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24 ガールミーツボーイ

 ロート、ブラウ、グリュー、少女たちの右腕がにぶい光に包まれる。

 前髪で瞳は隠れているものの、口をあわあわさせているので戸惑いが見て取れた。

 唯一ブラウのみはいつもの調子で、輝く自分の二の腕を見つめている。


 やがて光がおさまると、油性ペンの落書きをかき消すように「ヒロシ命」のアザが浮かびあがっていた。


 三人は何が起こったのか理解できずにいたが、


「おおっ、三人まとめて従者(スレイブ)ゲットやで!」


 と飛び入りした妖精から教えられて、はじけるような歓声をあげた。


「キャーッ、やったぁーっ!! やった! やった! やったぁーっ! やったねっ!! ブラウ、グリュー! あたしたち、ついにヒロシ様の従者(スレイブ)になれたんだよっ!? いやあ最初はどうしようかと思ったけど寝室に忍び込んでよかったねっ! やっぱり迷ったときはやらずに後悔するよりやって後悔するべきっていうか」


 一気にまくしたてるロート。彼女は興奮すると思いついたままにしゃべりまくるクセがあるようだ。


「ほ、ほんとに? ほんとに私たちが……?」


 グリューはまだ信じられないようにあたふたしている。

 ブラウは落ち着いており、ふたりの問いかけに対して力強く頷き返していた。


 まるで高倍率のアイドルオーディションに受かったかのような喜びようの三人娘。だんだん実感が沸いてきたのか手をとりあってキャアキャアとはしゃぎだした。


「……ところでヒロシ、どしたん? パワーストーンで一攫千金でもしたみたいな顔して」


 顔じゅう口紅跡だらけになったヒロシは大の字に倒れたまま目を回していた。

 事故とはいえ中学生女子たちからキスされまくった少年の純情はすでに臨界点を突破していたのだ。


 クラクラする頭を押さえつつ起き上がったヒロシは「顔洗ってきたら?」とマリーから促される。

 新米従者(スレイブ)たちはすでにセーラー服を身につけ終えていて、早速手伝おうと意気込んだ。

 ロートから手を引かれ、グリューから背中を押され、ブラウから気遣われて洗面所へと向かう。


 洗面台の鏡で自分の顔を見た少年は無数の口紅跡にまた目眩がした。一生分のキスをされたような気分だ。


「はぁーい、全部あたしたちがやりますからヒロシ様はだらんとしててくださいね」


 ロートは従者(スレイブ)の初仕事とばかりに張り切って袖まくりをする。


「いや、自分で……えっ?」


 いつのまにか背後に回りこんだブラウはセーラー服のリボンをほどき、それを使ってヒロシを後ろ手に縛りあげていた。


「あっ、ちょ、なんでっ!?」


「じっとして」


 ブラウから背中越しに鋭く言われ、迫力負けしたヒロシは押し黙ってしまった。

 さらにブラウはロートの胸リボンを借り、ヒロシの両足首をも縛った。


「ナイス! ブラウ!」


 親指を立てて行動を賞賛するロート。

 少年はブラウの周到さによって動きを封じられてしまい、三人のなすがままとなってしまった。

 ヒロシとは身長差があるのでロートは踏み台に乗った。気の利くグリューはすでに濡れタオルを用意しており、有能なアシスタントのようにロートに手渡した。


「すぐ終わりますからじっとしててくださいね!」


「うぷっ!?」


 ヒロシの顔に冷たいタオルが押し当てられてゴシゴシと擦られる。


「あれ、全然おちない」


 ロートは拭く手を休めず不満そうにつぶやいた。


「お湯とかじゃないとダメなのかな?」


「そっか、ちょうど隣がお風呂だから洗っちゃおう!」


 ロートはグリューの言葉を受け即断、洗面台の隣りにあるガラス扉を開け放ち、三人がかりでヒロシの身体を抱えて浴室に持ち込んだ。

 銭湯のような大きな風呂、複数人がいちどに利用できそうな広い洗い場のタイル床に寝かされるヒロシ。


「これでよし、っと。そうだ、ついでだからお風呂に入っちゃおうか」


「あっ、ロートちゃん!?」


 ロートが上着を脱ごうとしたので慌てて制止するグリュー。


「そっか、ヒロシ様が見てるんだった」


 足元のヒロシをチラリと見やる。

 これから何をされるのかと、ヒロシはすっかり怯えた表情をしていた。


「こうすれば平気」


 ブラウはおもむろにグリューの胸のリボンを抜き取ると、それをヒロシの顔に巻きつけようとする。


「え、そ、そんなっ!?」


 さすがに視界まで奪われてはたまらないと、農薬を浴びた芋虫のように身体をよじらせ少年は抵抗する。


「然るべき時がきたら着替えでも入浴でも排泄でも見せる。でもいまはその時ではない」


 しかしグリューは見当違いのことを言っててきぱきとヒロシに目隠しを施した。


「おおっ、度々ナイス! じゃあ脱ごう脱ごう!」


 ロートは再びブラウを褒め称え、さっそく上着を脱いだようだった。


 ……視界を塞がれてしまったヒロシはまわりで何が起こっているのかわからずにいた。

 三人娘の怒涛の勢いにおされて洗面所まで連れてこられて縛り上げられ、あれよあれよという間に目隠しされて風呂場に転がされ、いまは少女たちが脱衣する衣擦れの音を聞かされている。


 展開の速さについていけずドギマギするばかりであった。


「あれ? グリュー、脱がないの?」


「は、恥ずかしくて……」


「ヒロシ様は目隠ししてるから大丈夫だって!」


「で、でも……」


 グリューは極度の恥ずかしがり屋のようで、脱ぐ音を聞かれるだけでも照れてしまっていた。


「そんなに恥ずかしがらなくてもいいって! さあ脱いだ脱いだ!」


「脱いだ脱いだ」


 ロートは元気に、ブラウは淡々とグリューの制服に手をかける。

 示し合わせたわけではないのに連携はバッチリで、ロートは上半身、ブラウは下半身を担当した。


「ああっ、だめっ、ロートちゃんっ、ブラウちゃんっ、あんっ」


 ふたりがかりで無理矢理脱がされるグリューの声が中学生とは思えない色っぽさでヒロシはつい聞き耳を立ててしまう。しゅるしゅる、ぱさっ、と衣類が床に落ちるたび、あのスタイルのいい裸身が脳裏に浮かんでくる。


 が……すぐに矛先の向きが変わった。


「よぉし、あとはヒロシ様だーっ!」


「えっ? わあっ!? やめてっ!」


 今度はヒロシの服に4つの手が襲いかかる。

 おそらくロートとブラウだ。グリューは「ヒロシ様、嫌がってるよ?」と止めようとしている。

 しかしそんな弱々しい制止でやめるようなロートではなく、しかも手足を縛っているにもかかわらずブラウは謎の器用さを発揮してシャツとズボンを剥ぎ取り、ヒロシはあっという間にパンツ一枚にされてしまった。


「……よし、最後の一枚はみんなで一斉に」


 パンツを前に真剣な表情のロート。


「了解」


 静かに頷くブラウ。


「ええっ!?」


 まるで我が事のように赤面するグリュー。


 少女たちの会話でパンツまで脱がされることを察知したヒロシは陸に打ち上げられた魚のように跳ねて命乞いする。


「ま、待って! 脱がす必要ある!? 顔だけ洗えばいいんじゃないのっ!?」


「せっかくだから」


 とロート。いつの間にか風呂桶の中で入浴していた妖精が「コンバット越前かい」と突っ込んだ。


「そうだ、みんなでお風呂に入ろう!」


 気持ち良さそうにお湯に浸かる妖精を見て、ミーハーなロートはすぐに目的を変える。


「そうしようそうしよう」


 平らな声であっさりと賛同するブラウ。


「あ、あの、お背中流させていただきます」


 蚊の鳴くような声で後に続くグリュー。


「そ、そう? なら……あ、いや、でも……」


 女子中学生たちとの入浴。しかも洗ってくれるオマケつき。

 魅惑的な提案にヒロシは一瞬だけ迷う素振りを見せた。


「じゃあ一気にいくよーっ!!」


 それを承諾と取ったロートはガッと大胆にパンツのウエストゴム手をかけた。

 続けて裾を引っ張るブラウ、控えめに手を添えるグリュー。


「ええっ、ちょ、まっ」


「「「ええーいっ!!」」」


 最後は問答無用とばかりに、少年の最後の砦は引きずりおろされた。


「わあーっ!?!?」


 あまりに力いっぱい引っ張られたため、ヒロシは丸出し状態のまま勢い余って床を滑っていく。


「……アンタたちー、こんなトコでなにやってんの?」


 運良くというか運悪くというか、ちょうど浴室に入ってくるマリー。

 床を滑ってくる全裸少年を視界の下あたりで捉えた瞬間、


「ウギャアアアアアアアアアアーッ!?!?!?」


 この世の終わりのような絶叫を風呂場内に反響させた。

 どんどん足元に迫ってくるハダカの少年から逃れようとしたが、床はすべりやすく、前に転んでしまった。


 倒れこむマリー、その美しい顔が床に激突する寸前、剥き出し下半身が割り込んくる。


 カポッ、という音とともにマリーの口に何かが嵌りこんだ。






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