道だが、人が通らなくなったゆえに道として消えていっているのだ。だが、途中までの道は今でも使われている。

たとえば、魔物を狩りに出ている冒険者が使ったりするからだ。かなり重要な役割を果たしている。それにここ周辺の森は、大都市ラプラスの発達に携わってきた資源がいまだ多く残っており、それを採掘に来る技師や、その使い魔。ほかにも、材料商人等が多くみられる。

 この森周辺の地下深くには、マナのもとになる魔力源の塊、魔力水晶マナクリスタルが蓄積されている。魔力兵器や、魔力武器に多く使われるこの水晶は、特に大都市ラプラスの政府直属の自衛隊技術班に重宝されている。普通これだけの魔力水晶はなく、一センチほどのサイズが、地下深くでとれて多い方だった。今までは一個三ミリで300万ゴールドだった。最近は、この森を攻略するだけの兵力が整い、進行できるようになったことで、安定した魔力水晶の採掘が可能になった。それに伴い魔力水晶の値段は暴落した。前述のとおり、300万ゴールドだったものが、今では400万シルバー(一ゴールド=一万シルバー)になった。まだ市場のい価格では最上位価格で出回っているが、この調子で行くともう少し落ちるのも時間の問題だろう。

 長く鬱陶しい森の少し先を見ると、ようやく町の面影が見えてきた。そのサイズは34Pt。アリアクラス大陸きっての大都市であるこの町では、毎年のように優秀な魔導師が冒険者の界隈に名をはせている。大都市ラプラスは、アリアクラス大陸では最も有名な魔術都市である。魔術が著しく発達していて、家のあかりから都市の水道の管理など、すべて魔法で管理されている。そして、アリアクラス大陸の四大交易都市としても有名で、都市としての経済力もトップクラスである。保有種族数も最大規模で、エルフ、ダークエルフなどのエルフ族はもちろんの事、人間族、狼人族、亜人族、リザードマン族、オーガ族、鳥人族など、アリアクラス大陸、ステリア保護地域(保護地域とは都市同士の同盟において、同盟国が保有、または保護している地域の事を言う。アリアクラス大陸には、全四種の保護地域または管轄区域があり、ステリア保護地域のほかに、マグリス保護地域、ユートラシア管轄区域、ヴァルトノフ保護地域がある)に分布する種族はそろっている。これはステリア保護地域では最多で、基本的に一つの都市に、多くて三種族というのが普通である。 

 都市としての機能や、戦力、権力はすさまじく、ステリア保護地域のほとんどを自らで管理している。ステリア保護地域は、五つの都市、十四の集落、六つの村によって構成されている。都市に進入する際に徴収される税の管理も大都市ラプラスがしており、現在では十ブロンズで落ち着いている。村や、集落は税の徴収がなく、自由に出入りができる。ここ最近では商人通行証という専用の通行証が発行されるようになり、商人は税の徴収なしに進入できるようになってきている。

 毎年送り出される魔術師は、全員相当な実力者で、アリアクラス大陸で魔術師といったらこの大都市ラプラスが真っ先に出てくるのが普通である。

 実力者の排出にかかわっている要因は、中心にそびえる、摩天楼である。それは同時に、魔法都市といわれるようになった因縁でもある。その摩天楼自体が強大な魔力源の塊であるからだ。この魔力源は、常に大量のマナを放出している。そのマナは、人間やその他の生物に移転する。これがまだこの都市の地下に眠っている(これは森の地下に眠る魔力水晶とは別のものである)。ということは純粋な魔法火力で、陣地戦を行った時、魔導師はラプラス内にいると、実力以上も戦えるということになる。それに、常日頃から強力な魔力源にさらされ、その上に住んでいることもあり、ここで生まれ育った者のマナ生成力は並外れている。常人が百なのだとしたら、その二倍から五倍はあるとされている。常日頃からマナに触れているというのはそれだけのアドバンテージがあるということだ。

 なんて、いつの間にか、ラプラスの門はすぐそこまでに迫っていた。私は一気に足元にかかっている魔力を抜く。スピードがみるみるうちに落ちていく。私はそのまま地上に向けて体重をかけると、自然に高度が低くなっていった。ちょうど地面との距離が木一本分まで迫ったころ、私は、重心を変え、足から地面につくように調整すると、今度は飛んだ時とは違うように、足元にマナをかける。地面との反発力をうむ魔力を足元にイメージし、力を抑えながら魔法を発生させる。すると、地面に足が触れる瞬間、眼に見えないクッションの様なものが、発生し、一瞬体が浮く、そしてすぐに、ゆっくりと着地する。門の前に立ったままの門番は、その光景を見るなり、そこに何事もなかったように立っている彼女に向かって手を大きく降る。

「よう!嬢ちゃん!」

 鎧を全身にまとい、立派な顎髭が実に特徴的な、傲慢な体を持つおやじは、背丈が高く、重々しい見た目だが、その実戦闘において魔法は使えないが剣士としての実力が高い。彼はここ東門の警備をする門番の男だ。

 門番は張りのある威勢のいい声で彼女に話しかける。彼女は、声の主に微笑みを返すと、小さく手を振る。門番は、眩いばかりの笑顔を見せると、がははとあからさまな声を出す。門番は、門に近づいてくる彼女の手元を見る。今日もかご一杯花が摘んであった。色とりどりの花が、可愛らしく摘まれている。門番は彼女の顔を見直すと、がははと笑った。

「今日も沢山摘んだな!嬢ちゃん!」

「はい。今日はいつもと違う花も摘んだんですよ。あ、これ一輪どうぞ」

と、彼女は、自分のかごに摘んである花の一つをやさしく取り出すと、門番に差し出す。門番は、彼女の差し出している花を見やる。赤い花弁が複雑に入り組んでいながら、その花弁一つ一つが陽の光を浴びれる様な位置取りになっている。決して適当に入り組んでいるわけではなく、見た目が美しい、一種の彫刻作品の様なものだった。薔薇の様だが、そうではなかった。門番は、それを手で受け取る。なんの花だろうか。この辺りでは見かけない。

「この辺りじゃみねぇ花だな。なんていうんだ?」

門番は、低く唸るような声をあげながら、自分の記憶からこのような花があったか探り出す。

「カーネーションです。綺麗ですよね。遠い島の風習では、母親に日ごろの感謝を込めて渡すそうですよ。」

聞くと門番は感心したようにうなずく。自分よりはるかに若い女の子が、自分たちも知らないような知識を持っている。それは決して好きだから、というだけの理由ではないことも十分承知しているからこそ、感心に至る。好きでもそこまでしようと思えるかは微妙な所であると、その無駄に長く生きてきた人生の中で見つけたからだ。

 門番は、しばらくその花を見つめると、感慨深いような表情をして、がはは、と枯らしたような声で笑う。彼女の怪訝そうな反応をよそに、彼は自分が普段から持ち運んでいる亜空間ポーチにそれを優しく入れる。その間、今までよくしゃべる男だった門番は、一切言葉を発さなかった。

 さっきまでとは違う異様な空気が流れる。

 静かな時間がとても長く感じる。静かで、門から少し離れた商店街のにぎやかな声が、聞こえる。風のせせらぎ。揺らす葉の音は心地よく耳に残こる。普段なら、こんな時間は自分の家にいても流れない。町がすぐ横にあるおかげで、騒がしい。きっとこういう時間がほしくて花を摘みに行ってるのかもしれないと、心の奥底で考える。

 異様な静寂の中、その静寂を破ったのは門番だった。思いのほか早く静寂を破った。普段はこんな空気になることはない。それに一番違和感を覚えたのは門番の方だろう。

 「あぁ...あぁ。悪い。さ、ここを通るんだろ?俺は今から酒を飲む!早く行った!」

と言い放って、おおげさにがははと笑う。その発言に彼女はひどく顔をしかめると、門番に近づきしかりつけるように門番にいう。それはさながらその門番の母親の様であった。

「昼間っからお酒はダメですよ!体壊しちゃいますよ!ただでさえこの前医者に注意されたとあなたの奥様から聞いたんですから!」

またあいつは余計なことを、と表情で言いつつ、門番は目を彼女から逸らす。それに彼女はむっとして攻寄るが、門番に押さえつけられて途中であきらめる。その顔はどこか不貞腐れていたが、門番は見なかったことにして、おもむろに酒を取り出す。

 目を逸らして何気なく門の隣にある建付けの柱を眺めると、気紛れだったからというように、また門番の方を見て、街に入れてもらうよう頼む。

 門番はよし来た、と言わんばかりに自慢の腹を叩くと、がははと言わんばかりの笑顔で、反対側に立つもう一人の門番に指で合図する。合図を受けた門番は、魔方陣の描かれた壁に手をつける。この魔法陣は門を上げるための特殊な術式で、構造を知らなければ誰一人として扱えない。かくいう彼女も使えない。使えても勝手に門を開けることは許されないが。

 もう一人の門番は壁につけた手にマナフィールドを展開する。マナフィールドは、壁に書かれた魔方陣に反応し、魔方陣は壁から離れるように浮き出る。魔法陣は光を放ち始めると、回転をし始め、門を引き上げ始める。門はゆっくりと、着実に開いていく。途中で引っかかる様子もなくスムーズに。岩どうしでこすれる音もしない、静かな動き。

 しばらくすると、ガゴン!という岩と岩がぶつかる大きな音と振動があたりに伝わる。門と、門の天板が衝突した音だ。完全に開き切った証拠である。彼女は、その音を聞くとゆっくりと、歩き出す。去り際、酒を豪快に飲み始めた門番の男をにらみつけると、最後に念押しをしてさっさと行ってしまった。

行ってしまった彼女を確認すると、魔方陣に手を触れていた門番はさっきとは逆方向に力を展開すると、門はゆっくりとしまっていく。開いた門の隙間からまだ見える少女の後姿をふと見た太い腹の門番は、酒を一口ぐいっと飲むと、回ったアルコールで顔が赤くなりつつ、しんみりとした顔で誰にも聞こえないような声でつぶやく。それを見ていた魔方陣に手を触れたままの門番は、怪訝そうに彼の表情を見やる。

 ついに門が締まり切ると、魔方陣から手を離した門番は、酒を飲んでいる太い腹の門番に近寄る。それに気づいた太い腹の門番は、近づいてきた門番に目を向けると「どうした」と一言簡潔に聞く。

「何か彼女にあるんですか?」

また簡潔な質問だったが、太い腹の門番はゆっくりと目を瞑ると、静かに首を左右に振る。それに違和感を覚えた彼は、少しばかり、腑に落ちないなりに、これ以上は踏み入れるのは他人である彼女に失礼だと、無理やり自分を納得させ、配置に戻る。

 太い腹の門番は、また酒をぐいっと飲むと、空を見上げる。





 珍しくこの夜はプラタート花園は宵闇に包まれていた。一年中光が消えることのないこの花園では異様な風景だった。何かが起こる前兆。星空の光だけがその花畑を照らす。月さえも雲に隠れて見えもしない。何かが図ってそうしたように。どす黒く塗りつぶしたようにある雲は一切の光など通しはしなかった。

 それは突然の出来事だった。誰の目にも明白に、違和感がそこに現れる。空間が歪む。光が強い重力に引っ張られ、ぐるぐると回転を作る。そして、吸い込まれた光から現れた、眩いばかりの光は、暗闇に包まれる花園を明るく照らす。小さな太陽がそこにあるように、強く、力を持った光。そこにマナの対流が生まれる。

 光は小一時間ほど出ていた。光が消えきるだいぶ前から、あたりに光は戻っていた。光は、徐々に小さくなっていく。徐々に徐々に。太陽が地にのまれていくように。静かに。音もなく。光で騒がしく思えていた空間に静かな暗さと、甘みのある明るさが戻る。またいつも通りの、平和は花園が返ってきた。


因みにその発言をしたのは女体化した自分だったんです。

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