目の前で同級生が空間転移したら
昨日はよく寝れなかった。いや、昨日も、かな。
午後からは魔法学校のいろんな場所を見て回ってたんだけど、召喚室とか魔法具工房には用はないし、図書館に行ってみてもどんな書物がどこにあるのか全く分からなくて手に取ってみて開いてみてもちんぷんかんぷんだし、結局ぶらぶらと屋上に行って空を見てたら何故かさらに上に木をよじ登ってのんびりしている人がいたりして、なんかそういう落ち着ける場所見つけたいなと目的が変わっちゃって、ちょっと暗いところへ踏み込んでみたりしたら「一年がこんなところに来るな」って怒られて挫けたから結構早めに夕食にして部屋に戻ったんだ。
そしたら、聖女に幽霊でも見るような顔で見られて、なんだろ。まぁ、夜中まで時間潰してくるって思われたのかもしれないけどさ。
まぁ、時間割がまだできてなかったから、俺は机に向かってうんうん唸っている間に、聖女は寝てしまってた。早くね? と思ったけど、まぁ、昨日から結構色々あったし、あまり頑健そうには見えないから、女子ってそういうものかなぁって思いつつ、不完全な時間割を前にこれ以上時間をかけるのはって諦めて俺も床に着いたの。
消灯時間の一時間前くらいかなぁ。結構時間かけてやってたから、どんだけ聖女寝るの早いのって感じだよね。
人の寝息ってこんなに規則正しいものだっけ? ってくらい聖女の寝息規則正しいのね。俺の知ってるのって荒くれの冒険者たちのいびきだからさ。人間ぽくないなぁ、怖いなぁって思ったらなかなか寝付けなくて、そうしているうちに窓の外をのそのそ移動する人影とかが見えたりして、隣の部屋から叫び声が聞こえるし、疲れてて明日に備えて寝たいのに全然寝れないんだもん、困った。
で、そういうときに限ってさ、過去の理不尽が頭の中でぐるぐるし始めるんだ。宮廷とか知らないじゃん。今まで生きてきた世界で生きたいよ俺は。だから、普通に冒険者としてさ、一つ一つ頑張ってたんだよ。リモンさんに「都会に出た方がすごい冒険者から学べるよ」って言われて、帝都目指して一人旅し始めたんだ。年少の冒険者って目立つしさ、どこで噂がどう回ったのか知らないけど、第三皇子ってのがバレちゃって、変な輩が寄ってくるし。
それに兄さま方の妨害が始まったんだよな。鍛冶屋が装備の手入れしてくれない、冒険者ギルドに行ったら追い出される。なんで剣と身体強化で戦っちゃダメなんだよ。それ以外の魔法を教えてくれる人なんて俺にはいないのに。
ていうか、父さま助けてくれたっていいじゃんか? 本当に生きているのかって聞きたくなるよ。母さまを愛した分、その欠片ほどでいいから、俺も愛してよってのはおかしいのかな。
おかしいんだろうな。
直に、母さまが言ってたことが本当らしいってわかり始めて、俺は逃げるように魔法学校に入学しようとしたんだけど、ていうかそれしか方々を穏便に済ませる方法がなかったんだけど。なぜが、これも兄さま方の妨害にあってさ、俺は密入国だよ。魔法同盟となんとかかんとか接触してさ、よく入学できたよ本当。
それもこれも、兄さま方の命を守るためだっていうのが笑えるよね。
で、入学決まったと思ったら、エロイーズとかいう頭のおかしいのに絡まれるし、同室になった聖女は人間じゃないときてるんだもの。
どうしてこうも理不尽なことばかり起きるんだろう。
なんて考えてたら、寝れるわけない。
リモンさんに昔言われた、「幸せなことを数えなさい」っていうのを思い出して、ユーリさんとテオさんとパーティを組めたこと以外に指を折ることができないまま、気づいたら寝ていた。
起きたら、聖女はいなかった。のそのそと起きて、ちょっと焦る。
昨日のクラウディウスみたいな遅刻だけはしたくない。あいつ、教室入ってきた時点で先生いなかったからよかったけど、時間は過ぎてたからな。
勇者さまとか聖女さまとかなら許されるんだろうけど、俺は絶対になんというかうまく言い訳もできないし、遅刻しないに限る。
さっと着替えて、時間割の仮提出の方をちゃんとしまって、早足で食堂に行く。
今日も今日とて混んでいて、配食を受け取った後、エロイーズに手を振られたから、仕方なしにそっちへ行く。聖女とクラウディウスも一緒だ。
そもそも、今日も教室一緒だもんな。いっそ朝から一緒の方が余計な心配をしなくていいかもしれない。どうやら、三人一緒に食堂にきたわけじゃないらしく、エロイーズはもう完食している。聖女とクラウディウスが一緒だったのかな? 面識あるだろうし、昨日も一緒だったし、後々のことを考えて交流を深めているのかもしれない。俺は将来のことなんて微塵も考えられないんだけど。
でも、聖女の方が食べるスピードは早い。昨日朝食を並んで食べてて思ったけど、そこらの冒険者と同じくらい早い。クラウディウスは優雅だけどゆっくりなので、結局俺と同じくらいに食べ終わるんじゃないかってくらいだった。
エロイーズは相変わらず虚空を睨んだり、急に笑い出したり不審だったけど、悪魔の姿が見えないし、心話でもしてるのかな? 不審なことに変わり無いけど。クラウディウスが平静保っているってことは、悪魔は部屋にいるんだろうな。目立つのを避けたいのかもしれない。いや、水色のローブっていう趣味からしてそれには失敗しているんだけど。
俺は会話したくないので食事に集中する。と、クラウディウスがふと思い出したように、何かを取り出した。エロイーズの時間割だ。まっさらなそれを、日常語が通じているのか不明な彼女は不思議そうに見て、王子殿下の説明に耳を傾ける。
「……昨日渡すべきじゃない、ですか? なんで今渡すんです?」
よせばいいのに、余計な口出しをしてしまった。しかも、カタコトの敬語。兄さま方と話すのだってガチガチに緊張して、できるだけどっちかに首を振ることで会話を済まそうとする俺だから、隣国の王子殿下にどう接していいのか分からない。昨日の教室では、紙に書いただけだし、それに聖女が偶然にもうまく間に入ってくれたからなんとかなったのに。
「アルちゃん、わたし、昨日はすぐ寝ちゃったから」
「……朝は?」
引くに引けなくなって、つい言葉を重ねてしまう。
早く軽く謝って済ましてしまえ、と思うのに、言葉が見つからない。
「僕の方が後から起きたので」
「でも、今日提出だし……引き受けた以上はちゃんと」
だから、早く謝ってしまえばよかったのに、これじゃぁ依頼達成後に賞金で揉めてちょっとでも多く儲けようとしてるめんどくさい冒険者と同じだよ。
「あ〜かわいい〜嫉妬? 嫉妬かな?」
エロイーズに頭をぐしゃぐしゃとかき回された。なんなんだよ、食事中だよ俺は!?
う、聖女含めて、周りからすごい視線で見られてる。
ただでさえ、クラウディウスと聖女と、そして訳のわからないエロイーズのせいで注目を集めていたのに、彼女の暴挙に大きい食堂を沈黙が支配する。当の彼女はなんとも思っていないようで、クラウディウスに詳しい説明を求める。
唖然としている王子殿下は、自分も彼女に髪をかき混ぜられやしないか危惧するように数度彼の髪に手を伸ばしかけた。気持ちはわかる。なんというか、この彼女より、勇者として箱入りで育った王子殿下の心がわかるって、彼女がどんだけ異色かっていうことだよな。
「むっこい」
「はいはい、俺の飲めや」
「したって、15だびょん? せば、すっだらば、めぐせぇ?」
「確かに両方な。俺の感性で言わせて貰えばな?」
「んだっきゃ、わいさでね」
ざわつくものの平常に戻らない食堂で明瞭な会話が聞こえてきた。思わず振り向くと、背の高い二人組が、大量の紙を前にして言葉を交わしていた。俺たちの方を見てないけれど、だからと言ってその暗号めいた訛り言葉で俺たちのことを話してないとは限らない。訛り言葉を話せないらしい相方が曖昧な返答をしているのがその証拠だ。
でも、その二人を皮切りに周囲に会話が戻ってきた。
当のエロイーズは時間割と一緒に渡された授業の一覧表に素早く印をつけている。興味をもって俺も覗き込んでみた。他人がどうやって授業を選んでいるのか、参考にさせてもらいたかったから。
うわ、基礎全部? ぶっ飛んでるな。ほんと、まったく何を考えているんだろ?
あと何? 天文学に死霊術にエレジニィオ語に古代魔法語? 何その一貫性のなさ。ていうか適当に印つけてね? 大丈夫? エレジニィオ語って獣人たち用のなんかじゃないの? 言葉忘れないように的な。大陸で生きてたら使うこと一生ないよ。商会のスパイするとかしか用途ないし、それなら魔法学校で学ぶんじゃなくてこっそり習得しなきゃならないし。
対悪魔・聖獣訓練があることに安心すべきなのかな。なんで俺がこいつの時間割で安堵しなきゃならいのか全く分からないんだけど。ちらっと聖女とクラウディウスの顔を伺うけど、感情を消していた。多分、同じようなこと考えてたんだろうな。
でも、それだけで終わらないのが彼女なんだよな。
もう、だいたいわかってきた。
わかってきたとはいえ、唐突のことには驚かずにはいられないわけで。
「あー、あのねー。なんか昨日、しるばーわるつ? とかいうのに襲われたわけでさ?」
《銀舞踏》というその言葉に、俺たちだけではなく周辺の学生も緊張する。俺は王都の情報に詳しくないんだけど、そんな俺でも知ってるくらい有名な盗賊団だ。王国貴族を中心に詐欺も働いているらしく、しかも貴族たちは体裁を取り繕うため被害を隠すから、碌に調査も進んでいないらしい。かなり残忍な手段に出るようで、結婚間近の子女を誘拐して身代金を払わせて殺すとか、そういうこともしているみたい。これは、貴族じゃなくて豊かな農民とか商人に対しての手口。だから、冒険者ギルドも聖教会も絶賛警戒中。クラウディウスと聖女にも緊張が走るのは当然だった。俺くらいじゃないかな、その言葉が聞こえた中で完全に無関係だと言えるのは。
「ユーリさんとテオさんがその場を収めてくれたんだけど、ちょっと王国に事情を話すとかでディエゴさんとこに行かなきゃいけなくて。多分、オーティス校長先生に話はつけてくれてると思うんだけど、そういうわけでわたし、今日もサボタージュだから」
……サボ……なんて?
肝心のところが分からずに、ポカーンとしてしまう。王子殿下が一本人差し指を立てて、彼女の注意を引いた。
「つまり、今日の授業を休む、ということですか?」
「うん」
「そう言ったじゃん」と言わんばかりに不思議そうな眼差しが王子を貫く。俺の方が先に目を逸らしてしまった。
「じゃーテレポーションで行くからー! じゃねー! しゅんしゅん! しゅんかんっいどうっ☆」
急に立ち上がったエロイーズがわけのわからない呪文を唱えて消えた。
空になった食器を乗せたトレイだけが残されている。えっと? あの?
え?
そこそこの喧騒が戻っていた食堂がまた静まる。
「空間転移かあれ!?」
「……だよな、きっと? やばくないか? いや、二重に」
騒ぎの先陣を切ったのは、さっき訛りで喋っていた学生とその相方だった。チョコレート色の肌をした男は立ち上がってこちらを凝視していた。その相方は座ったまま、驚愕している。細面の長身のあいつだけが、立ち上がるというだけだけども、行動をしていた。でも、俺を含めて他の学生は動けないまま、何が起こったのか探っていた。
空間転移、そんな上級魔法を使える学生がいるはずがない。
だって、冒険者ギルドでも奥の手だよ? 俺だって、ってまぁ、冒険者歴ってまだ十年行ってないけどさ、それでも使われそうって噂しか聞いたことないんだけどなぁ。まぁ、帝国は魔法同盟弱いから、チャージができないとかなんとかで、できるだけ使わないって方針なんだろうけどさ。
一気に、ざわりと空気が蠢く。身体強化を使って耳を澄ませてみると、「空間転移そのものがありえない」という驚きと「許可なく魔法学校で空間転移を使った」「無断外出はいけない」という校則違反へ危惧があるみたいだった。
「――――!?」
声なき悲鳴が聞こえて、また騒ぎが静まる。叫びの主は白っぽい髪を三つ編みに垂らした痩身の男だった。その視線につられて、みんなは空を見る。俺も、自然と視線が動いた。
そこには、あの上級悪魔がいて、
「あのじゃじゃ馬娘っ……」
強化された耳でようやく聞こえるくらいの唸りを残して姿を消した。
「あれが、上級悪魔か」「空間系なのか?」「新改版悪魔図典じゃぁ焔って書いてあったけどな」「新改は当てにならんだろ」「大全に記述ねーんだもんよ」「審問官Ⅰだったんだろ、じゃぁ著作の展覧をみるのがいいんじゃねぇの」「展覧、一昨年馬鹿が燃やしたんだよ」「マジで? あの貴重書を? 退学もんじゃん」「だから大事にしなかったんだろ。魔法同盟キャリアは死んでるが」「あぁ海に出るならまぁな。つーかありゃ空間転移だろ、空間系だな」「召喚者が空間転移できるなら、そっちが使ったかもしれんだろ」「一年で空間系できたら魔法学校に来る意味ある?」「ねぇな。じゃ、上級悪魔使った自作自演か」「えげつねー。出自まだわからんの」「王帝あわせて沈黙なり、ってやつよ」「獣人奴隷とかか?」
「アベル〜死ぬな〜戻ってこい〜」「ううううううううう」「なに? なに気持ち悪くなってんの?」「魔力酔い」「不意打ちだもんなぁ」「って、ありゃ、あれかい、本当に空間転移だっていうんだね?」「え、何があったの?」「ううううううううううう」「少なくとも、それに値する強力な魔法だろうな」「いいいいいいいいい」「アベル〜死ぬな〜! 死ぬんじゃない〜今日はパテ演練度試験があるんだ、お前が使えなきゃ俺たちはどうすればいいんだ〜!」「む〜りぃいいいいいいいいい」
「リアが行くか、リアが行くか、リアが……お、ここはフランが行ったぞ」「ゲラシウス……はいねーのか。あいつまた夕飯から抜きじゃね」「大丈夫、最高記録は42日。42倍耐えられるんだ、余裕だろう」「魔法学校で飢え死しそうになる貴族様ってのもどうなんだか。で、エロイーズ・カネか。何者なんだろうな? とりあえず、空間転移、と」「悪魔の方がまともそうだともメモしておけ」「うん、今年の競技会は特殊にも割いた方が無難だな?」「だろうな。ハーバードが力入ってるしな」「それはいいとして、攻撃と防御の有名どころ多すぎなの、名案ねぇ?」「どうせクラス対抗もあるし、ここで資料作ってしまった方が楽だぞ」「それは分かってんだけどさぁ?」
「ね、あそこの二人組、なんかすごい量のメモしてるけど、あれさ、あれかな?」「あれじゃわからないけど……」「今日からの試験がもう始まってて、色々こっそりチェックしてるとか……」「うーん、そういうやり方するって聞いたことないなあ」「でも、古い情報でしょ? 絶対ありえないって言える?」「まぁ、第一、隠れてないし……?」「どのみち、行儀良くしてた方がいいに決まってるでしょ。宰領生の顔もまだ覚えてないし、上級生はもうすでに半分、将来の組織の人間だもの」
一気にいろんな声が入り込んできて、慌てて魔法を解く。
これだけ人が多いと油断してるとこういうことになる。頭を軽く振って混乱を払い除けようとするけど、だめだ。ぐわんぐわん言ってる。
「失礼」
声の方を見ると、鎧を着込んだ背の低い女性がいた。そうは言っても俺よりは高いんだけどさ。
「防御の宰領生を務めているフランという。先程の騒ぎについて、簡潔に説明願えないだろうか」
柔和そうな人だけど、厳しい表情が浮かんでいた。俺たちは顔を見合わせて、クラウディウスが俺に強く視線を送ってきたから、ここは俺が話しておくことにする。ていうか、昨日の授業と同じ流れじゃん。なんか、ムカつくなぁ、この勇者様。
「えぇっと、俺らその、クラスが一緒で、一緒に飯食ってたんですけど。そしたら、あいつが、急にテレ……なんとか? って言ってどっか行っちゃってって感じなんですけど」
ダメじゃん、俺。全然、簡潔じゃないし説明にもなってないじゃん。こんなの冒険者パテの仲間にいたら、絶対ドヤされるよ。
「クラスを聞いても?」
でも、彼女は怒るということを知らないらしく、優しく尋ねてくる。でも、その質問はあえて避けたところで、勇者様に助けを求めたら、軽く頷かれた。
仕方ないので小声で口にする。
「特殊、です」
フランさんは一瞬、驚愕を浮かべて、それでもすぐにその表情を笑みに変えた。
「それはそれは。なにぶん浅学寡聞の身ゆえ失礼をお許しいただきたく」
「いや、俺はその、あの、大丈夫、です」
聖女様も勇者様も微笑んでいたので、大丈夫ということになったんだと思う。俺もこういう、微笑みひとつで許しを与えるような奴になんなきゃならないの? 絶対に無理だよ。
「では、先程の彼女はエロイーズ・カネという学生で?」
「間違いないです……」
「今日の予定を知っての無断外出だろうか?」
「えーと、あの、それはちょっと事情があって。彼女が昨日外出した時に、《銀舞踏》に襲われたらしいんです。その事情聴取に王宮側に呼ばれたとかで、出かけると言ってました。魔法学校の上にも話は通していると」
無骨になんの化粧も施していない、それでいても端正な彼女の顔が一瞬だけ歪んだように見えた。
思わず瞬きをしてしまう。
その間に、優しげではあるけれど、事態のあまり厳しい表情をしている宰領生に戻っていた。
「王宮に用事がある故と……。承知しました。特殊の宰領生のカルロスに託けておきますので、彼からもお話があるかもしれません」
「あ、はい。分かりました……」
丁寧な言葉を使われるのに慣れてなくて、そういう時ってその後に兄さまたちのいびりがある時だから、なんだか冷や汗をかかずにいられない。
しかも、彼女は姿勢を正してから綺麗な礼をしてきた。
「貴重な時間を取らせてしまって申し訳ない。本当にありがとうございます」
「あ、いえ、えっと……こちらこそ、なんか申し訳ないです……」
なんか他に言えないのか俺は。吃りながら自分に苛立つ。
「それでは、失礼します」
彼女は最後に軽く会釈したかと思うと、鎧を身につけていると思えないほどの身軽さで立ち去った。え? 早くね? 音も言うほどしないし。
ていうか、なんで鎧着てんだろ。今日特別な授業があるとかかな。
「あら、急がないと」
聖女が手早くエロイーズが放置していった食器類をまとめながら言う。いつの間にか、食堂は閑散としていた。少しも平静を乱されていないように思える彼女に続いて、クラウディウスと俺は慌てて席を立った。
あーあ。
今日も、長くなりそう。




