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銀のピアノ姫、恋を知る  作者: 卯月よい
2/20

日常

ここからはほとんどシア視点です。

他の方の視点になる際は前書きに書きます。

 ここは嫉妬と陰謀が渦巻くお城。私はここで第3王女であるリーシラ様付きの宮廷音楽師をやっている。

 宮廷音楽師とはお城の中で音楽に関係する仕事をする人のことだ。主に演奏・調律・作詞・作曲などが挙げられる。宮廷音楽師は宮廷音楽師団に所属している。ちなみに宮廷音楽師団はお城の音楽に関係するすべてのことを担当する部署のことである。

 私は主にピアノの演奏をしている。ピアノは小さいときから母に習っていた。


「ねぇ、シア。そろそろお茶にしましょうよ」


 私の主であるリーシラ様がそう提案してくださる。リーシラ様は今日も美しくてお優しい。さすが私の主様。そうそう、ちなみに今はリーシラ様のお部屋でピアノを弾き終わった後です。片づけをしています。片づけ大事。


「ではそうしましょう」


 私の返事とともに侍女が入ってきて、お菓子と紅茶を用意される。もちろん2人分。私とリーシラ様。一介のしがない宮廷音楽師である私には恐れ多い…。さすがに1年も経てば多少は慣れたけど。


「シアは今から何するの?」


「今日はこの後何もないのでピアノの練習をしようと思います。ちょうど作曲が終わったので」


 あ、ちなみにさっき演奏をしていると言ったけど、作曲もやっている。宮廷音楽師団に入った時に、団長から作曲もしてみたらどうかという提案があったのだ。ノリと勢いで作り始めてはや2年、最初こそ苦戦したけど、ここ最近はスムーズにできるようになった。うん、ノリと勢い大事。私のモットーはノリと勢いである。


「まあ、それは聞くのが楽しみね」


「リーシラ様が気に入ってくださるのかはわかりませんが」


「シアの作る曲はすべて好きよ」


 そうだった…。リーシラ様は私の作る曲をいたく気に入ってくださっている。それもすべての曲を。恐れ多い…。


「ありがとうございます。嬉しいです」


「ふふ。だいぶ素直になったわね」


そういやそうだなぁ。リーシラ様付きとなってすぐのころは、何でも遠慮していたような。だって一介のしがない宮廷音楽師にはもったいないお言葉だったから。今も恐れ多いなぁもったいないなぁとは思うけど…。でもリーシラ様のお言葉に嘘偽りなどないとわかってからは、素直に受け取っている。恐れ多いとは思うけど褒められると嬉しいのよね。


 それからしばらくまったり談笑。恐れ多いけど、本当に幸せな時間だなぁ。


「では、私はこれにて失礼します」


「また明日ね」


 リーシラ様に頭を下げた後、部屋を出る。

 練習室に向かって歩いていると、前から王太子殿下とその側近が歩いてきた。周りと同じように端に避けて頭を下げる。王太子御一行が通り過ぎた後、侍女たちが一気に話し始めた。


「本当に今日も見目麗しいですわ」


「ええ、本当に。あれでまだどちらとも婚約者がいないのだから驚きだわ」


「私が婚約者になりたいわ」


 等々。まぁ、仕方ないよね。王太子殿下と側近のマビウッド公爵子息様はたいへんお顔が整っていて尚且つ背が高くしっかりとした細身体型なのだ。そりゃモテる。それでいて未だに婚約者がいない。そりゃ狙われる。王太子殿下は今年で21になるのに婚約者がいないのは問題な気もするけど。まぁいいか、気にしない気にしない。


「よし、戻ろ」


 小さく一言呟き、練習室に向かう。できたばかりの譜面を早く弾きたくてしょうがない。

 練習室につくと、すぐさま着替えて机の上にあった完成したばかりの楽譜を手に取りピアノの椅子に座る。

 ちなみにこの練習室は個室である。リーシラ様付きになったら個室の練習室をもらえたのよね。なんでも、そういう決まりだとか。ありがたく受け取ったけど本当にいいのかなぁとは今でも思う。


「んー、この始まりが気に食わん…」


 一通り弾き終わったあとに、譜面とにらめっこ。この始まり方がどうも腑に落ちない。うーん、どうしよう。

 その時、コンココンと扉をたたく音が。この叩き方はミニアかな。いちいち確認するのがめんどうなので、よく来る人には違う叩き方をしてもらっている。


「どーぞー」


 ピアノに座って譜面とにらめっこしながら声を出す。すぐに扉が開き、ミニアが入ってきた。ミニアは茶髪にこげ茶色の瞳をもつ少女で、私の唯一の同期兼親友である。ちなみにミニアは平民だ。まぁ、宮廷音楽師団ではそんなこと関係ないけどね。というか私も子爵家の二女だからそこまで身分高くないし。


「どうしたのミニア、浮かない顔して」


 いつも元気いっぱいなミニアが浮かない顔をしている。涙目だ。あぁ、おーけー、理解。


「ソルが最近冷たい…!」


 うん、予想的中。やっぱ彼氏のことか。お熱いねぇ…。

 ミニアには現在彼氏がいる。騎士のソルさんだ。ソルさんはミニアと同じく平民だが、実力でひとつのグループのリーダーをしている。

 そういってミニアは泣き出す。うん、泣かないで?たぶんいつものようにちょっとすれ違っただけだと思うよ?


「はいはい落ち着いて。ソルさんが最近冷たいの?どういう風に?」


 ミニアを宥めながら問いかける。なんとなく予想できるけど。


「最近全然会ってくれないの…忙しいのはわかるけど…でも前は会ってくれていたし…」


 ふむふむなるほど。


「それに何か隠しているみたいで…」


 ほうほう。おーけー、理解。予想とはちょっと違ったけど。まぁ、問題ないだろうね。だって明日はミニアの誕生日だから。


「んー、まぁ大丈夫じゃない?やましいことを隠しているわけじゃないと思うよ。だってあのソルさんだよ。ミニアのこと好きすぎて引くときあるもん」


 そう、ソルさんはミニアのことが大好きなのである。それはそれは周囲が引くくらい。仕事以外で口を開くと真っ先にミニアの名前が出るからね。だけどミニアはそれに気づいていないのだ。どうなっているの君の感性は…。鈍感だなぁ。


「そ、そう…?本当に?大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。たぶん今日の夜か明日あたりで会えるんじゃない?」


 君の誕生日だし。おそらくサプライズの準備をしてるんだろうなぁ。


「なんかシアが言うなら本当な気がしてきた…ありがとう!」


 そういってふにゃっと笑う。小動物みたいで可愛いなぁ。


「どういたしまして~」


 どうやら元気いっぱいのミニアに戻ったみたい。よかったぁ。


「あ、そうだ。この曲の始まりどうしたらいいと思う?」


 私はもっていた譜面をミニアに差し出す。せっかくここに来たんだから聞いてみよう。


「んー…ここ、ソじゃなくてファにしてみたら?」


「あぁ、なるほど」


 試しに弾いてみる。あ、結構いいかも。


「ありがとう。さすが王都一の歌姫だね」


「どういたしまして!あとその呼び方やめてよ…」


 ミニアは歌がすごく上手い。宮廷音楽師団に入ったのも、街で団長が見つけて推薦したからだった。最初こそ平民で多くの人に蔑まれていたみたいだけど、ミニアの歌声を聞いてほとんどの者が認めた。さすがミニア、私の親友。ちなみに私は試験で入った。父に勧められて試験を受けたら私だけ合格した。

 まぁ、そんな感じで歌が認められたミニアは最近では「王都一の歌姫」と呼ばれている。うんうん、ぴったりだね。


「はいはい。でも本当にありがとね。おかげで満足のいく曲になりそう」


「それはよかった!じゃあ、私はこれから仕事だからまたね!」


「またね」


 元気だなぁ…て、仕事前に来たんかい。まぁいいや、仕事ファイト。


 その後私は日が暮れるまで練習した。気づいたら日が暮れてたの方が正しいけど。音楽のことに関してはすごく集中してしまう。良いことなんだろうけどね…。さて、今日はこれくらいにして帰りますか。家に帰ってからまた練習しよう。


 これが、私の日常。

宮廷音楽師は辛いこともきついこともあるけど、ノリと勢いで乗り切っています。あと、お城で過ごしていて思ったのは気にしない精神が大事だということ。陰口、陰謀、策略、嫉妬なんて普通だからね…。この国が平和だといったのは誰なんでしょうね。


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