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同級生が行方不明になったら①

 同室の彼女が消えました。

 文字通り。

 いや……まぁ……いなくなればいいなぁとは思いましたよ?

 でもねぇ……。

 うーん。観衆の目前でいなくならなくとも……。

 魔法学校でやっていく自信がなくなりました、と置き手紙を残してひっそり消えるならまだしも、まだしもですよ?

 ほとんどの一年生が集まっている大講堂から、何の前触れもなく消えたんですよね。

 何というか、消え方一つが派手。

 ひっそりとか、こっそりとか、そういう形容が一切似合わないような方だとはこの短い間で印象にはありましたが、魔法学校が嫌になって逃亡するにもやり方があるでしょう。そう、置き手紙を残してこっそり消えるとか……。

 二つベッドがあるにもかかわらず計らずしも一人部屋になってしまったこの部屋で、ぼんやりしていると、いなくなった彼女の騒々しさが身に染みます。それに、隣の部屋からはなぜか、いえ男女が急に一つの部屋で過ごすことになったら当然かもしれませんが、気まずさ以上の険悪な空気が伝わってきますし、どの部屋かわからないんですがすごくうるさい部屋があるんですよね……。なんでしょうか……消灯後に笑い声が聞こえるんですよね……。男女両方の……。睡眠に支障はあるんですが、あるんですがね。笑い声なのに薄寒い怖さがあるというか……。近寄ってはいけないと勇者の勘がいってるのでスルーしますね……えぇ……寝不足はきついですが……。

 まぁ、上級悪魔と同じ部屋にいる圧迫から逃れられたのは、よかったですけどね。

 よかったんですけどねぇ……。

 何かが、引っ掛かってます。

 なんでしょう……。

 身体強化宰領生リアの態度とかでしょうか? まぁ、カネさんが消えた以外での引っ掛かりですけど。まぁ、謎はいくつかありますよね。カネさんが消えたのを察して血相変えてやってきたんでしょうし……。その魔力感知能力には驚きますが、聖女さんを責めた意味が全くわかりません。本当にわかりません。心の中だから自分のことをいくらでも棚に上げますけど、あの方、僕以上に不器用ですよね? 魔法編成というか、魔法編成も何もないくらい治癒術に特化されてるというか。だから、特殊に入れられたんですよね? 僕もですけど。あ、アルフレード君もですね。あれですよね。「特殊な魔法」よりも「特殊な立場」が先行しているというか。レイとか特殊宰領生のカルロスさん? とかは「特殊な魔法」ですけど。

 カネさんは、何もかも謎ですから、まぁとりあえず特殊でって感じでしょうね〜。僕は勇者として立場がある程度確立されていますし、聖女さんは僕より世間への有用性をアピールしてますから、魔法学校在学中の皆さんに命を狙われたりとか利用されたりとかはしにくいはずなんですよ。多分。

 えぇ。

 勇者じゃなくなったら、僕、どうなるんでしょうね……。

 兄上があれですからねぇ。

 はぁ……。さっさと廃嫡とかしたほうが王国の安寧のためなんですかねぇ。でも、あの兄上への圧力が一切なくなるのもアレだと思うんですよ。まぁ、あれですよ? 国王とかめんどくさいのはお断りですよ? 勇者だけでもこれだけめんどくさいんですから。勇者は世界背負ってますけど、あれですよ? 対魔王だけですし、魔王倒すまでの間ですからね? 国王って国のこと全部やるわけでしょ? しかも、最悪死ぬまで。

 いや〜。

 嫌ですね。

 絶対に、嫌。

 何があっても拒否します。

 はいはい、馬鹿兄にそんなの譲りますよってもんですよ。

 でも、そのせいで国が滅びたりしたら、それはそれで嫌ですからね〜……。

 魔王との戦いで僕が倒れたら、後は野となれ山となれですけど、やっぱり生き残った後のことを心配してしまいますよね。五体満足なら、なんか二つ名とかもらって軍属と冒険者の間みたいな存在でうまーくゆるーくやれるかもしれませんが、まぁそれでも年齢という制限時間付きですし? 下手に生き残ったら地獄ですよ? 王位継承権がその時の保険になってくれるやもしれず、自ら廃嫡はないですね。せめて生活の保障をしてくれないと、ねぇ? まぁ、だからこそのクック家との結婚なんでしょうけどねぇ。冒険者との連携もあるでしょうし、あそこと縁があれば辺境魔物の退治とか実績積んで、廃嫡からの一代貴族で恩賞もらって朽ち果てる、とかまぁのんびり生きれるならそれもいいですよ? という未来設計が成立するわけで。

 ま、馬鹿兄王が馬鹿しないように圧力をかける方法を残しておかないと国が滅んだりするかもしれない、というのが難しいところです。

 さて。

 なにを考えていたんでしたっけ?

 あぁ、僕とか聖女さんは世間に有用性が示されているから、王帝貴族や獣国の息のっかかったスパイやら色々といる魔法学校生も下手に手を出してこないけれど、アルフレード君はそうもいかないって話でしたね。まぁ、僕らも護衛は必要か否かといえば要るでしょうし、そのために王国はレイを含めてここ数年多くの子弟を送り出してきたわけですからねぇ。帝国貴族は自立心からの方が多いでしょうが、だからこそアルフレード君をどうするか、という話が出てくるわけでしょうし。ここ数日、行動を共にして良くも悪くも上流階級っぽさがないですから、帝国では冷遇されにされているみたいですねぇ。彼を担ぎ上げるか、それとも排除して上の兄君たちに取り入るか、それとも……なんて今、策略を巡らせている最中でしょう。ともすれば、身体強化でもよさそうな魔法構成の彼を特殊に入れた、魔法学校の思惑は彼の安全のためでしょう。僕や聖女さんのためとかなんだかんだ、かこつけて彼も守ることができますから……。

 しかし、王国貴族も情けないですね。僕の入学は決まっていたのに、純粋な貴族で宰領生になったのはゲラシウスさんだけですか。しかも、彼は元か諸々の要員リストには入っていないときてる……。王国としては、彼とは交渉の余地があるとして、防御の宰領生は逃し難かったところでしょうが、フランさんでしたっけ。この前、アルフレード君と話していたところを見ると、態度こそ女性らしからぬ堅苦しい方でしたが、大変小柄で実用にたる鎧を身につけたままという質素さ。自国から勇者が出た機を逃すまいと各名家が威信をかけて血縁からかき集めた十分な素質と、そして自家の全てを尽くしてバックアップしてきた経歴のある面々が破れたわけですからねぇ。人の良さそうな彼女のどこに王国の陰謀を跳ね除けるような実力があったのか……人は見た目によらないとはこのことですね。身体強化も身体強化ですよ。王国辺境のハーバードさん? でしたっけ? 王国側が必死に調整していたら、ハーバードさんがリアさんに譲ってしまったんですよね。王国側が苦肉の策で用意した答えなのに、リアさんの方はあんまり交渉の結果が期待できないんでしょうか。辺境というのは国王の権力が届かないから辺境というんですし。まだ交渉の余地があるハーバードさんの方をという策略は、まさかの裏切りで失敗してしまったというわけなんですよね。特殊は選択の余地がないというか、魔法学校を預かっているオーティスさんが直々に頼んだという経緯があってそこは動かしようがなく、魔法具はそもそもどの貴族も流石に子弟を送ることを避けた結果、まぁ手を回していなかったんですよね。攻撃と防御の宰領生を王国貴族系からだし、そして王国系の反転の里が身体強化をとれば、特殊は人数も少なく形式上のものだから、魔法具がどこに流れようと過半数は占めることができる……という戦略だったんですよ。まぁ、そういうのって大概うまくいきませんよねー。ということはあれですよ。この延長線上の対魔王もうまくいかないかもしれないってことですよ? あー嫌だ。本当に嫌だ。勇者の僕は命を賭して戦わないといけなくて、あの暗君にしかならなさそうな兄上は絶対に守られてるとかなんなんですかねー?

 というか、まぁ、あれですよ。宰領生、結局バランスがいいんですよね。王国貴族のゲラシウスさん、帝国貴族系のフランさん、王国辺境のリアさん、商会の息がかかっているユージニアさん、そして王国庶民のカルロスさん。魔法学校の立地が王国だから王国系が多いのは仕方ないとして、獣国系が宰領生に入ってるのがそもそも珍しいわけで。それも、商会が大陸へ入り込みたいがために打ち出した人間優遇の戦略で、第一弾として体面上、どこの生まれともしれない彼女を魔法学校に送り出したという話。だから、彼女は獣国系とも言えないかもしれませんね。獣国への影響力は持ち合わせていないでしょうし。それは逆もまた然り。彼女と獣国の直接のパイプはないわけですから、彼女を宰領生としても、魔法学校は獣国に好き勝手される心配はない。バランスよく三国の勢力を取り入れているように見せて、学内治安も守られるいい塩梅になっているわけですよ。オーティスさんの一人勝ちというところですか? これ。

 あー……。

 で、なんの話でしたっけ?

 一人でぼーっとしていると、考えがあっちにいったりこっちに行ったり、取り留めもなく流れていくうちに時間が経って消灯の時間。最近、これをずーっと繰り返してます。

 で、暗くなっても暗くなったで、ベッドに横たわってぼーっとしてるのでまたあっちへこっちへを繰り返していつの間に寝たやらという間に朝になってるんですよねぇ。

 ダメですねぇ。

 まぁ、あの日。

 彼女が、消えた日。

 僕たちは、試験を受けた大講堂に並んで座っていました。一年生が全員集うということで、混雑に巻き込まれないように僕たちはかなり早めに朝食を済まし、一番前の席へ着席をしていました――

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