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兄さまの魔力は底なし魔力




~兄さまの魔力は底なし魔力~




封印魔術を施した宝箱風のおもちゃ箱をズリズリとクローゼットから引きずり出します。

箱の中に『お化け』を仕込んでいるため、クローゼットの中で開けるのはやめた方がいいと思ったからです。

さすがに大暴れするような『悪い子』はイメージしてませんが、兄さまが驚いた瞬間に箱を『バァン!』と引っ繰り返したりするかもしれませんし、狭いところは避けた方が無難だと思うのです。


「にいさま、かんりょうです」


クローゼットからおもちゃ箱を引きずり出したところで、『一仕事終えたぜ☆』と、ふ~っと軽く息をつきます。

意外に重かったよ、おもちゃ箱。

まぁ私の遊び道具の一つである積み木が入ってる箱だもんな。

そりゃ、それなりに重量あるわ。


そんなことを思いながら、宝箱風おもちゃ箱に寄りかかりつつ、ちょっとだけ一休みです。

今回もそれなりの魔力を消費したみたいで、身体が少しの休息を望んでいるみたいなのです。

大きさといい、高さといい、寄りかかって寛ぐのにちょうどいいサイズなんですよ、このおもちゃ箱って。

でもいつまでも私が寄りかかっていては、ロイアス兄さまに箱を開けてもらうことができません。

『開けてビックリ宝箱!』ってな感じで、兄さまには思いっきり驚いてもらおうというのが私のささやかな仕返しです。

それが遂行できないのは本意ではないのですよ。


「いつでもあけてもらってだいじょうぶなのです」


寄りかかっていたおもちゃ箱からサッと身を離して、兄さまに開けてもらうべく少し距離を取ります。

至近距離だと()()()()()()危ないかもしれませんし。

あ、先に言っときますが、決して箱が暴れるから危ないというわけじゃありませんのであしからず。

危ないかどうかは、箱を開けた直後の兄さまの反応次第といったところでしょうか。


「また何かとんでもないものを仕込まれた気がするのはどうしてかな?」

「うふふ~」


おっと~?

さすが兄さま、笑顔ながらに警戒してますね。

ま、それもそうか。

初っ端からやらかしてますからね、私。

でも一番最初にやったあれ以上の危険レベルなものは生成いたしませんよ。

歩く殺人兵器にはなりたくないですからね。

ええ、決して。


「とりあえず開けてみないことには分からないか」


そうそう。

だから開けちゃってくださいな。

文字通りの『開けてビックリ宝箱!』になれば私としては大成功なんだから。


「それじゃ、開けてみるよ」

「はい!」


兄さまがおもちゃ箱に手をかけて、蓋を開いたその瞬間、中の暗闇からキラリと赤く光る二つの()()()()


「目!?」


その正体に兄さまが気付くと同時に封印魔術の仕掛けが作動しました。

途中までは兄さまの力で開けられていた箱は自力で開かれ、大口を開けるように兄さまの前に立ちはだかったのです。


《ヌバァ~~~~~!!!》

「────ッ!!」


ギラギラと赤く光る一対の細いツリ目。

そして箱の縁をぐるりと囲むギザギザの歯と、中から飛び出す長く伸びた舌。


もうお分かりですね。

私が宝箱風おもちゃ箱に仕掛けたのは、ミミック。

モンスターが登場するファンタジー映画や、人気RPGの敵モンスターとしてお馴染みの、宝箱に擬態する()()にっくきヤツです。

見た目はまぁアレですけど、さすが私、会心の出来です。

この再現率はすばらしいと自画自賛したくなるのも仕方ありません。

それくらい、このミミックはイメージ通りの出来だったのです。


さてさて。

目の前でミミックに大口開けられた兄さまですが、案の定、相当に驚いたようです。

軽く目を見開いてミミックを凝視しています。

声を上げることもなく、また、反射的にミミックを投げたりしなかったあたりはまだまだ冷静なようです。


けど……



────ふっ……

────仕返しとしては大成功!



冷静な兄さまのことだから、意表を突くくらいでも良しとしていたのですが、本来の目的だった驚かせることができたため結果としては大満足です。

ただ、これ以上ミミックを出したままにしておくわけにはいきません。

どう見てもこれ、モンスターですからね。

他の人の目に触れたら確実に大騒ぎになります。

なので、早々に封印魔術の仕掛けを解除しようと思ったのですが……


「………………」

《ミギャッ!!》

「え!?」


なんと!

兄さまは無言のまま、勢いよくミミックの───おもちゃ箱の蓋を力任せに『バターン!』と閉めてしまったのです。

あまりに突然すぎたため、当然のことながらミミックは長く伸びた舌を中にしまうことができずに、相当な負荷がかかった力で己の舌を噛んでしまいました。



────い゛……ッ!

────あれは、痛い……見てるだけでも痛い……!



舌を噛んだミミックは受けたダメージで既にバタンキュゥ~……です。

蓋はきっちりと閉まっているのに、挟まれて飛び出たままの舌がプルプルと震えていて、見るからに痛々しいです。

まさか兄さまがこんな反撃をしようとは想像もしていませんでした。

さすがにこれはミミックに同情です。



────うぅ~、ゴメンよ、ミミック

────まさか兄さまがこんな手痛い反撃をするとは思わなかったよ……



あまりにもかわいそうすぎて、慌ててミミックに駆け寄ろうとした私ですが、その前にスッと兄さまが立ちはだかりました。


「レーン?」


しかもめっちゃいい笑顔です。


「僕が何を言いたいか分かるよね?」

「…………はい」

「じゃあ、()()は何に分類される術式かな?」


気絶(?)したミミックの蓋部分をコンコンと軽く小突きながら、兄さまは尚もいい笑顔のままで問い詰めてきます。


「……きけんなもの、です…………」

「そうだね。さすがに襲いかかってはこなかったけど、見た瞬間に腰を抜かす人がいてもおかしくはないよね?」

「……はい」

「もし掃除に入った使用人の誰かが知らずにこれを開けてしまったら大変だよね。腰を抜かすだけでなく、驚いた拍子に倒れたり、慌てて逃げようとして転んで怪我をしてしまうかもしれない」

「……はい」



────うぅ……兄さまが怖ひ……



笑顔だけどめっちゃ怒ってるよ、これ。

激おこです。


「もうやらないようにね」

「……はい」


また使用禁止になっちゃったよ、しかも二つめ。

このミミック、結構気に入ってたのになぁ。

でもダメって言われたのも無理ないか。

相手によっては本当に危険物だから。

おもちゃ箱サイズだから結構な大きさだしね。


だけど。

これよりももっと小さくて可愛く見えるやつなら大丈夫かもしれないから、兄さまが忘れた頃にでもこっそり作ろう。

封印魔術じゃなくて、常時発動型の仕掛け魔法の方で。


とりあえず、こっちの大きい方はダメ出しが出たから完全にアウトです。

せっかく上手くいった封印魔術のミミックだけど、モンスターだから早く解除してしまわないといけません。

できれば痛い目に遭わせてしまったことを謝りたいけれど、気絶した状態じゃ伝わらないだろうなぁ。

しょんぼりしながらミミックに近づき、ゴメンねの気持ちを込めて箱全体を撫でようとした時でした。

おもちゃ箱の異変に気付いたのは。


勢い任せに蓋を閉められ、思い切り舌を噛んでプルプル震えていたはずのミミックの様子がおかしいのです。

蓋を閉められてもデロンと飛び出したままだった舌が見当たりません。

プルプル震えたあの状態では、自力で引っ込めたとは考えにくい。

まさかと思い、おもちゃ箱に手を翳しながら『還る場所があるなら還っておいで』と箱に込めた自分の魔力に語りかけました。

けれど……



────あれ……?



まさかの無反応。

おもちゃ箱に込めた私の魔力が出てくる気配がありません。



────魔力の気配というよりこれは……



「まりょくが、ない……?」


そう。

魔力そのものがないと言った方が正しい気がしました。

無意識のうちにぽつりと零した言葉を聞いて返った反応は、ロイアス兄さまの盛大な溜息でした。


「あれはさすがに放置できる代物ではないから。僕の判断で勝手に封印を解除させてもらったよ」

「!!?」


え、待って!?

封印を解除した?

兄さまが、私のかけた封印魔術を、解除したと!?


待って待って待って~!!

だって兄さま言ってたじゃん!

他人のかけた法術を破るのはリスクが高いって!


自分以外の誰かがかけた封印魔術を解除するということは、すなわち、かけられた封印の法術を破ることだ。

それをやるには膨大な魔力が必要で、知識や経験だけじゃなく、技術だって相当なものが必要になると。


なのに。

兄さまは何と言った?


サラッと『封印を解除させてもらったよ』って。

確かにそう言ったよね???


リスクが高い。

膨大な魔力。

知識と経験、それと技術。


できる人は限られていて、大抵が王宮魔術師団に所属する魔道師クラスでないと無理だとも言ってなかったか、確か。


そんなハイレベルなことを、サラッと『やった』と言ったわけですよ、兄さまは。

溜息混じりに『落ちてたゴミを拾って捨てておいたよ』くらいの軽い調子で。


「にいさま。ふういんのほうじゅつをやぶるのは、リスクがたかいって、さっき……」

「確かに言ったね」

「ぼうだいなまりょくと、ちしきと、けいけんと、それとぎじゅつもいるって……」

「そうだね」

「できるのは、おうきゅうのまじゅつしだんにしょぞくするまどうしくらいのレベルじゃないとむりだって……」

「うん、そうだね」

「でも、にいさま。さっき、ふういんまじゅつをかってにかいじょしたって……」

「そうだね。強制解除だから法術を破ったことになるね」

「なん、で……?」

「確かに封印魔術の法術を破るのはリスクが高い。難しい上に、膨大な魔力を消費する。知識も経験も技術も相当なものが必要とされる。だから、それができる人も限られて、その『限られた人』の括りに入る大半が王宮魔術師団の魔道師になるというのも間違いじゃない。でもね、レーン? リスクが高いとも、難しいとも言ったけど。『僕がそれを使えない』とは一言も言ってないよね?」

「!!!」


確かにそうだ。

説明は一通り受けたけど、兄さま自身がそれを『使えない』なんてことは聞いてない。

言わなかったのは当然だ。

だって兄さまは使えるんだから。

あの時は法術を破ることができるか否かの話だけだったから、兄さまがそれを『使える』か『使えない』かなんてことは重要じゃなかった。

だから、()()()兄さまは言わなかった。

それを使うことができるのだということを。


あまりの驚きに目パカ口パカ状態で兄さまを凝視する私。

ホント兄さま、一体どんだけ優秀なんだ。


優秀どころじゃない。

この歳で既にコレとか、ただのチートじゃん。

それも化け物クラスのチートだよ。


「まりょく……」

「ん?」

「わたしのミミック……ふういんのほうじゅつをやぶるのに、どれだけまりょくがひつようだったんですか……」


一言で『膨大な魔力』と言ってたけど、その基準は全く分からない。

あの法術を破るのに、一体どのくらいの魔力を消費したんだろうか、ロイアス兄さまは。

私が魔力を空っぽにしたように、兄さまもほぼ空っぽになるまで魔力を消費したんじゃないだろうか。


「? ああ、あの箱型のお化けみたいなの、ミミックって言うんだ」


違う。

期待していた答えはそれじゃない。

今はミミックのことはいいよ。

聞きたいのは兄さまの魔力がどれだけ消費されたかなんだ。

『そうじゃない』という思いを込めてじっと兄さまを見上げると、然して何事もなかったかのようにこう言われた。


「まぁ、結構な量は消費したよね」

「! どのくらいですか!?」


結構な量とかそんな曖昧な感じじゃなくて、もっと分かりやすく教えてほしい。

だって封印魔術の法術を破るってことは、それだけリスクが高くて危険なものなんでしょう?

兄さまの身体が心配だよ。


「どのくらいって言われても……そうだなぁ……」

「にいさま!」


必死に食い下がる私に対し、兄さまは標準装備の苦笑顔だ。

平気そうにも見えるけど、実は分からないように隠してるのかもしれない。

だから尚のこと心配だ。

実際に目に見えないものだから全く想像もできない。

結構な量の魔力を消費して、今の状態がどうなのか早く知りたい。

なのに兄さまときたらのらりくらりと躱してあやふやな返事しかしてくれない。

まるで自分でもよく分かってないみたいな言い方じゃないか。


「別に問題ないとしか言いようがないんだけど……」

「え……?」



────もしかしてホントに分かってない……?



「強いて言うなら、今の魔力は50%を少し切ったというところかな、うん」

「それ、ほんとう、ですか……?」

「あ~……うん、たぶんね」

「たぶんって……」

「さっきまで何十回と繰り返してレーンから魔力を奪い取っていただろう?」

「はい」

「それを全部僕自身の魔力に還元していたんだけど、その状態でもまだ70%には届いてなかったからね。そこから封印魔術の強制解除に結構な量を消費したのは確かなんだ。けど……実際はそうでもなかったのかな? 50%を切ったところで魔力の消費は収まったわけだし」

「へっ?」

「うん、だから。50%を切ったところでそれ以上は消費しなかったんだよ。ああ、強制回復が働くから今はもう50%は超えたかな? 何せ、魔力が50%を切るのもかなり久々のことだったし」



────ど……どゆこと??



封印魔術の法術を破るには、とにかく膨大な魔力が必要なんじゃなかったっけ?

でも兄さまは、70%にも満たない状態でそれをやって、50%を切ったところで魔力の消費は収まったって言ってた。

ってことは何か?

兄さまが私の封印魔術の法術を破るのに使った魔力は、実質、兄さまの持つ魔力総量の20%にも満たないことになる。

それで『膨大』な量だと言うなら、兄さまの魔力許容量は一体どんだけだ、っていう話だ。

私から何十回と魔力を奪い取って、それを兄さま自身の魔力に還元していたっていうけど、そんなの雀の涙程度の微々たるものだろうし。


「にいさまって……」

「ん?」

「わたしみたいに、まりょくがからっぽになったこと、あるんですか?」

「残念ながら、生まれてこの方一度も?」

「………………」


アレ?

今なんか軽くプチッとムカついた。

笑顔で言われてるからか尚更ムカつくんだけど。

この化け物チートめ。


「にいさまのまりょくって、どのくらいあるんですか?」

「さあ? 最近調べていないから何とも。総量はかなり上がったとは思うけれどね。その証拠に、何十回とレーンの魔力を奪い取っても影響はなかっただろう?」

「ソウデスネ~……」


そりゃ確実に超絶少ないだろう私の魔力を何十回と奪い取って還元しても影響はないでしょーよ。

っていうか、マジで底が見えないな兄さまの魔力は。

私の魔力の総量が洗面器一杯分だと例えると、兄さまの魔力総量は競泳用プール二つ分以上は軽くあるんじゃなかろうか。

そんだけの規模はありそうな気がする。


「そこなしまりょく……」

「そんなことはないよ。僕以上に魔力総量が多い人は他にもいるし。ほら、さっきも話したノーヴァ公爵家のご子息とか……」


比べる基準がまずおかしいから!!

あんな超弩級チートのルーファスと比べるとか、自分も似たようなものだって言ってるも同然だから!!


有り得ない。

ホンットに有り得ない。


後で前世のゲームのことを書き出す時、兄さまのところにこう書き加えてやる。


化け物←New!

チート←New!


って、絶対に書き加えてやるんだから!


なんかもう既に色々とおかしいよ。

ゲームの設定以上に、子どもの時点の今の方がずっとずっと能力的に上なのってどう見てもヘンじゃない!?

おまけにフローレン(わたし)のスペックからしておかしい。

転生者であることはひとまず置いておくとして、生活魔法以外の魔法は全てポンコツだったはずのフローレンが魔法を使えていること自体、大幅な設定狂いみたいなもんだ。

もちろん今ここにいる場所は私の生きている現実世界だし、このままゲームのシナリオに向かうべくして時間が流れているとは思ってない。


でも……

だったらやっぱり、この世界は一体何……?


ここがゲームによく似た世界というよりは、逆にこの世界を元にしてあのゲームが作られたと言われた方がしっくりくる。

だけど、この世界を知る誰かが前世の日本にいたというのは有り得ない。

あまりにも荒唐無稽な話だ。

だからこそ、尚のこと『この世界は一体何?』という疑問がますます強くなっていく。

考えても考えても、その答えが出ることはない。

ただ一つ言えることは、それでもここが今私の生きている世界であるということ。

前世の日本にあったあのゲームとここは、完全に切り離された別世界だと考えるべきだ。

似て非なる世界。

同じようで同じではない、登場人物ならぬこの世界で生きている人。

ここは現実の世界で、決してゲームという狭い箱庭の中に存在する世界ではない。



────うぅ~……頭がクラクラしてきた……



っていうか、お腹空いてきた。

あれだけ魔法を使って、魔力と一緒に体力もそれなりに使って。

更には考えても答えの出ないことに頭を捻ってエネルギー使っちゃったし。

お茶の時間に食べたお菓子のカロリーなんてとっくに全部消費してしまってるよ。


「はぁ……」


溜息と同時に、お腹が『クゥ……』と小さく鳴ったのはきっと気のせいじゃない。


「レーン?」

「おなかすきました、にいさま……」

「あれだけ魔力も体力も消費したらさすがにそうなるだろうね」


苦笑しながらそう言われて軽く頷きます。

言われたらますますお腹が空いてきた気がしました。


「時間も時間だし、そろそろ食堂に向かおうか」

「……はい」



────ごはん、食べたい……



でもその前にクローゼットから引っ張り出してきたおもちゃ箱を片付けなきゃ。

空腹で既に身体はヘロヘロだけど、片付けだけはしっかりやらなければと頑張っておもちゃ箱をクローゼットに押し込んでいたら、兄さまにギョッとした顔で見られました。


「……?」

「何してるの、レーン」

「なにって、おかたづけですよ? だしたものはちゃんとかたづけるのがあたりまえですよね?」

「えっ?」

「えっ?」


『えっ?』って何?

それはこっちの反応でしょ。

なんで当たり前のことをやってるのに、そんな反応をされなきゃいけないのか。


「あのレーンが……出したら出しっぱなしで散らかし放題だったレーンが自ら片付けをするなんて……」

「は……?」



────今兄さま、何つった!?



出しっぱなし?

散らかし放題?

私がか?


いや、違う。

私じゃなくて……



────片付けすらロクにできないとか、お前どんだけだよフローレン!!



ある意味この時の兄さまの驚愕は、ミミックを見た時のそれ以上だったように思う。

驚きというよりは、ショックだったのかもしれないと思ったのは、兄さまがブツブツと『やっぱり頭の打ちどころが……』とか『もう一度主治医に診てもらって……』とか言ってたのが聞こえたから。


この日一番の驚きを目の当たりにしたであろう兄さまを見て、『私も同じように驚いたよ』とは口が裂けても言えないと思った。

ホント、どんだけフローレンは常識から逸脱した存在だったんだ。

未だ()()()に帰ってくる様子のない兄さまをそっと見上げ、もうこれ以上とんでもないフローレンの実態が出てこないよう祈った私はきっと悪くない。

うん、きっと悪くない。







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