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(頭の)固い人、柔い人

いつも閲覧、ブクマ、評価とありがとうございます。

使用しているテキストエディターの不具合で、今回の分が無事に投稿できるか心配だったのですが、なんとか更新だけは……と頑張ってみました。

間に合ってよかったですε-(´∀`*)ホッ それとまた長いです(^^ゞ




~(頭の)固い人、柔い人~




あの後、兄さまはお父さまと一緒にサロンを出ていった。

先に言っていたように、魔法の勉強のことに関して話をするのだろう。

大量の疑問を残していった兄さまに、ちょっとどころか、かなりの不満を覚えた私だけど、既にいなくなった兄さまに向かって文句を言ったところで届きゃしないことは分かっているので、ここはグッと我慢だ。

後で八つ当たりという名の突撃をかまして洗い浚い吐いてもらうことにする。


そうそう。

ついでに昨日私から持っていった怪獣ドルンの絵本も返してもらおう。

あれまだ仕掛け魔法かけたまんまなんだよ。

そろそろ魔法を解除しておきたい。

自動読み上げしなくたって、私は自分でちゃんと読めるからな。


それはさておき。

最初にサロンに来た時と同様に、今はお母さまと二人ソファーに並んで腰掛けてお茶をいただいてます。

唯一違うことと言えば、出ていったお父さまたちにヴェーダがついて行ったため、ヴェーダの代わりに給仕をしてくれているのがガルドだということだ。


そして足元にはミックとミッちゃん。

サッシーは私の膝の上で寝てます。

泣き疲れて寝たようです。

あれだけ『ぴーぴー』泣き叫んでりゃ疲れもするわな、うん。

元は無機物だけど、こうして見ていると可愛らしい愛玩ペットそのものだ。


「準備にはあれだけ時間をかけたというのに、いざ終わってみたら悪戯もあっという間だったわねぇ……」


そう言って『ふぅ……』と軽く息をつくお母さま。

ええ、ええ、分かりますとも。

お祭りと同じですな。

準備をしている間が一番楽しいってやつ。


「またやりましょう、おかあさま。おとうさまたちがわすれかけたころに、もっともっとてのこんだしかけでおどろかせるんです」

「ふふっ。そうね。またやりましょうね、レーン。それに、忘れかけた頃に……というのはとても面白そうだわ」

「わすれかけてゆだんしているとおもいますよ?」

「不意打ちは効果抜群だものね」


『うふふ』と茶目っ気たっぷりに笑ってみせたお母さまに笑顔で頷く。

ここで我が家の女性陣はひっそりと次の悪戯を企てたわけだ。

実行日は未定。

ちなみに少し離れた場所にはガルドが控えているけれど気にしません。

既に今日の悪戯で協力してもらっているし、次回も有無を言わさずこちら側に引っ張り込むつもりです。

優秀な根回し者は必要ですからね。


それはそうと……ちょっと気になることがあるんですよね。

お母さまのメッセージカードに、私が更に細工して仕掛け魔法をかけたアレ。

実際にどんな形で発動して、どんな効果があったのかを知りたかったのだ。

自分の目で確かめることができなかったからね。


「おかあさま」

「何かしら、レーン?」

「わたしがカードにつけたしたおまじないはどうなりました?」

「ああ、あのおまじないね……」


訊ねた途端、お母さまが『ふぅ……』と、どこか物憂げな溜息をついた。


えっ、何?

今の溜息は一体どういう意味での溜息?


もしやラブラブの魔法、不発だった?

失敗しちゃった??

何の効果もなかったの???


考えられるありとあらゆるパターンを想像し、段々と表情をなくしていく私を見かねてお母さまが『違うの、レーン。そうじゃないの』とフォローを入れてくれる。

でも溜息をつくような反応しか出なかったことは確かだ。

ここは失敗したと見たほうがいい。


「勘違いしないでね、レーン? ちゃんと魔法は発動したのよ?」

「せいこうしていたんですか?」

「ええ。旦那様がカードに触れた瞬間、赤やピンク色といった花びらのような飾りがふわっと舞い上がって、とても優しい気持ちになったのよね」

「はなびら……」

「ええ、花びら」


違う。

お母さま、違う。


それ、花びら違う……


ハート……

つまりは、心……


それ、花びら飾りじゃなくて、ハートなのぉぉぉぉ!!!


なんて、叫べるような状態でもなくて、とりあえずお母さまの言葉に軽く頷いておく。

内心はとっても複雑だけどな!

私の意図が魔法に全く反映されていなかったことも軽くショックだわ。


「せっかくレーンが『カードに込めたわたくしの想いが、ちゃんと旦那様に伝わりますように』って、素敵なおまじないの魔法をかけてくれたというのに。旦那様ったらちっとも気づいてくれなかったのですもの」

「え……」

「わたくしの想いが伝わるどころか、優しい気持ちを感じさせてくれたあの花びら飾りを見たことで、絵の悪戯が『悪意あってのものじゃない』という解釈に繋がったと言うのですもの。それを聞いて、なんだかガッカリしてしまったの。決してレーンの魔法が失敗だったからではないのよ? 伝わってほしかったことが全く伝わらなかった上、斜め方向へと解釈するに至った旦那様の残念具合を思うと、色々と疲れてしまったのかもしれないわね……」

「な……なんというざんねんぐあい……」

「ね? レーンもそう思うでしょう?」


思う!

思うよ、お母さま!


大いに同意だと、ぶんぶん首を強く振って頷く。

ハートが花びらとして解釈されたことは……まぁ複雑っちゃ複雑だけどこの際よしとしておこう。

ただ、その花びらの飾りが女性───それも愛する妻───からのカードに仕掛けられていたという意味を、お父さまはちゃんと理解していない。

女性だけに限らず、男性だって同じことするでしょ?

何か伝えたい気持ちがある時、言葉ではなく花を贈ることでそれを代弁するってよくあることじゃん!


そのことに!

全然!!

全く!!!

気がづかないとわ!!!!


有り得ない!

鈍すぎるよお父さま!!


「おとうさまの……おとうさまの、どんかーーーーーーーーーん!!!」


思わず立ち上がって絶叫してしまったのは許してほしい。

でも叫ばずにはいられなかったんだ。


確かにお父さまが鈍感だということは分かってたさ。

でもそれは、兄さまほどの鈍感さではないと思ってたんだ。

ところがどうだ?

兄さまに負けず劣らずの鈍感さじゃないか。

どっこいどっこいじゃないか。

まさにどんぐりの背比べだよ!!


甘かった。

お父さまは兄さまほど鈍感じゃないだろうと甘く見てた。

もっと言うなら、私の見通しが悪かった。

つまりは、魔法のかけ方が甘かった、ということだ。

ある意味失敗だったな。


「本当に、レーンの言う通りよねぇ。旦那様は鈍感すぎるのよ。ついでに言うとね? デリカシーもないの……」


またも『ふぅ……』と、物憂げな溜息をついたお母さま。

今までだったら『そんなことないですよ!』って、必死にお父さまのフォローをしていたであろう私も、今回ばかりはフォローできそうにないと思った。

だってまさかアレが通じないとか思ってもなかったんだもん。

魔法だって見抜いて、それがお母さまの気持ちを代弁した仕掛けなんだって、分かってほしかった。

いや、分かってくれると思ってた。

なのに結果がこうだったのだ。

お母さまが『鈍感』で『デリカシーがない』と言うのも仕方ないというものだ。


「それでもそんなあの人のことが好きなのだから、わたくしもどうかしているのよねぇ……」


ま、好きだからこそ、お母さまはお父さまの鈍感なところやデリカシーがないところも許せるんだろうな。

相手の欠点ごと全てを受け入れてのホンモノの愛情ってやつなんだろう。

なんだかんだ文句を言いつつも、変わらずラブラブなようで何よりだ。


そんなことを考えつつ、腕を組んで『うんうん』と頷いていると、控えめに『ヌ……』という声を出しながらミックが私に擦り寄ってきた。


「どしたの、ミック?」


おとなしくしていたはずのミックが側に寄ってきたことを疑問に思ってると、再び『ヌ……』と声をかけられる。


「ん?」

《ヌ……ヌッ……》


やっぱり控えめな声で何かを訴えてきたミック。

『なんだ、なんだぁ?』と再び疑問に思ったその時、ズズイッ……と頭を差し出すようにミックが前のめりになった。

その上には『すぴーすぴー』と寝息を立てながら寝ているサッシー。


「あ、れ……?」

《ヌゥ……》

「なんでサッシー、ミックのあたまのうえでねてるの……?」


私の膝の上で寝てたじゃんよ?


「先ほどレーンが叫びながら立ち上がった時に転がり落ちたのではなくて?」

「えっ? ……あ!」

「そのまま床に落ちてしまうところを、間一髪でミックが受け止めたのではないかしら?」

《ヌン!》


お母さまの言葉を肯定するようにミックが軽くバッタンと蓋を閉じた。

勢いよくやると上に乗ったままのサッシーが落ちてしまうから、あくまでも控えめに軽く、だ。

バコンと蓋を開ける動作も、勢いはなくゆっくりめで、サッシーのことをしっかりと気にかけているように思える。

まるで末っ子の面倒をよく見ているお兄ちゃんみたいだ。

気持ちよく眠っているサッシーの様子からすると、ミックは殊更丁寧にサッシーを受け止めてくれたに違いない。

でなければ、今頃サッシーは転がり落ちた衝撃で目を覚まして、さっきのように『ぴーぴー』泣いていたかもしれない。


「ありがとね、ミック」

《ヌ?》

「サッシーをおこさないように、やさしくうけとめてくれて」

《ヌン》

「でなきゃサッシー、いまごろないてるよ」

《ヌヌゥ~……》


先ほどの光景を思い出したのか、ミックが何とも言えない複雑そうな声を漏らした。

ミッちゃんとともに、何もできずに泣き叫ぶサッシーをオロオロとして見ていたことを思い出したのかもしれない。


「ふふっ。何事もなくてよかったじゃないの。レーンも、いつまでも立ち上がったままでいないでお座りなさいな」


お母さまにそう言われて立ちっぱなしでいたことを思い出す。

素直に頷きソファーに座り直すと、ミックが私の膝上にサッシーをそっと置いた。

軽くコロンと転がったけれどサッシーは起きなかった。

口を小さくムズムズさせただけだ。

そのことに少しだけホッとする。

またこれでサッシーを起こしちゃってたら、罪悪感は上乗せだ。

気持ちよく眠ってるところを起こされるのは誰だって嫌だもんね。



────……うん

────もっかい反省だな……



一人脳内反省会を繰り広げ、飲みかけだったお茶に手を伸ばしたところでサロンの扉がノックされた。

それにいち早く反応したのはもちろんお母さまだ。


「どうぞ」

「失礼いたします」

「失礼します、奥様」


入室を促されて入ってきたのはメリダとエルナだった。


「メリダもエルナもおかえりなさい。急なお願いだったのに、快く引き受けてくれて感謝しているわ」

「とんでもございません、奥様」

「フローレンお嬢様のためとあらばいくらでも仰せつかりますわ」


お母さまからの労いの言葉を笑顔で受け止めたメリダと、私のためならいくらでも用事を言い付かるというエルナ。

気持ちは嬉しいけれど、私のためだからといって何でもかんでも引き受けなくてもいいんだからね?

そんなこと言ってたらどんな無茶振りされるか分かんないよ?

既に兄さま付きのリーシェとマリエラは、お母さまからとんでもない仕事を無茶振りされて、今もなおそれに拘束されている真っ只中に違いないから。


「それで、二人とも。良さそうな品はあって?」

「ええ。たくさんの種類の中から、お嬢様が好まれそうな、今の季節にピッタリの模様のものを選ばせていただきました」

「まぁ。一体どのようなものかしら。気になるわね、レーン?」

「?」


何の話だ?

一体二人は私のために何を選んだと言ってるわけ?

っていうか、今までずっと姿を見なかったのは、メリダもエルナもお母さまからの頼まれ事にかかりきりになっていたから?


わけが分からず大きく首を傾げると、お母さまが思い出したようにこう言った。


「そう言えばレーンには何も言ってなかったわね」

「はい、きいてないです。いったいなんのことですか、おかあさま?」


苦笑するお母さまにそう訊ねると、すかさずお母さまはメリダへと向き直り手を差し出した。


「買ってきた品を出してもらえるかしら?」

「はい、奥様。こちらに」


メリダから差し出されたそれは、キレイに包装された分厚い図鑑サイズの直方体だった。

本でも買ってきたのだろうか?

でもそれだと、さっきメリダが言っていた『私が好みそうな、今の季節にピッタリの模様』のものには当てはまらない気がする。


「さて、レーン」

「はい」

「口で説明するよりも、実際に実物を見てみたほうが早いわ。開けてごらんなさい」

「わかりました」


包装された直方体を受け取ると、ズシリとした重みが手にかかる。

重さも図鑑並みだな……なんて思いながら、丁寧に包装紙を剥がしていく。


すると……


「わぁ……」


まさに言われていた通りの、今の季節にふさわしい春色を思わせる柔らかな色合いが目に飛び込んできた。

全体を淡い黄緑色と黄色とで彩られた中、くっきりと目立つように描かれた三つ葉のクローバー。

そっと触れてみると、ボコボコと若干浮き上がるような不思議な手触りがあった。

特殊な描写法を用いて、見る角度によっては立体的に見えるように描いてあるのだろう。

見るからに上質そうだ。


『お値段、一体おいくら万円です……?』


……なんて思わず口走りそうになって、慌てて飲み込んだ。

ふぅ~……危ねえ、危ねえ……


「日記帳が欲しいと言っていたでしょう?」


お母さまにそう言われて、コクコクと大きく頷く。

そう。

包みの中に入っていたものは日記帳だったのだ。

ちょうど私とお母さまが悪戯の準備をしている間、お母さまがメリダとエルナに街まで出て私が使うための日記帳を見繕ってくるようお使いをお願いしていたらしい。

そしてお願いされた二人は、私が気に入るものを、時間をかけて探してくれたようなのだ。

その結果、こんなにも素敵な日記帳を買ってきてくれた。

ひと目見て気に入ってしまうくらいに。

いや、気に入るを通り越して惚れましたとも!


可愛い!!

春っぽい!!

それでいて、幸せを運んできそう!!

なんてったって、三つ葉のクローバーだもん!!


買ってきてもらった日記帳をギュッと抱き締め、それから、満面の笑みを浮かべながらメリダとエルナにお礼を告げる。


「ありがとう! メリダ、エルナ。こんなにもすてきなにっきちょうをみつけてくれて!」

「どういたしまして、お嬢様」

「気に入っていただけて何よりですわ」


笑顔の私を見て、メリダもエルナもほわりと笑顔を浮かべた。

この日記帳に辿り着くまで、一体どれだけのお店を巡って、どれだけの時間と労力をかけたのだろう。

そう思うと申し訳ないな、という気持ちになるけど、それ以上に今は『ありがとう』の感謝の気持ちのほうが大きく湧き上がっている。

言葉だけじゃなくて、何か他にもお礼を……と考えていたら、お母さまが先に動いた。


「ご苦労さま、二人とも。空いた席にかけて一息入れてちょうだいな」

「いえ、奥様。さすがに同席などとは恐れ多いです」

「休憩でしたら、専用室のほうで十分ですから」

「構わないわ。あなたたち二人はレーンのお付きですもの。レーンがここにいるのだから、あなたたちも一緒にいてもちっとも不自然ではないのよ?」

「ですが……」

「同席となると、さすがに……」


空いた席はあるとはいえ、さすがに同席は遠慮したいのだろう。

別にこっちは気にしないのにな。

むしろ『どんどん側に来ちゃいなよ、You♪』って感じなんだけど。

まぁ、そんな軽い調子のチャラチャラしたことは言わないけどね。

言ったらまたどっかで頭打ったと思われるわ。


「さっきまでみんないっしょにミルクコーヒーのんでたの」

「はい?」

「ミルクコーヒー、ですか……?」

「そう。ミルクコーヒー」

「あの、お嬢様……」

「ん?」

「ミルクコーヒー……とは、一体……?」

「えっとね……」


本当はカフェオレなんだけど、この世界ではカフェオレという飲み方がないようだから、カフェオレとは言わないほうが無難だろう。

代わりに、ミルクをたっぷり使って淹れたコーヒーだから安直に『ミルクコーヒー』と呼ぶことにした。

そのうちどっかの誰かさんが『カフェオレ』という存在を確立させて世界中に広めてくれたらいいのにな……なんて思ってる。

今は意味が通じればそれでいいので、こっから先、会話の中では『カフェオレ』じゃなく『ミルクコーヒー』で通そうと思う。


「たっぷりのミルクとコーヒーをまぜてつくったものなの」


そう言ってみてもまだピンと来ない二人のために、実物を見せたほうが早いと思った私は、サッと立ち上がってガルドの元へ。

今度はサッシーを落とさないよう、ちゃんと優しく支えながら立ち上がったよ?

念のために言っておく。


「ガルド」

「はい。承知しておりますよ、お嬢様」


既にカフェオレの味を知っているガルドはにこやかに応えて、手際よく準備をしてくれた。

さっき大量に用意していたこともあって、コーヒーもミルクもまだまだたくさん残っていたから、混ぜるだけであっという間にカフェオレは完成した。


「どうぞ、二人とも」


ガルドがメリダとエルナの前にそれぞれグラスを差し出し飲むように勧めるも、二人は戸惑いを隠せない。

見慣れないものを目の前にすれば当然の反応だ。

つい先ほどまでの自分の反応を思い返し、ガルドは苦笑しながら二人の様子を覗っている。


「メリダもエルナもそう警戒しないで? レーンが考えた絶品なのよ?」

「えっ?」

「この飲みものはお嬢様が考案なされたものなのですか?」


考案したんじゃありません。

前世で馴染みある飲みものだっただけです。

材料があったのでここぞとばかりに作ってもらっただけなのです。

それからお母さま、絶品は言いすぎだと思います。

前世(まえ)の世界では、一般的に流通していて今の世界で言う平民階級の方々もお手軽に手にして飲んでいた大衆的なカフェメニューなのですよ。


……でも言えない。

この世界での食べものの贅沢の基準がよく分からないから。

前世では馴染みのある大衆的なものでも、現世(ここ)ではもしかしたら贅沢に分類されるかもしれないからね。

まぁたとえ贅沢品だったとしても、公爵家の財力であれば金にものを言わせて必要な材料をごっそりと掻き集めてくるんだろうけど。


まぁ……そこは、その……アレだ。

それはそれ、これはこれってやつ?

深くは突っ込んではいけない。

っていうか、私は突っ込みたくありませんッ!



────金持ち、怖ぁ……



まぁ、そうだと決まったわけではないんですけどね。

実際そうだったら怖いよね、っていう話。

金の光は阿弥陀ほどってよく言うじゃん?

前世ド庶民だった私には、大金を注ぎ込んでうんちゃら~……というのは怖い以外の何者でもないのですよ!


……おっと、話がズレてしまった。


「ちょっとニガテだなぁ……っておもってるひとにもおいしくコーヒーをのんでもらえるように、たっぷりのミルクとまぜてもらっただけののみものだけどね?」

「コーヒーが苦手なわたくしがおいしくいただけたのだから、元よりコーヒーが好きな二人にはよりおいしくいただけるのではなくて?」


私の言葉に続いて、実際に飲んでそれを味わったお母さまの言葉が二人の背中を押したようだ。

一瞬だけ顔を見合わせたメリダとエルナだったけれど、その直後、ほぼ二人同時にグラスを手にしてカフェオレを口に含んだ。

その瞬間、二人がハッとした表情で僅かに目を見開いた。

初めて口にしたカフェオレの味わいに、思わず驚きが顔に出てしまったのだろう。


「これは……」

「コーヒーの風味とミルクの優しい味わいがうまく合わさって、とてもまろやかな味に仕上がっていますね……」

「ええ……ほんの僅かにコーヒーの苦味を残しながら、あとはミルクの濃厚な風味と適度な甘み……奥様が絶賛なさるのも納得ですわ」


最初の戸惑いはどこへ行ったのか、今では一口味わう毎に感動してあれこれと感想を述べ合う二人。

気に入っていただけたようで何よりだ。

作り方も簡単だから、後でガルドに訊いたらいいと思うよ?

私も作り方は知っているけど、実際にカフェオレを淹れる作業をしたのはガルドだからね。

手際やら分量やら、それこそきっちりと教えてくれると思う。

ほら、ガルドって全てにおいて一から十まできっちりカッチリしてるしさ?


そうして、手隙状態のメリダとエルナにカフェオレを存分に振る舞っていたところで、再びサロンの扉がノックされた。

なんだか今日はやけにサロンへの訪問者が多いな。

今度は一体誰がやってきたんだろう?


「どうぞ」


再びお母さまから入室許可の声がかかり、サロンの扉が開かれた。

やってきたのは、メリダたちとは違い、顔色が悪く若干震えているようにも見えるリーシェとマリエラだった。

よくよく見ると二人ともが涙目だ。

涙目になるなんてよっぽどだ。

一体全体何があったと言うのだろうか?


「お、奥様……」

「なんとかご指示の本を見つけられたのですが……その……」


震える言葉と同様、震える手で差し出されたのは、見るからにおどろおどろしい装丁の一冊の本。

普通に『手に取りたくないなぁ……』と思わせる怪しげなそれだ。


「これを、見つけるだけで、せいいっぱいでして……」


言葉にするのも辛いのか、これ以上ないくらいに身体も声も震えている。

見ているだけで気の毒になってくるレベルだ。

そんなリーシェとマリエラの様子と、差し出された本を見たことでガルドが『おや?』と僅かに片眉を上げた。


「奥様、これはもしや……」


どうやらガルドにはこれが何なのか分かっている様子。

この怪しげな本が一体どうしたのかと思い、じっと見つめていると、ガルドがお母さまに確認するようにこう言葉を続けた。


「二人に探すよう指示していた例の()()類の書物ではございませんか?」

「? ……ああ、そう言えばそんな感じのお願いをしていたわねぇ。すっかり忘れていたわ」


……って、お願いした張本人!!

今の今までそれを忘れてたんか~い!!


しかもかなりの無茶振りをしたっていうお願い事じゃなかったっけ?

それを普通忘れちゃうかな??


しかも一生懸命、こんなになっちゃうまで探してくれたであろうリーシェとマリエラは、お母さまの『忘れていた』の一言にショックを受けて固まっていた。

まぁ当然の反応だわな。


「奥様……」

「そんな、忘れていただなんて……」



────おぉう……

────二人を気の毒に思う気持ちが更に大きくなってきたよ……



ガルドが言っていた『例の()()類の書物』というワードと、時間稼ぎも兼ねていたというお母さまからの無茶振りのお願い、そして、見るからに怪しげなおどろおどろしい装丁の本。

これはもう私絡みで間違いないだろう。


「わたしの、だよね?」


そう言って、本を手にしているマリエラへと両手を差し出す。


「え、っと……フローレンお嬢様。これは、ですね。その……なんと言いますか……」

「マリエラ。ハッキリ言わなきゃダメよ。さすがにこれはお嬢様にお見せできる内容の本ではないのだから」

「……そう! そうなんです、お嬢様。この本はお嬢様が見るには刺激が強すぎます。夢にまで出てくるレベルの、それはそれは恐ろしいものが描かれている本なのですから……」

「大人である私たちでさえも目を背けたくなるような内容のものですから、とてもお嬢様にお見せするような内容ではないのです」


必死に……そりゃあもう必死に、持ってきた本を私に見せないようにと力説する二人。

でもお二人さん、忘れてやいませんか?

()()()()()()()に、お母さまがそれを探してくるよう二人に仕事として言い渡したということを。


「へいき。オバケのほんでしょ?」

「え……?」

「お嬢、様……?」


『今、何と……?』


……と、同時にそう問いたそうな顔をした二人に、私はニッコリ笑ってみせた。


「うん、だから。オバケのほんでしょ? へいきだからみせて?」


笑顔で言いつつ手を差し出す私を見て、更に二人が固まった。

別の意味で二人に追い打ちをかけたかもしれない。

そこはゴメン。

でもその本、早く見たいんだ私は。


『ん!』と催促するように再び手を差し出す私と、渡すべきではないと表情を引き攣らせるリーシェとマリエラ。

けれど、明らかに優勢なのは私の方だ。

なぜならその例のお化けの本は、お母さまが私に見せることを目的として、二人に探すよう言い付けていたものだからだ。

よってどれだけ拒否の姿勢を示そうとも、私に渡さないという選択肢は選べないのである。

二人には酷なことだけどね。


「マリエラ? レーンにその本を渡してくれるかしら?」

「奥様……」

「渡してくれるわよね……?」


問いかけるような口調ではあったけれど、ニコニコ顔でそのセリフを口にするお母さまの顔には『渡さなかったら承知しないわよ?』という心の本音が思いっきり書かれているようにも見えて、私は心の中でマリエラに合掌した。


「ひ……ッ!」


案の定、ニコニコ顔のお母さまの顔を真正面から見たマリエラは、そんなお母さまの本音を正しく読み取ったらしく、小さな悲鳴とも取れる声を上げつつ全身を硬直させた。

それからカチコチとぎこちない動きで私に例の本を差し出した。

その動作はさながら、電池が切れかかったおもちゃのロボット人形のようだった。

そんなになっちゃうくらいお母さまの笑顔の裏に潜んでいた本音のセリフが怖かったんだね……とは、さすがに言えなかった。

言ったら最後、その笑顔は今度は私の方へと向いてしまう。

卑怯だと言われるかもしれないけど、マリエラは生贄になったのだ。

……なんてね。


「マリエラ」


これ以上お母さまの笑顔の威圧に晒されたくないならさっさと本を渡してくれ、という意図を込めながら再び手を差し出すと、今度はちゃんとそれを渡してくれた。

両方を天秤にかけたら、そりゃあっさりと私の方に傾くでしょうよ。

精神的ダメージはゼロで済むんだし?


「ありがとう」


受け取ってお礼を言う。

見た目通りのズッシリとした重さの怪しげな本を一通り眺め回し、それから表紙を捲る。


……さて。

この本の中には、どんな魑魅魍魎の数々が描かれていることやら……


ワクワクする気持ちを抑えられない私とは反対に、リーシェとマリエラは必死に私を止めようとする。

本当に必死に。


「どうかおやめください、お嬢様」

「本当に幼いお嬢様が見るには早すぎる内容なんです」


……まぁ普通の幼女ならそうだろうね。

でもワタクシ、普通の幼女ではございませんから?

一応中身は成人した大人まで生きていた記憶を持つフローレンですので?

ある程度のことなら何てこともなく受け止められるだけの心の余裕ってやつがあるのですよ。


……っていうか。

邪魔しないでくれ。

ホラー好きの私の楽しみを目の前で奪おうとするのは迷惑以外の何者でもないのだよ!

例えそれが善意からくる言葉であったとしてもな!


思わず『ぶっすぅ~』と頬を膨らませたところでお母さまがピシャリとこう言い放った。


「レーンが見たいと言っているのだから好きにさせてあげなさいな」


優雅にカフェオレを飲みながらお母さまは更にこう続ける。


「それにレーンが見るのに早すぎるかどうかは、レーン本人が実際に見てみなければ何とも言えないじゃないの。まだ見てもいないうちからそう決めつけることこそが早すぎるのではなくて?」


まさにド正論なことをピシャリと言い放たれたことで、リーシェとマリエラは黙るしかなくなってしまった。

ぐうの音も出ないというやつだ。


「心配しなくてもレーンなら大丈夫よ。自分の魔法で可愛らしい『お化けさん』を呼んでしまえるくらいだもの。ねぇ、レーン?」

「はい!」

「え……? お化け……?」

「あの、奥様……それって一体……」


『どういう意味で……』


……と続くはずだった二人の疑問の言葉はそこで途切れた。


「レーンのすぐ側にいるじゃないの。三人も」


というお母さまの言葉によって。



────うん、いるねぇ~



ミックとミッちゃんとサッシーという、かわいいかわいい私の子どもたちが。

まぁ正確に『三人』って表現していいのか分かんないけど。

元は無機物だけど、魔法で未知の生命体と俗に言われているモンスターにしちゃったから、生きものという括りで『三匹』という方が正しいのかな、とも思う。

だけどしっかりと『個』を確立しているし、人語は介さなくとも意思疎通できる知能を持っていることを考えたら『三人』と言ってもいいのかもしれない。

そのあたりはミックたちと実際に向き合うであろう個人個人の感覚に任せるべきか。


「ミック、ミッちゃん、サッシー……は、まだねてるか。とりあえずミックとミッちゃん、あいさつしようか? リーシェとマリエラだよ? あと、むこうにすわってる、わたしににっきちょうをかってきてくれたふたりはメリダとエルナ。わたしのせんぞくのじじょなの」

《ヌッ!》

《ヌっ!》


ミックとミッちゃんに侍女たちを紹介すると、例の如くビシッと直立するように箱全体をピーンと伸ばしてほぼ同時に蓋をバッタンと閉じて、これまたほぼ同時にお辞儀をするように前傾した。

しかも器用なことに、ミックは自分の上にミッちゃんを載せてそれをやっている。

載せているミックもだけど、載っているミッちゃんの方もすんごいバランス感覚だな!

ちょっとでもタイミングずれてたら落っこちてるぞ。


「あら……」

「まぁ……」

「ひ……ッ!」

「う、あ……」


四人の侍女たち、それぞれが個々に反応を見せる中、バコンと蓋を開けてミックとミッちゃんが同時に顔を覗かせた。

口部分となる箱の縁にキザギザの鋭い歯を並べ、長い舌をびろ~んと伸ばしながら顔を出したミックとミッちゃんは、挨拶代わりなのか例の独特の雄叫びを上げた。


《ヌバァア♪》

《ヌバァァ♪》


ここで彼らのことを弁解して言っておくが、決してミックもミッちゃんも侍女たちを驚かそうとして声を上げたわけではない。

ただ単に、親しみを込めて元気いっぱいに本人たちなりの挨拶をしたつもりだった、ということだ。

今まで聞いた中で一番控えめな声だったしね。

そしてどこか声の調子がウキウキした感じだった。

一度にたくさんの人に紹介されて嬉しかったんだと思う。


「「可愛い~~~~!!」」

「「キャァァァァァァァァッ!!!」」


そして反応は真っ二つに別れた。

前者の『可愛い』はメリダとエルナ。

後者の悲鳴はリーシェとマリエラだ。


「いつの間に……いつの間にこんなに可愛いマスコットのような子たちが増えていたのですか?」

「えっ? フローレンお嬢様の魔法? まぁ……魔法でこんなに可愛らしい子を召喚できるだなんて……素晴らしいですわ、お嬢様!」


メリダとエルナ、絶賛のベタ褒めでございます。

反対にリーシェとマリエラは有り得ないものを見たと言わんばかりに、二人抱き合って震えております。

全くの真逆の反応ですな。


「あとぐっすりねてるけど、このこがサッシー」

「まぁ! この子も可愛らしいですわ!」

「この模様の袋は……もしかして奥様のサシェではございませんか?」

「そうだよ。おかあさまのサシェをもとにまほうをかけたの」

「素晴らしいですわ、お嬢様」

「なんという豊かな発想力」


全くの未知の生きもの、それもモンスターだというのに、恐れるどころか興味津々で見つめたり触れたりするメリダとエルナは間違いなく私やお母さま寄りだ。

本当だったら、リーシェやマリエラのような反応が普通なんだけど、ここでは今のメリダやエルナの反応のほうが普通だという、ある意味何とも理不尽な状況ができあがっております。

昨日兄さまが真っ先にミックを危険視したように、リーシェとマリエラもミックたちを見て恐怖したり驚いたりしたわけだ。

それが、本来の反応の在り方、なんだと思う。


だけど……


「従者は主に似る、とはこういうことを言うのかしら……」


というお母さまの言葉が聞こえて、思わずお母さまの顔をじっと見つめてしまった。


「ただ姿を認めただけなのにこの反応ですもの。この子たちには害意も悪意も全くないというのに、人とは違うこの姿を見ただけで危険物扱いだなんて、頭が固すぎると思わない、レーン?」


まぁ、確かに。

ちょっと驚いてしまうような言動を見せたミックたちだけど、そこに害意や悪意が込められていないことは見ていればちゃんと分かることだ。

なのに、モンスターというだけでこの反応だ。

お母さまが言うように、二人とも兄さまと同じくとっても頭が固いのだろう。

柔軟な対応が全くと言っていいほどできていない。


「逆にメリダとエルナの反応はレーン付きということもあってか、さすがと言ったところね。この子たちに害意や悪意がないことを瞬時に見抜いた上に、可愛らしいマスコットだと認識したのですもの。とっても柔軟に対応できていると思うわ」


つまりは、メリダとエルナは頭が柔らかい、と。

お母さまが『従者は主に似る』と言ったのはこういうことか。

さっき一緒にサロンにいたヴェーダがあの一連の遣り取りを見て驚いた表情を見せつつも叫んだり震え上がったりしなかったのは、ヴェーダも()()()寄りで柔軟な対応ができていたから、ということになる。

ヴェーダは侍女長だけどお母さま付きでもあるから、ヴェーダにも『従者は主に似る』という言葉を当て嵌めてみた場合、お母さまと同様に、簡単に動じたりせず物事を常に柔軟に受け止める姿勢ができているのかもしれない。


……ならなんで昨日、(ドラゴン)のことであんなに取り乱していたんだろうか。

それとも(ドラゴン)とモンスターは全くの別枠ってこと?

どっちも馴染みがない存在だとは思うんだけどなぁ?


まぁ、いいや。

過ぎたことを今更どうこう言っても始まらないもんね。


再び本の表紙を開き、最初に飛び込んできた絵を見つめる。

……うん。

大して怖くはないな。

表紙だけ大げさにおどろおどろしいそれっぽいものにしているけど、中の絵は全然怖くもなければ、迫力もない。

これを見て、リーシェとマリエラは必死に私を止めようとしていたんだよね?

私が見るにはまだ早いって言ってたけど、これは全然早くないと思うよ?

寧ろそう思う二人の感覚がちょっと信じられないくらい。


もしや……


「リーシェとマリエラって、こわいものがダメなの?」

「!!」

「ッ!!」


……あ、ビンゴ。


そんな反応見せられちゃったらワタクシ、ちょ~っと悪いことしちゃうよ?

うっふふふぅ~♪


「ミック」

《ヌッ?》

「ミッちゃんも」

《ヌヌっ?》

「もし、サッシーのほかにも、いもうとぶんやおとうとぶんとしてふやすとしたら、どんなこがいいとおもう?」


ニッコニコ笑いながら図鑑を開き、それをミックとミッちゃんに見せながらそう訊ねると、二人(?)は箱全体で器用にバランスを取って図鑑を覗き込んできた。

そんな私たちの様子を見て、リーシェとマリエラは『何か良からぬことが起きる』と察したのだろう、二人同時にまた『ひ……ッ!!』と引き攣れたような悲鳴を上げて、これまた二人同時に立ち上がると『まだお勤めが残っておりますので!!』と、勢いよく頭を下げてサロンから出ていった。

というか、逃げた。

脱兎の如く。


「せっかちだな、ふたりとも。もっとゆっくりして、いっしょにミルクコーヒーのんだらいいのに」


なんてしれっと言ったら、お母さまが苦笑しながら私の言葉にこう返してきた。


「今のはちょっと意地悪が過ぎたわね、レーン?」


でもクスクス笑いながらだったので、咎められたわけではない。


「でもそうしたくなるレーンの気持ちも分からなくはないわ。こんなに可愛らしいミックやミッちゃんを見て悲鳴を上げたのですものね? メリダとエルナはこんなにも可愛いって言ってくれているのに。見た目だけで怖いだとか危険だとか判断するなんてまだまだ甘ちゃんね。本当に、よく似た主従だこと。おっほほほほ」


……なんて、最後には高笑い一歩手前の笑い声まで出てくる始末。

なんだかんだでお母さまも意地悪じゃないか……と思ったけど、これは心の中で言うに留めておく。

間違っても口に出したりなんぞしません。

とばっちりはゴメンなのである。


「でもおかあさま」

「何かしら?」

「そのりくつでいうと、にたものしゅじゅうだったら、ガルドもそっちがわにはいっちゃいますよ? でもガルドはふつうにミックにじこしょうかいしてくれましたし、おどろいたかおしてても、まったくこえだしてません。ぜんぜんへいきそうでした」

「うふふ。そうね。ガルドに関してはわたくしたち寄りね。例え何があっても冷静にその場の状況を見極めて臨機応変に対応ができる頭の回転の速さと、事を実行に移す決断力の速さはさすがだと思うわ。ガルドの頭脳が柔軟な証拠ね」

「あたまがやわらかいってことですね!」

「そうね」

「はんたいににいさまたちはカッチカチのガッチガチ!」

「ええ、本当にそう」


母娘揃ってクスクス笑いながら『頭が固い』『頭が柔らかい』などと話していたら、そこに珍しくガルドが割って入ってきた。

それも、とてもおかしそうに苦笑しながら。


「ああいった突拍子のないことには慣れておりますからね。今まで様々な生きもの……それこそモンスターや魔獣などといった人外の生命体も多く目にしてきましたし、多少のことで動じたりはいたしませんよ。それに……」

「それに?」

「私の甥っ子たちのほうが、それはそれはハチャメチャなことを仕出かしてくれますからね。今回お嬢様が使われた魔法によるモンスター召喚はまだまだ可愛いほうだったと思いますよ?」


……と、何かを思い出しては懐かしそうに、それからどこか楽しそうにそう話してくれた。


「ガルド、おいっこさんがいるの?」

「ええ。年の離れた兄の子でして。二人兄弟なのですが、どちらもやることなすこと色々と規格外なんですよ」

「へ~」

「ちなみに下の子はお嬢様と同じ年でして、上の子以上にハチャメチャなことを仕出かしてくれますよ? そのおかげで毎回会う度に驚かされてばかりなんですよ。まぁ……それもまた予想外の連続で楽しいんですけれどね」

「ほへぇ~……」


私と同じ年の男の子かぁ。

一体どんな子なんだろう?


今回私がやったことも結構ハチャメチャでとんでもないことだったんじゃないかなって思えたんだけど、ガルドの話しぶりからすると、私のやってるほうがまだまだ可愛いレベルだっていうのも嘘じゃないのかもしれない。


「え~、きになる! ねぇ、ガルド。そのおいっこさんってどんなこ? ハチャメチャなことをしでかすってことは、おもいっきりまほうをつかうってことだよね? ガルドのおうちって、もしかしてすっごいまほうのつかいてのかけいだったりするの?」


気になった私は、色々訊いてみたくて矢継ぎ早にガルドに質問を浴びせたのだけれど、ガルドから返ったのは苦笑だった。

お母さまもガルドと同様に苦笑しながら私の頭を撫でてきた。


「そのうち分かるわ、レーン」

「ふぇ?」

「ガルドの出身がどの家であっても、今はここ、オンディール公爵家に仕えてくれている頼もしい忠臣なのだから」

「ええ。奥様のおっしゃる通りです。生家がどこであれ、私はオンディール公爵家に仕える立場であり、ロイアス坊ちゃま専属の執事ですから」


そう言って笑ったガルドが言いたかったのはきっとこう。


『主に仕える立場である我々は、貴賤などという関係に囚われることなく皆が平等である』


ホント、従者の鑑だよねぇ。


「ガルド、かっこいい」

「ありがとうございます。お嬢様からの最大の賛辞をいただけて恐悦至極にございます」


柔らかい笑みとともにそんなことをサラリと言い放ったウルトラスーパーイケメン万能執事。

いくら見慣れていたとしても、胸をズキュンと撃ち抜かれてしまいますな!


幼女 は もう あなたに メロメロ です !!



……なぁんてね!




そんなちょっと謎の残ったガルドさんなんで・す・が!

実は、巷で『いい意味でも悪い意味でもバケモノ』と称される、超名門一家の出であることが後に判明することになる。


一体どんだけハイスペックなんだよ、っていう話。









なんかいいテキストエディターないですかねぇゥ──σ(・´ω・`;)──ン

一度慣れてしまうとなかなか他のものに行きにくいんですよねぇ

試しにいくつか使ってみたんですけど、ファイルの保存形式の関係とかもあってどうも使いにくい……

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