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魔力王と呼ばれた男  作者: 今日の空
2/2

三人暮らし

「イヒヒヒヒ…」

「やだ、やめろ! こっちへ来るな!」

錆びかけの鉄瓶を片手にジリジリ迫ってくるヤブ医者。鉄瓶になにやら異臭のする液体が入っている。

「魔力なしならば、魔力を貯める核が体内で発達していないという事! 若しくは、核が存在していないか! 核のドーピングが可能なら、核を体内に人工的に造ることも可能! さあ、実験です!」

「イーヤー!!」


 こんな事をしているが、このヤブ医者。実は、俺と母さんの命の恩人である。


「トッド君、実験は後でいいでしょう?」

「チッ、マリージェ…」

ヤブ医者を止めたのは、母さんだ。

「ティルは早くバナリーを採ってきて」

「はい!」

ありがとう、救世主(母さん)



 バナリーの葉は、芒の葉のように平行脈で指を切りやすい。ちょっと間違えると切り傷ができ、「イヒヒヒ、治療薬ですよぉぉぉ!」とここぞとばかりに実験台にされる。それだけはマジ勘弁。

 とかなんとか思いつつ、いつものバナリーが生えている場所へ着いた。すると、まるで芝刈りをしたかのような痕跡があった。

「なんか、バナリー減ってねぇか?」

昨日より、バナリーの量が減っている気がする。動物は固いバナリーの繊維を嫌ってあまり食べないハズなのだが…。

「切り口も新しい…」

その時、

「…風よ…!」

おっさんの声がした。どうせなら少女にしてくれよ。と思った矢先に、バナリーがほぼ全て刈られた。

「は?」

「なんだ? この子供は」

デカイおっさんが、のそりとこちらへやって来た。やけに偉そうだな。

「ここで何をしている」

「おっさんこそ何をしているの?」

わぉ。圧迫面接ぅ。

「私の問いかけに問いかけで返すな」

「お昼の食材を採りに来たんだよ」

おっさんはゴミを見る目で俺を見る。

「ここは、領主様の土地だ」

「みんなの土地でしょ?」

「いいや。昨日、この山を購入したのだ」

「は? この土地は、公共の…あっ…」

…もしかして、裏の取り引きがあった?


「お前を今から領主様の元へ連れていく。不法侵入と窃盗罪で魔力叩きつけの刑だ」

「あの、ここが領主様の土地だと知らなかったんですが…」

横暴すぎる!

「お前は、知らなかったという理由で王庭の花を採って許されるとでも?」

「一理ある。が、とりあえず、」

ジリジリと、足に力を込める。

「逃げるが勝ち!!」

「あ、おいコラ!」


 ここでみなさん。俺が誰の息子か思い出して頂きたい。国の追っ手を振りほどいて走り続けた母さんの息子である。…つまり、

「…足速いな!」

五十そこらの並みのおっさんでは、追い付くはずもなく逃げ切った。

 ここで、一発なんか出来たらよかったのに…



「お帰りなさい。あら、バナリーは?」

「ごめん、なんか、いつもの所が、ダメになっちゃった」

「どういうこと?」

「領主? が、あの土地を購入したらしい」

「領主…ねぇ…」

母さんはゆったりとした仕草で、考え込んだ。

「お帰りティル! さぁさぁ、治験のお時間ですよぉぉ!」

「うっせー、ムードクラッシャー!」

どうしてヤブ医者はいつもいつも…。

「おや? おやおやおや? 核が体内に出来てますねぇ。おめでとう、私! 小指の爪の先サイズです。ま、通常大人の握りこぶしサイズですが」

「上げて落とすスタイル止めて」

「あぁ、尚更新薬を!」

「イーヤー!!」


「ハイハイ、お昼にしましょうねー」

救世主(母さん)!」

「バナリーないから、代わりにピグナム入れるよ」

「私、ピグナム嫌いなんですが」

「トッド君、好き嫌いはダメよ」


 平和(?)な三人暮らしに、不穏な陰が近づいて来るのを、俺は何となく感じていた。

「…どうにか、しなくちゃな」

こそっと作者が失礼します。


ピグナムとは、栄養満点のお野菜です。

見た目は白い洋梨、食感はきゅうり、味はゴーヤ。

「もうね、子どもに食べさせるのが大変よぉ」

と、主婦の間では言われている。


お付き合いして下さり、ありがとうございます!

精進します。

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