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仲良く証拠隠滅を図ります! 2




~仲良く証拠隠滅を図ります! 2~




……さて。

目の前には難関が立ちはだかっております。


今の私の課題は、如何にしてロイアス兄さまから『火の魔法を使うこと』に対する了承をもらうか、です。

危険度は今までの中で最MAX。

そう簡単には頷いてもらえないこと必至です。


何をどう言って説得しようか、と考えたところで兄さま相手には無意味です。

下手に理由を付けたところで効果があるとは思いませんし、逆に理由を付ければ付けるほど怪しまれます。

小細工なんてしないでストレートにお願いした方がまだ兄さまには伝わると思うのです。



────よし!

────勢いのまま、ストレートにぶっちゃけよう!



そう決心して、ぐっと拳を握り締めたその時でした。


「このまま僕がやり続けていも埒が明かないから、レーンが代わりにやってくれる?」


……という予想外な言葉を兄さまから聞かされたのは。


「……へ?」


間抜けた声が出てしまったのは仕方がありません。

だって本当に予想外だったから。


「うん、だから。僕の代わりに、レーンが火の魔法を試してくれないかな?」

「………………」



────聞キ間違イジャナカッタヨ……



あまりにも私の願望が切実すぎて、自分の都合のいいように兄さまの言葉が変換されたのだと思ってた。

でも、聞き間違いじゃなくて、しっかりと兄さまは私に『代わりに火の魔法を試してほしい』って言ってた。

お願いする前にお願いされた。

反対されたらどうしようって心配する間もなく、兄さまの方からお願いされた。


「あの、にいさま……」

「ん?」

「ひのまほう、わたしがつかってもいいんですか?」

「うん。僕の魔力じゃどう足掻いても失敗するからね。どの属性にも染まるレーンの魔力の方が確実だよ」

「……ダメって」

「ん?」

「ダメって、いわれるとおもってました」

「そうだね」

「なのに、どうしてにいさまは、わたしにやっていいっていってくれたんですか?」


お願いしたら、真っ先に『危険だ』って言われると思ってた。

反対されると思ってた。

なのに、そんな予想とは裏腹に、兄さまから出たのは『魔法を使ってもいいよ』っていう許可だった。

『どうして?』って訊きたくなるのも当然だ。


「きけんだっていわれるのわかってて、それでもわたしがつかうんだっておねがいするつもりだったのに……」

「だったらその手間は省けたね。レーンのお願いを聞く前に僕の方が先にお願いしたんだから」


じっと兄さまを見上げていると、優しく頭を撫でられました。


「イメージ先行型ではない、()()()火属性魔法だったら絶対に使わせるつもりはなかったよ? だけど、封印魔術の手順を用いたこのやり方は、特に危険を感じることもなくスムーズに魔法の発動に至ることが分かったから、レーンが使っても大丈夫だと判断したんだ」

「にいさま……」

「……と言っても、僕の場合は『水属性の魔力』という大きな壁に阻まれて、発動こそしても成功には至らなかったわけだけど……」


苦笑混じりに続いた言葉を聞く限り、兄さまの身体に異変が起きている様子は見られません。

さっきのように苦しそうにしている様子もないし、本当に大丈夫だからこそ兄さまは私が使っても問題ないと判断したのでしょう。


「そういうわけだからレーン。僕の代わりに、火の魔法を試してみてくれる?」

「はいっ!」


じっと見つめてくれる目の中に『信じてるよ』という兄さまの思いが見えた気がして、私は大きく頷き返事をしました。


純粋に嬉しかった。

信じて託してくれた兄さまの思いが嬉しかった。


だから、全力で兄さまの思いに応えよう。

失敗しないように慎重に。

けれど、決して無理だけはしないのだと心に誓って。


「……にいさま、もうやってもいいですか」

「いつでもいいよ」

「どのくらいのひをだせばいいですか?」

「これらを跡形もなく消せるだけの威力が欲しいから、焚き火レベルじゃちょっと弱いかもしれない」

「たきびよりおおきくすればいいんですね!」

「だからといって、あまり大きくしすぎるとそれはそれで危険が増すから、程々のレベルでやってみて? 危ないと思ったら、僕の水属性魔法で消すから」

「わかりました!」


兄さまが水属性魔法スタンバイで見てくれてるなら、万が一危ないレベルの大きさの火が出ても大丈夫だな。

安心して炎のイメージに集中できるよ。



────火……炎……

────焚き火よりも大きくて、大きすぎないもの……



火柱は……ダメだな。

あれは上に向かって大きく伸びていくから、確実に邸の中にいる人たちに見つかってしまう。

それよりも小さな規模となると……そう、あれだ!

キャンプファイヤーのあの炎!

あれくらいがちょうどよさそう。


炎の大きさの基準を決め、いざイメージを開始しようとしたところでふとあることに思い当たりました。

そのあることとは、兄さまが『跡形もなく消す』と言っていた部分です。

布地だから燃やすことで消すことはできるけど、跡形もなく……となるとちょっと微妙だ。

燃えカスとか消し炭とか残ってしまうかもしれないし。

もし兄さまの言う『跡形もなく消す』が、燃えカスや消し炭さえも残さないという意味での言葉なら、高温の炎で一気に焼き尽くしてしまわなければならない。



────……一応訊いてみようか



燃え残りが出て『これじゃダメ』って言われたらどうしようもないしね。


「………………」


頭の中でイメージしていた炎を追い払い、私は兄さまの方へと向き直りました。

イメージに集中していたはずの私が急にそれをやめたことで、兄さまが不思議そうな顔で私を見ているのが分かります。


「レーン?」


『どうしてイメージすることをやめてしまったのか』と問いかけそうな目で私を見る兄さまに、私は先ほどの疑問をぶつけました。


「にいさま、あとかたもなくけすってことは、もえカスとかけしずみがのこるのもダメってことでいいんですか?」


コテンと首を傾げながら問いかけた私を見て、兄さまがぎゅっと眉間に皺を寄せ、難しい顔をしました。


「……できればそうしたい、けど……」

「けど? なんですか?」

「そうするだけの火や炎を出すとなると、それだけレーンに負担がかかるだろうから、強制はできない」


……なるほど。

この難しい顔は私を思ってくれてのものなのか。

優しいなぁ、兄さまは。


「だいじょうぶです、にいさま」

「レーン?」

「イメージするのはとくいです。だから、そんなにふたんはないとおもいます。でも……」

「うん?」

「まりょくがたりないかもしれないのが、ちょっとしんぱいです」


そう。

一番の心配事はそれなんだよ。

どんなにイメージが完璧でも、魔力が足りなければ魔法は発動しないんだ。

封印魔術と同じ理屈で言うならば。

仮に魔法の方が『できる』と判断して、魔力不足分を体力で補ってくれたとしても、その体力がどれだけ削られるか分からない。

全くの未知の領域なのだ。

私にとっての危険は、魔法の威力レベル云々ではなく、寧ろ魔力不足を補うために削られることになるだろう体力の大量消費の方だ。


「そのあたりはたぶん問題ないと思うけど」

「ほんとうですか?」

「たぶんね。今回必要なイメージは火や炎だから、単純に魔法を完成させるファクターは一つということになる。逆にレーンが使っていた封印魔術は、様々な効果を付加するために複数のファクターを掛け合わせていた。これだけで魔力の消費に多大な差が出てくるんだ」

「それじゃ……」

「よほどの威力レベルでない限り、魔力切れになることはないと思うよ」


それを聞いて、表情がパッと明るくなったことを自覚しました。

心配事がほぼほぼなくなったと分かったのです。

明るくならないわけがありません。


「それをきいてあんしんしました! これでおもうぞんぶんにひのまほうにしゅうちゅうできます!」

「うん。任せたよ、レーン」

「はい!」


しっかりと任されたのだよ!

火でも炎でも、いくらでもドンと来いなのだ!


目を閉じて再びイメージに集中します。

大きさの規模は、キャンプファイヤーレベル。

それと……消し炭さえも残さない高温の炎でないと。



────思い出せ……炎の、色温度を……



馴染みのある赤やオレンジといった色の炎は、炎の中でも最も低温にあたるもの。

色が薄くなればなるほど炎の温度は高くなる。

そして、薄くなった色が再び色を付けて青色になった時が、最も高い温度を持った炎となる。


今回は、最も高温の青色レベルなんていらない。

その手前の水色も……まだまだ強すぎる。



────だったら、真ん中だ……っ!



そう強く思った瞬間、イメージの中の炎が白く染まった。

見るからに熱そう。

普通に日常では見ないもんね、こんな色の炎。

逆に青色の炎の方が日常的に見ていたという不思議。

ガスコンロの火とかね。


とりあえず、炎のイメージは完成だ。

これを維持したまま、魔力を注ぐ。


自分の魔力にだいぶ慣れた影響もあって、するりと両手へと魔力が流れてくる。

この魔力とイメージの炎が結びついて、炎の魔法が完成する。


「!」


魔法に触れて初めての『熱』を感じた。

それが炎の魔法によるものだと気付いたその時、私の目の前にはごうっと燃え盛る白い炎が現れていた。


「うわッ!?」



────ちょ……待って!

────これ、近すぎだってば~!!



ほぼ至近距離である目の前に炎が発現したことで、私は慌ててそれから離れようとした。

……けど、遅かった。


「……こげくさい」


目の前に現れた高温の白炎は、容赦も慈悲もなく私の前髪の一部を燃やしてしまったのだ。

まさかの前髪グリル。

高温の影響か、ちりぢりにならずにストンと燃え落ちたという感じだったけど、タンパク質の焦げる臭いはホント強烈すぎる。

うげぇ……


ちなみに私の髪型は、肩をちょっとすぎたくらいの長さで、前髪もほぼ同じくらい。

前髪は真ん中分けで左右に垂らしていたんだけど、その左側部分の半分ほどの長さが炎で燃え落ちました、まる。

いやもう、ホント一瞬だったわ。

『ぎゃー!』と叫ぶ暇もなく一瞬だよ。

白炎の威力パネェ!


……って、一人炎の威力に驚いてる場合じゃないや。

さっさと血塗れのブツどもを燃やして跡形もなく消してしまわないとだ。



────確か兄さまが持ってたはず……



そう思ってロイアス兄さまの方をチラリと見ると、茫然とした顔で兄さまがこちらを見ていることに気が付きました。

浮かべている表情から、かなり驚いていることが分かります。

ただその驚きが、白い炎を目にしてなのか、それとも私の前髪が炎で燃え落ちてしまったからなのか、どちらなのかは分かりません。



────どっちにしても驚いてる場合じゃないんだよ、兄さま

────その手にしている血塗れのブツ、さっさと燃やして消してしまわないと!



「にいさま!」

「!」


茫然とこちらを見たまま動かない兄さまに声をかけ、早いところ血塗れのブツを炎の中に投げ込んでもらおうと急かしました。

思っていたよりも炎の威力があるためか、このままずっと炎を出し続けていると確実に魔力切れを起こしてしまいます。

魔力切れで炎が消えてしまう前に証拠隠滅をしないと、何のために炎を出したのか分からなくなってしまうのだから。


「にいさま、はやくひのなかにそれをなげてください!」

「えっ!? あ……ああ、そうだったね!」


私の言葉で我に返った兄さまが、勢いよく炎の中へと血塗れのブツを投げ込みました。

その直後、一瞬にして炎に飲まれたそれらは、まるですう……っと溶けていくように、跡形もなく燃え尽きていきました。

……焦げ付く鉄錆の臭いを置き土産にして。



────ぐえぇ~……臭いがミックスした……

────これは酷い……酷すぎるよ……



タンパク質の焦げた臭いと、鉄錆のような血の臭いが更に焦げ付いた臭い。

なんちゅうコンボだよ。

これは……辛い。



────とりあえず……もうちょっとの辛抱だ

────燃え残りがないか確かめるまでの辛抱だ

────気合いで乗り切れ、気合い……気合いだ~……ッ!!



これ以上この悪臭を吸い込んでしまわないように息を止めたおかげで、私の顔は顰めっ面です。

公爵家の令嬢としてはあるまじき姿ですが、幸い兄さましか見てません。

おまけに私がこんな顔をしている理由も分かってくれているので、咎められることはないですし、何の問題もないと言えます。


顰めっ面のまま炎の中を覗き込み、投げ込んだシャツやタオルの燃え残りがないことが確認できたところで、私は魔力の発動を止めました。

今まで目にしていた轟炎がすうっと消えていき、まるで初めから存在などしていなかったかのように奥庭の一画はいつも通りです。

不思議なことに足下の草を巻き込んで燃えた形跡もありません。

本来の目的である血塗れのブツのみを燃やし尽くし、キレイさっぱりと消してしまったようです。

どうやら犠牲になったのは私の前髪だけの模様。


これで目的は完遂しました。

誰が見ても心配しかしない、血塗れのシャツやタオルがなくなったことで漸く一安心です。

『いい仕事したぜ~』と自己満足げに深呼吸をしたところで、駆け寄ってきた兄さまがぎゅっと私を抱き締めました。


「大丈夫、レーン!?」


そう言いながら、まるで無事を確かめるように優しく頬を撫でられたことで気が付きました。

私の前髪が一瞬で燃え落ちたところを見ていた兄さまは、私が顔に火傷を負ってしまったのではないかという心配をしていたことに。


「だいじょうぶです、にいさま。かみはもえちゃいましたけど、やけどはしてないです」

「髪の毛が燃えただけでも全然大丈夫じゃないから」


痛ましそうな表情で、何度も何度も燃え落ちた髪の先を撫でる兄さまを見ていると、さすがに罪悪感が募ります。

『白い炎はやりすぎたかな』という反省と後悔が頭の中でぐるぐると回りますが、こうなってしまってからではどうすることもできません。

燃え落ちた髪は怪我ではないので、当然のように兄さまの治癒魔法で治すことは不可能なのです。


でも、いいんだ別に。

髪なんてまた時間が経てば伸びてくるし、何より私は、前髪を分けておデコ全開にするのが好きじゃないんだよ。

さっきのおデコぶつけてパックリ逝っちゃったアレだって、前髪があればクッションになって衝撃をやわらげてくれて、あそこまで酷いことにならなかったかもしれないんだし。


おまけにおデコ全開だと、ただえさえキツい表情が際立ってしょうがない。

せめて前髪を下ろすことで、少しでも悪役顔に見えないようにしたいんだいっ!

どんなに美少女でも、キツい目つきをこれでもかとばかりに主張するおデコ全開スタイルは全力で遠慮したいのだよ!


だからこと前髪に関しては無問題です。

寧ろ私は前髪を下ろす理由ができたことを密かに喜んでいる!


「……それにしてもすごい威力の炎だったね。白い炎なんて初めて見たよ。レーンはよく白い炎なんて知ってたね」

「うぇっ!?」


ヤバい!

この世界では白い炎とかあんまり馴染みがないんだっけ?

となると、炎の色温度がどうちゃらこうちゃら言っても普通に通じるわけがない。

それ以前に、幼女である私が『色の薄い炎は高温で威力があること』を知っていること自体が不自然だ。


誤魔化さなきゃ!

尤もらしく、それでいて子どもの発想でも出てきそうな適切な表現で!


「え、っと……とにかく、つよいのっておもいうかべました!」

「強い?」

「はいっ! つよくて、いっぱいもえるの……っておもいながらやりました!」

「……その結果があの白い炎だなんてね。相変わらずレーンの想像力は恐ろしいな。結果は言わずもがな……だけど」


溜息混じりにそう言いながら、再び兄さまが私の燃え落ちた前髪の先を弄びはじめました。



────や~……恐ろしいのは私の想像力じゃなくて、それを忠実に魔法として再現してしまえるこの世界の魔法システムそのものだと思うんだけどね~……



なんてことは口が裂けても言えないや。

実際に自分であれこれと魔法に触れてきたけど、やっぱり分からないことの方が多いしさ。


あと、気付いたことがもう一つある。

それは私のヘンテコ魔力に関すること。

封印魔術やそれを応用した私命名の仕掛け魔法を使ったり解除した時にほぼ毎回目にしていたはずの銀色のあのラメラメ粒子が、さっきの炎の魔法とその前の水属性魔法の時には現れなかったんだよね。



────魔法を使ったのに出てこなかったのはどうしてなんだろう……?



こればっかりは特殊すぎて分からないから、ちゃんと専門の人に訊かないとダメなのかも。

兄さまは特に銀色粒子のことに触れてくることはなかったけど、何か知ってたりするのかなぁ。


新しく分かることが出てくると、その分同じくらいに分からないことも増えていく。

未知のものはどこまでも未知だ。


「……前髪、きちんと整えないといけないね」

「!」


兄さまのその言葉に、ハッと我に返った。

自分の魔力や魔法のことを気にしすぎて、燃え落ちた前髪のことが意識からすっかりと抜け落ちてた。

今一番気にしなきゃいけないことはそのことだったはずなのに。


「にいさまきってくれますか?」


自分でやれないこともないけど、さすがに幼女が自分の前髪をちまちま丁寧に整えるのは不自然だろう。

逆に兄さまのことだから、私が顔にハサミを近づけるのを『危ない』って止めるかもしれないし。

なんだかんだで心配性みたいなんだよね。


「……いいよ」


苦笑しながら返った了承の返事には『しょうがないなぁ』という響きがあった。

うん、ホントしょうがないって思うよ。

まさか火の魔法で燃え落とすことになるとか自分でも思わなかったもん。


「だけど……」

「?」

「一つ隠しごとを作ると、次から次へと隠しごとを重ねていかなきゃならないのが心苦しいな……」

「………………」


……そうだね、兄さま。

後ろめたいことがあるから心苦しくなるんだと思うよ。

それは嘘をつくのと同じ。

一つ嘘をつくと、その嘘をつき通すために次々に嘘を重ねていくことになる。

私たちの隠しごとは、その嘘と同じだ。

正直に本当のことを話して『ごめんなさい』をするまで、ずっとこの心苦しい気持ちと付き合っていかなくちゃいけない。


「ちゃんとほんとうのことをはなして、ごめんなさいをいいましょう、にいさま」

「レーン」

「ずっとかくしごとをしていると、ずっとくるしいままです」

「そうだね。正直にあったことを全部話してしまったらきっと気持ちは楽になれるだろうね」

「わたし、ちゃんといおうとおもってますよ? だまったままでいたら、にいさまがくるしいままですし。にいさまのまほうのおべんきょうのこと、もういちどみなおしたほうがいいとおもうんです」


例えきつく叱られてでも、このことだけはちゃんと両親に伝えるべきだと思った。

そのことを伝えると、兄さまはやっぱり苦笑混じりでこう返してきた。


「叱られるかもしれないよ?」


優しく頭を撫でながらのその言葉に、私は大きく頷く。


「にいさまといっしょならへいきです!」


叱られる覚悟なんて最初っからできてるもんね!

それに、一人じゃなくて二人一緒ならお説教なんて全然怖くないよ!


「うん。それじゃ叱られるための心の準備をしつつ、レーンの前髪を整えることにしようか」

「はいっ!」


漸く笑顔を見せてくれた兄さまに手を引かれ、部屋に戻ることになった私たち。


だけど……


この時の私たちは、魔法のことで色々と気を取られすぎていたせいか、部屋から人払いをしてかなりの時間が経過していたことに気付けないままでいた。


それから……


最初の騒ぎとはまた別の理由で邸内が騒ぎになっていたことにも……─────







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