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序 研修

序 研修



「ばいーいばいせん」

 ここはとあるダンジョンの入口近くの大広間。

 広間の中央には厨房が作られ、緑色のドラゴンがフライパンの様な物を手に、鼻歌を歌っている。よく見ると、フライパンの様なそれはフライパンに形をした金網で作られていていた。金網の中には白い豆のような物が入っており、その上からさらに金網でできた蓋がされていた。

「ばっびっぶっべっぼおぉぉぉぉぉ」

 呑気な歌声と共にドラゴンの口から吐き出された炎が、金網を包み込む。炎の中で豆が徐々に褐色を呈すると、広間内に豊かな芳香が漂い始める。

 網の蓋が開いて、ほとんど黒くなった豆が銀の皿に空けられ、冷まされる。

「できたみたいだね、どれ」

 ドラゴンの肩に乗っていた妖精らしきものが、ふよふよと宙に漂いながら銀の皿の脇に降り立つ。妖精には羽らしきものはなく、代わりに胸まであるエプロンを緑色のTシャツの上から着けていた。顔は豹に似ていたが、斑紋はヒョウ柄というより、押し麦の模様に似ていた。

 妖精は、緑色の前髪をかきあげると焼きあがったばかりのコーヒー豆を手に取り、検分する。

「うん、イタリアンかな?」

 小さなでひと口かじってうなずく。

「すみません、師匠。まだフレンチにするには火力の調整が必要で」

「いや、だいぶ進歩したよ。前回は消し炭だったからね」

 師匠と呼ばれた妖精は笑う。

「お客に出す方は、今まで通り焙煎機で作るといい。あと…」

 その時ドアが開き、少女が広間へと飛び込んで来た。

「マスタぁー、遅刻してごめんなさい」

 少女の髪は明るいグレーで顔は普通の人間であったが、茶色の毛に覆われた三角の耳とボサボサの尾が腰から生えていた。

 少女は、リュカオーンと呼ばれる人狼の一種だった。

「何言ってるんだエル、今日は休業日だよ。昨日、何度も言ったのを忘れたかい?」

 半ば呆れ顔でドラゴンが言った。


 洞窟の入口を見ると、岩が平らに削られ箇所があり、そこに金色のプレートが打ち込まれている。さらにその上にはくさびの様な物が打ち込まれ、金色のプレートにかぶさるように木の札がかけられている。

 学のある冒険者には、金色のプレートに刻まれた文字は、こう読めた筈だ。『ダンジョン喫茶・カフェドラ』と。

 そして、木の札には『準備中』と書かれていた。

 今日はカフェドラの休業日、そして、師匠の指導によるマスターの研修日であった。



(序・終わり)


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