開店するには人が必要。
どうもこんにちわ!カラオケに行くとマイクに声が入らない、入っても声を認識してくれない、おかげで採点不能を連発する作者です。
ある日、我が友は言いました。
「髪の毛の色縛りで創作キャラ作ろう‼」
友が赤、青、ピンクなど色を決めていく中、我はこう言いました。
「じゃあオレンジでやるぜ‼」
※この作品は、作者の日々のアルバイトのストレスから生まれました。
実録と創作のミックスです。
ご了承下さい。
どこにでもある、繁華街。
その外れに飲食店が並ぶ通りがある。洋食レストランやインド料理、和食やエスニック、そして喫茶店。
多くの飲食店があるこの通りは、店舗の入れ変わりが激しく、次来たときには前に入った店がない、ということも珍しくない。
そんな中で、1つだけ変わらない店がある。
名前は、「中華飯店 日落」
観光地にも近いこの通りには、常連というものが存在しない。
にもかかわらず、その店はなぜか、ネットや、近所で同様の噂が立っていた。
「店長らしき人物の姿が見えない」
「店員を酷使する怒鳴り声がする」
「店員が若いバイト一人しかいない」
「料理に時間がかかりすぎている」
「いつも工事をしている」
あまり聞こえが良くない噂ばかりだが、店の料理自体については皆、こういう。
「普通においしい」と。
「…………で?」
我ながら冷めた声がでたなー、と黄橙は思いつつ、下手な学生の論文のようなものが書かれた紙から視線を上げる。
客のピークが終わり、店仕舞いもそこそこにして上がろうと思っていた矢先にこの書類を出されたのだ。こういう反応にもなるのは必然だと思う。
『で?とはひどいなー。ボクの調べたこの店のでーただよ!』
上げた視線の先にいたはにわは、えっへんと言わんばかりの声音で言い放った。
冗談でもなんでもなく、黄橙の目の前、レジカウンターの上に置かれている「はにわ」が言い放ったのだ。
『にしてもひどくなーい?店長の姿が見えない、だってさー!ボクいつもここにいるのに‼』
しかし、黄橙は特に驚いた様子もなく、はにわに返事を返す。
「そりゃ、レジの置物が店長だなんてどこの客が信じるんですか。普通にインテリアだと思われますよ。」
はにわは、紫の前掛けのようなものと胸(?)に「店長」と書かれたネームプレートをつけている。(どうやって接着しているのかは黄橙にも謎である。)
そう、彼は間違いなくここ、中華飯店 日落の店長なのである。
そんなはにわに、黄橙は目上に対してあるまじき冷めた目で淡々と言葉を続けた。
「私が聞きたいのは、なぜこんな売り上げ向上に何の役にも立たなさそうなデータをわざわざご丁寧にワードで表紙まで付けて持ってきたのか、ってことです!」
そもそもこのはにわ――店長がどうやってパソコンのキーボード入力をしたのかも、彼女の気になるところである。
「大体、これ調べてくるなら他の店の経営方針とか、改良を調べて下さいよ。」
『黄橙ちゃん。君は甘いよ‼』
店長は黄橙へビシィ!と手を向けた。その意味のわからないしぐさに黄橙は眉間にシワを寄せた。
「何が甘いと?」
店長はふっふっふっ、と笑いながらゴトゴトとレジカウンターの上を移動する。さしずめ、店長が最近読んでいた推理小説に出てくる探偵の真似だろう。とってもむかつく。
『敵を知るにはまず、己を知るべきという言葉があるだろう?』
「知りません」
『空気を読むんだ!』
ゴンゴンと店長がレジカウンターの上で跳び跳ね、ムム、と唸った。
――まさか、いつも工事してるって噂、店長の足音(?)のせいじゃね?
黄橙は1つ謎が解けたな、と思いつつつ、飛びはね続ける店長へ視線を向けた。
「……まあ、知らないんですけど」
『お?』
「店長の言い分はわかりました」
『おおお!!』
空洞のような目を輝かせ、店長は飛び上がった。
『さすが黄橙ちゃん‼うちのエース!違いのわかる女!』
ゴットンゴットンと店長が跳び跳ね、黄橙を称賛する。
黄橙はそれを無視して、店長の持ってきた自店レポートに再び目を通した。
店長の姿が見えない、と工事現場のような音。は、確実に店長の特性だ。
しかし、アルバイトが一人だけ、怒鳴り声、などの理由は、店長が原因ではない。ただ、店が忙しいせいなのだ。
――なぜ、たかだか10数万の売り上げで、ここまで忙しくなっているのか。
黄橙は再び視線を店長へ向ける。
「店長」
『なあに?』
「私、前々から思ってました。」
『うん?』
ゴトリ、と店長は首を傾げた。
「アルバイト、なんで私だけなんですか?」
『…………』
黄橙は言葉を続ける。
「思うんです。この店、結構忙しいじゃないですか。ホールと調理場一人ずつの配置で、一日の売り上げが15万程度。土日はもっとです。いくら店の内装がせまいとはいえ、アルバイトを雇えばピークの数時間をもっと効率よく回せるのでは?」
『…………あー、うん。そうなんだけどさー……。』
店長の歯切れの悪い様子に、黄橙は怪訝な顔をした。
「なんかアルバイトにトラウマでもあるんですか?売り上げ金盗まれたとか?」
店長が体をゴトゴトと横に振る。否定の意だ。
「店長?」
『実は、黄橙ちゃんは知らなかったんだろうけど……ずいぶん前からアルバイトの募集はかけてるんだ……』
黄橙の問いかけに、珍しくシリアスな声で、店長は呟いた。
「……⁉」
黄橙は目を見開いた。
『ごめんね、やっぱり、驚くよね』
「いえ、店長のシリアス声に驚いただけです。」
はにわのくせに意外と良い声してた、と後に黄橙は語る。
――閑話休題――
「私が思うに、あの変な噂、大体が人不足のせいなんですよね。店長どう思います?」
『でもかなーり前から求人チラシをバイ●ルとかで載せてるんだよ?』
「それです。おかしいんですよそれが。」
黄橙の指摘に反論する声が上がる。
「そりゃあ、最近の若いやつらはあれだ、カフェとか、ファストフードとか、デーハーなところへいくんじゃろうて!」
いつの間に来ていたのか、片付けを終わらせたらしき調理場の社員――おっさんが、話に入ってきた。
「遅かったですねおっさん。」
「ええか、はよ終わらせんのも大事やけど、たまには丁寧にせな明日がはよ終わらんねん。明日のための効率上げや」
「毎日一緒の作業スピードで何をほざくのかなこのおっさん。」
黄橙なぜおっさんと呼ぶのか。それは彼がおっさんだからである。
店が忙しい理由は、おっさんが仕事を絶望的にできないこともあるが、いないよりはマシなのだ。
「全く最近の若いもんは「黙ってろジジイ」
しかし腹が立つものは腹が立つ。
――閑話休題その2――
『僕が思うにー、求人の写真がダメなのかなって思うんだー』
「求人に写真あるんですか……?」
店長はレジカウンターの横のファイル棚から、クリアファイルを取り出し、黄橙の目の前へ置いた。
黄橙はチラシを開き、店の求人を探す。
「あー、あったあっ……た……。」
――求人の写真は、キメ顔をしたおっさんのドアップが使われていた。
「な ん で だ よ 」
即、チラシを破り捨てた。
「あぁぁぁあなにしとるんじゃ」
「やかましい逆になんであれを使ったんだ●ね‼」
おっさんの抗議を黄橙はヒロインにあるまじき表情で凄み、黙らせる
『やっぱりダメだよねー』
「やっぱりじゃないよ考えなくともダメだよ!?店長!写真変えましょう!?」
『そだね。……じゃあ、黄橙ちゃん写ってね』
「え」
『だってアルバイト君だけだもん』
「……そうだった……ナンテコッタ……。」
その後求人の写真は、はにわを抱えてぎこちなく笑う、青いチャイナドレスを着たお団子の若い女性の写真へと変わった。
――その後
「店長、私思ったんですけど」
『うん?』
「この近くの学校、基本バイト禁止ですよね?」
『…………あ。』
「『…………。』」
続く。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
タグ付けにすんごく迷ったんですけどはにわしゃべってるしファンタジーでいいですよね!?
うん。ファンタジーだ。(自己解決。)