封印魔術を教えてもらいます 5
~封印魔術を教えてもらいます 5~
「それじゃ、レーン。一度この術式を解いて、もう一度やり直そうか」
「はい」
兄さまから絵本を手渡され、私が施した封印魔術を解除するよう促されました。
「僕としては基礎から教えていたつもりだったんだけれどね。まさかレーンが、その基礎を通り越して、いきなり応用で封印魔術を施してくるとは想像もしてなかったから」
「……ロイにいさまのせいですよ」
「ん?」
「みずになってながれる……っていう、こうどなのをさいしょにみせたのはにいさまです」
「まぁそうだけれどね。でもあれだって元のイメージは一つだよ? どう見ても水だけだっただろう?」
「それは……はい」
「確かに拒否反応の封印は単純な固定だけの封印の術式と比べると高度な術式にはなるけれど、それでも描くイメージが一つだけなら、それは初歩的な基礎の封印であることに変わりはないんだよ」
「むぅ~……」
「なのにレーンときたら、自然発生する小さな雷を帯びた雲を細い紐状にして巻きつけるなんて、誰も考えないようなことをやってのけるし。おまけに発動した時の追加攻撃も加わるとか、イメージが一つどころの話じゃなくなるよね?」
「うぅ……はい……」
雲、雷、紐、それからトドメの静電気、か。
いや、魔力持ちの兄さまをして痺れると云わしめたほどのダメージだったわけだから、最後のは静電気ならぬ漏電もしくは放電が正しいのかもしれない。
それら全てを順に追っていくと、確かに四つのイメージの掛け合わせであることに間違いはなく、そしてその完成形が『アレ』ということになる。
────兄さまが恐ろしいと言うワケだよ……
まさかの危険物製造マシーンになってるわ、私。
全くその気もそのつもりもなかったというのに。
私の描くイメージは、相手によっては命を脅かすレベルの凶器だとか、ホントシャレになりませんから!
知らず知らずのうちに危険物を次々と製造する死亡フラグ建築士になんてなるつもりはこれっぽっちもないですからね、私!
意識してやってるならまだしも───いや、それでも悪質だ───無意識でコレとかホントに危険すぎる。
そのうち私、歩く凶器とか言われるんじゃなかろうか。
嫌すぎる。
「仕方がないよ、レーン。初めてだったわけだしね。おまけに見本からして選択を誤ったんだから、こうなったのは僕のせいだ」
「にいさま……」
「とりあえずは一度それを解除しようか? それから何度か別のイメージで試してみよう。もちろん危険のないものでね」
「……はい」
もう一度封印魔術を解除するよう促されて、私はグッと絵本を握り締めた。
封印魔術を解除するには、対象物に注いだ魔力を引き去ると兄さまは言っていた。
つまりは私の身体に魔力を戻すということ。
「…………」
『還ってきて』と祈るような気持ちで絵本へと意識を集中する。
その瞬間、手元が仄かに熱を帯びたのが分かった。
続けて溢れ出たのは柔らかな光。
兄さまの時の淡い水色の光とはまた違う、暗めの黄色に銀色の粒子が混じったような不思議な色合いの光だった。
それが一気に私の体内へと流れ込んできて、一瞬息苦しさで身体が硬直した。
ぐっと息を押し殺すような声が漏れてしまい、それを押し止めようと唇を噛み締める。
少しでも気を抜いたら、声を上げてしまいそうになるから、それだけは抑えなければと思ったのだ。
いくら兄さまが音声遮断の結界を張ってくれたとはいえ、それに甘えるわけにはいかない。
万が一ということもある。
外側から結界が破られないとも限らないのだ。
────でも……これ、苦し……
一体どれだけの魔力が私の身体から出ていって、そして、どれだけの魔力が還ってこようとしているんだろう。
「あつ、い……」
「レーン?」
「にいさま、あつい……」
絵本から私へと向かう魔力の光はまだ収まらない。
兄さまの時はほんの一瞬だったのに。
なんだか兄さまの時よりも、私の魔力が還る時間が途轍もなく長く感じる。
それよりも……
────これ以上は、無理だ……ッ!
身体が魔力の受け入れを拒否しようとしている。
もう入ってくるなと叫ぶみたいに、身体中が熱くなって還ってこようする魔力を拒絶している。
自分自身の魔力なのに、まるで異物を弾き出そうとしているみたいだ。
「や、だ……も……むり……あつい……ッ!」
「レーン!」
「に……さま……これ……も……いや、だ……」
既に全身が熱くなって、視界は涙でぐにゃぐにゃに歪んでいた。
すぐ側にいるはずの兄さまの姿も見えない。
叫ばないように抑えてはいるものの、どうしても泣き言が漏れてしまう。
この小さな身体には、これ以上はもう耐えられないと思った。
魔力が身体に入り込もうとする度に、身体がギシギシと軋むように痛み出す。
けれど、その痛みよりもずっと、身体中を勢いよく巡る熱のほうが辛い。
内側から身体が灼かれているみたいな、そんな苦しさを感じる。
「……や、だ……あつい、の……やだ……」
痛みと熱に悲鳴を上げる小さな身体はもう限界を迎えていた。
注いだ魔力を自分へと戻すのは無理だ。
だってこの身体は一向に魔力を受け入れようとはしない。
ただただ流れ込もうとする魔力を拒絶して押し戻そうとするだけだ。
だったら、その流れを止めてしまえばいい。
絵本から魔力が流れてくるのなら、絵本を手放してしまえばこの熱から逃れられる。
ふと浮かんだその考えに『そうしてしまえばいいんだ』と幼い思考が囁きかけた。
────そうだよ、絵本を手放しちゃえばいいんだ……
囁かれた言葉に素直に従うように、絵本を持つ私の手から力が抜けた。
力が抜けたことで支えを失い、絵本が手から離れて落ちていきかけたその瞬間、ロイアス兄さまが背後から抱き締めるような形で私の手ごと包み込むように絵本を支え直した。
「絵本を手放してはダメだ、レーン」
「……でも……にい、さま……あつ、い……の、むり……」
「それでもだ。ここでレーンが絵本を手放して、本来還るべきはずの魔力が行き場を失えば、その魔力は制御から離れて暴走することになる」
「! ……でも……ッ!」
冷静に告げられた言葉に、またも血の気が引いた。
ここで私が絵本を手放せば大変なことになるのはよく分かった。
けれど、私の身体は還ろうとする魔力を拒絶する。
これ以上は本当に、本当に私の身体が耐えられないのだ。
そんな必死の思いを込めて兄さまを見上げる。
それでも涙でぐしゃぐしゃになった私の視界は酷く不鮮明で、兄さまが一体どんな表情で私を見ているかは分からない。
険しい顔をしているのか、それとも真剣な顔をしているのか。
かけられた言葉と声の調子だけでは判断ができない。
────怖い……!
────魔力が暴走するって、どんな風になっちゃうの……?
絵本を手放すなと言われた以上、それはできない。
怖くて魔力の光を直視できず、ぎゅっと固く閉ざした目からボロボロと涙が零れ落ちていく。
軋むような痛みが邪魔をして、身体に上手く力が入らない。
それでも必死の思いで力を込めて絵本を持つ手はガタガタと震えていた。
未知の恐怖と不安と、それから身体中の痛みと熱に支配されて。
「大丈夫だから、レーン」
「にい、さま……」
「大丈夫だよ。レーンの魔力を暴走なんてさせないから」
私の手を包み込む兄さまの手に少しだけ力が込められた。
それと同時に肩越しに兄さまが顔を覗き込んできたのが分かって、閉ざしていた目を開いて兄さまの顔を見つめようとしたけれど、やっぱり涙でぐしゃぐしゃになった視界では、兄さまの顔をちゃんと見ることはできなかった。
「そのまま魔力を引き戻すことは止めずに続けて」
「でも……にいさま、むり……」
「大丈夫だから。魔力はちゃんとレーンの身体に戻ってくる。だからレーン、僕を信じて?」
「にいさま……」
「信じて」
「……はい」
優しく、そして真剣な声で諭されて、不安だらけで安心なんてちっともできなかったけれど頷くしかなかった。
私にはそうする以外になかったから。
「レーンはただ還ろうとしている自分の魔力を受け入れるだけでいい。怖がらずにちゃんと受け入れるんだよ?」
耳元で優しく言われてコクコクと頷く。
本当は魔力を受け入れるのは怖い。
だけど兄さまは『大丈夫だ』と言ってくれた。
それから『信じて』とも。
だから私はその言葉を信じる。
怖いけれど、兄さまの言う通りにする。
相変わらず絵本を持つ手はガタガタと震えていて、涙はちっとも収まる気配はない。
まるで全身で『怖い』と叫んでいるかのように、私の身体が怯えている。
再びぎゅっと目を閉じたその時だった。
耳元で兄さまが聞いたこともない言葉で詠唱を始めたのは。
抑揚の殆どない、静かな調子の声で紡がれるその詠唱を耳にするうちに、自然と身体の強ばりが解れていくのが分かった。
なぜか分からないけれど、兄さまの紡ぐその詠唱を聞くと酷く安心できた。
「僕の魔力に引き摺られないように、レーンは自分の魔力を受け入れることだけに集中して」
「え……?」
詠唱を終えると同時に兄さまが早口に囁いたその言葉の意味を確かめる間はなかった。
なぜなら兄さまが囁いた次の瞬間、私の左手から勢いよく魔力が抜けていったからだ。
「!?」
驚き、身体が反射的にびくんと震え上がった。
そして私の左手から魔力が抜けていったそのタイミングで、絵本から還ろうとしていた魔力が私の右手を介して身体へと戻り始めていたことに気が付く。
あれだけ身体が魔力を受け入れることを拒絶していたのに、今は抗うどころか逆に渇望していたかのように迎え入れている。
あまりの驚きに涙なんて引っ込んでしまった。
「なに、これ……?」
左手から魔力が奪われてる。
何に、って……
────兄さまに、だ……!
いつの間にか全身を蝕んでいた軋むような痛みは消えていて、ガチガチに強ばっていた身体も徐々に自由を取り戻し始めていた。
反射的に兄さまの顔を仰ぎ見る。
その瞬間、同じように私を見ていた兄さまと視線が交差した。
魔力を行使した際に、一瞬だけ強く光り輝く兄さまの琥珀を溶かし込んだような蜂蜜色の瞳。
けれど今は、一瞬だけではなくずっと強く輝いたままだ。
「レーン、身体は辛くない?」
「へい、き……」
「そう。辛くないならよかった」
優しく私を見つめる兄さまの目がふっと緩められて、そこでようやく私は心からの安堵を覚えた。
『大丈夫』だと言ってくれた兄さまの言葉は本当だった。
兄さまの言葉を信じてよかったと。
────でも……これは一体どういうことなんだろう……?
身体はだいぶ楽になった。
けれど、還ってくる魔力の流れも、奪われていく魔力の流れも未だ収まる気配がない。
見上げたままの兄さまの表情も相変わらずで、強く輝く瞳の状態もずっとそのままで維持されている。
まるで魔力を放出し続けているみたいだ。
「にいさま……」
「まだだよ、レーン。身体に還ってこようとする魔力の流れが止まっていないだろう?」
優しくそう言われて無言で頷いた。
「流れが収まるまで絵本を離さないようにね」
もう一度頷く。
けれど、今の私は兄さまに訊きたいことだらけだ。
どうして私の左手から魔力が抜けていくのだろう?
魔力が抜けたことで、還ろうとする魔力を身体が受け入れたのはどうしてだろう?
それから……
「にいさま、わたしに、なに、したの……?」
これが目下最大の疑問だった。
兄さまが、私の身体から魔力が抜けるような何かをした。
そしてそれは今も尚続いている。
最初に『僕の魔力に引き摺られないように』と兄さまは言った。
その理由はたぶんこれ。
兄さまの魔力に引っ張られるように、私の魔力が左手から抜け出ていってる。
それに引き摺られて、還ってくる魔力も一緒に抜け出ていかないように、ということなんだろうと思う。
「詳しいことは後で説明するよ。簡単に言うと、レーンから魔力を奪い取っている」
「!?」
「還るべき魔力が全てレーンの身体に収まり切るまで、余分な魔力を奪い取っているんだ」
「ど、して……?」
「こうでもしないと、レーンの魔力はどこにも還れない。還るべき場所を失った魔力は制御の手を離れて暴走する、というのはさっきも言ったね」
「はい……」
「そうならないための処置だよ、これは」
私の魔力を強制的に身体に戻すための処置だと兄さまは言う。
それは理解できた。
でも……どうして私の魔力は普通に還ってこれなかったのだろう?
兄さまに封印魔術を解除するところを見せてもらった時は、普通にすっと魔力が還っていった。
当たり前のように、自然に。
だから私の時もそうなるものだと思ってた。
……なのに。
私の身体は、私の魔力を拒絶した。
まるで『お前が入ってくる場所なんかないんだ』と追い出すかのように。
────入ってくる場所が、ない……?
じゃあ今は?
ちゃんと魔力は入ってきてる。
兄さまが私から奪った分を埋めていくように。
「にいさま、もしかして、わたし……?」
「それは後で説明するよ。だからもう少し頑張って」
「……はい」
私を安心させるためにか、兄さまの顔に微かな笑みが浮かぶ。
傍目からは、たぶんそこまでの変化はないように見えるかもしれない。
けれど、ずっと見続けているうちに気付いた。
ただ分かりにくいだけで、兄さまは様々な表情を見せてくれているということを。
顔全体では分かりにくいそれも、じっと目を見つめていれば分かる。
目が多くを語ってくれるのだ。
『大丈夫』
『安心していいよ』
声にしても聞かせてくれるけれど、目でも同じように語ってくれる。
二重に与えられる気遣いに安心できないわけがない。
寧ろ、他の誰に与えられるよりも安心できる。
兄さまの腕に、魔力に包まれるということは、つまりはそういうことなのだ。
無条件で安心できるということに他ならない。
「にいさま」
「ん?」
「がんばります!」
「うん」
まっすぐと兄さまを見上げながらそう告げると、兄さまの表情が一変した。
今までの分かりにくい微笑とは違い、満面の笑みを見せてくれたのだ。
突然の表情変化に思わず息を飲む。
けれど、すぐに私も笑みを返した。
今は驚いている場合なんかじゃない。
この状況を一刻も早く終わらせなければいけないから。
それに……見えてしまったんだ。
破顔した兄さまの顔から、つうっと汗が伝い落ちていったのが。
────苦しいのは、兄さまだって同じなんだ
今も尚、兄さまの魔力は放出され続けている。
微弱ながらもずっと、私を守るように淡い水色の光が包み込んでいるのだから。
兄さまのものだと分かる淡い水色。
それが兄さまの魔力の色なんだと気付いたのは、ほんの少しだけ前のこと。
────終わらせたい、こんなことは早く
────これ以上兄さまを苦しませるなんて嫌だ……!
そんな思いでグッと絵本を持つ手に力を込めたその時だった。
今までは兄さまの魔力に引っ張られていく形で抜け出ていったはずの私の魔力が、今度は自らの意思を持って出ていき始めたのは。
その影響なのか、何の淀みもなく私の魔力が兄さまの手へと流れていく。
無理やり引き摺り出されていくそれとは違う流れ。
抵抗なくするりと抜けていく魔力の流れに兄さまも気付いたようだった。
「レーン」
ハッとした表情で兄さまが私を見た。
それに無言で頷いて私はできる限りの笑顔を見せた。
不自然に引き攣ってなければいいなと思う。
『私はもう大丈夫』
『だから、これ以上、兄さまの負担にはなりたくない』
そんな思いを込めて兄さまを見上げる。
兄さまもまた、私を見て頷いてくれた。
やがて抵抗も淀みも完全になくなり、緩やかに魔力が兄さまの方へと流れ出ていって。
私が引き戻すべき魔力も全て還ってきた。
収まるべきところへ収まった魔力は暴れ出すことなく身体の中で落ち着いている。
ほんの少しだけ、気怠い感じがする。
自分で絵本に封印魔術を施した直後の脱力した感じと少し似てる。
ホッと息を吐き出したのと同時に、一緒に張りつめていた気も緩んだのか、引っ込んだはずの涙がまたボロボロと溢れ出てきた。
「うぅ~……」
我慢しなきゃと思ったのはほんの一瞬。
だけど、今だけは泣くことを我慢するのは難しいと思った。
「レーン」
優しく頭を撫でられて、泣きながらロイアス兄さまを見上げた。
反射的に手にしていた絵本を放り出し、勢いのままに私は兄さまにしがみつくように抱きついた。
「よく頑張ったね、レーン」
優しく受け止められ、労いの言葉もかけてもらえたけれど、私はふるふると首を振ってその言葉を否定する。
違う、そうじゃない。
頑張ったのは私じゃなくて……
「にいさま……」
「うん?」
ギュッと強くしがみつき、泣きながら顔を上げた私を見て、ロイアス兄さまの表情が驚きの色に染まったのが目に入った。
軽く目を瞠り、ただただ泣くばかりの私をじっと見つめている。
「レーン?」
名前を呼ぶ声に若干の戸惑いが交じる。
当たり前だ。
恐らく私がこんな風にしてロイアス兄さまに泣きつくのは初めてのことだから。
「わたしのせいで、にいさまがくるしいのは、いやだ……!」
「!」
「にいさまを、くるしめるなんて……いやだ……ッ!」
しゃくり上げながらの状態で、伝えたい言葉は途切れ途切れにしか口にできなかったけれど。
それでもしっかりと兄さまの耳に、私の言葉は届いていたみたいだ。
驚きの表情から一変、破顔した兄さまは、私と目線を合わせるように屈み込むと、優しく私を抱き締めてくれた。
「大丈夫。苦しくないよ」
「……ほんとう?」
「うん、本当」
目の前にあるロイアス兄さまの微笑みが、発した言葉を肯定する。
声に出して口にした言葉以上に、兄さまの目が真実を語ることを私は既に知っている。
だから、言われた言葉も、見つめる眼差しも、嘘偽りのない真実の証。
確かに兄さまが『大丈夫』だという何よりの証拠だ。
今度こそ安心してもいい?
安心していいよね?
そんな思いが心の奥から次々と湧き上がり、我慢なんて言葉を忘れて私は泣いた。
前世の記憶が戻って初めて、大声を上げて泣いた。
そんな私を優しく見つめながら、何を言うでもなく抱き締めて頭を撫で続けてくれる兄さまの腕はとても温かい。
────ゲームのフローレンみたいに、嫌われたくないな……
温かい腕に包まれ、泣きながら思ったことは、ロイアス兄さまから嫌われたくない、ということ。
面と向かって『嫌いにならないで』なんてことはきっと言えない。
だから、せめて好きになってもらえるような可愛い妹になりたいと思った。
早く泣き止まなきゃ。
それで笑って、兄さまにこう言うんだ。
『大好き』だって。
笑ってそう伝えて、それから……『ありがとう』の言葉もたくさん伝えよう。
だから、ロイアス兄さま。
私が泣き止むまで、もう少しだけ待っててほしいです。
涙が止まったら、ちゃんと笑顔になるから。
笑顔で『ありがとう』を言うから。
だから、もう少しだけ待っててほしいのです……




