【それでも私は】襲来の後始末①【愛を謳いたい】
【それでも私は】襲来の後始末1【愛を謳いたい】
「それでも私は愛を謳いたい」は、「39スレ目 安価で大学決めたら異世界の魔法学校に行くことになった。続30」までのネタバレを含みます。
39スレ目を読んでから、読むことをお勧めします。
以下、緩衝材代わりに短編を挟んでおります。
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時間割、組めねー。えーと、属性系は一コマで、他は二コマもあるのか。
俺、属性とか分からねーし、火を起こすもの飲水出すのも苦手なんだけどな。身体強化、それも独学のよくわかんねーのしかできねーんだけど。身体強化って、なんで属性基礎魔法にカウントされねーの? おかしくね?
魔法語は、冒険者ギルド開催の講座に行きまくって必死に勉強したんだけど、初級からなのかな。いや、そっちのがいい気がする。結局、独学だしな。
えーと、必須とかのが全然埋めれられねーじゃん。どうすればいいのこれ。
あーもう。分かんねー。
もーやだ。
机に突っ伏すと、また過去の記憶に思いは飛ぶ。
冒険者ギルドの世話役のさ、リモンさんがさ、俺に冒険者の生き方を仕込んでくれてさ。
もうそれしか生きる道ねーじゃん? と思ったの俺は。生きるために必死だったの。身体強化とかうまいから、冒険者ギルド開催の講義とか利用したら、魔法学校もいけるかもしれないとか教えてくれて、いや無理でしょとか思いながらも、まぁ、うん、結局入学したんだもんな。
まぁ、で、俺の十の誕生日に宮廷から迎えが来てさ。
俺、母さまがカネで雇った人間だと思ったわけ、最初。でもそれにしては身なり整いすぎてるし口調も綺麗すぎるし、何これってなって。
で、事情もそこそこに、なんか父さまの誕生日会とかが近かったらしいんだけど、強引に連れていかれようとするから、俺、「助けて誘拐される! うわー! 誘拐される! 助けてー!」って叫んだんだよ。
近隣住人、母さま避けてるけど、俺はまぁ頭もまともだし、ほとんど一人暮らしみたいなもんだからって気をつけてくれたわけ。
だから、宮廷からの使いを村人が取り囲んで「どこ連れてくんだ」ってもんよ。
夜中ってのがまた間が悪くてさ。近隣住人、ついに問題のどこぞの偉い人が母さまの口封じにきて俺まで殺そうとしてるって思ったみたいで。
俺もそう思ったわ。恐怖やばかった。
知らないやつにどっか連れて行かれるってマジ怖ぇの。
本当に。
でも、誤解だったわけで。
いや、知るかって話だよ。
田舎の村人に反抗されたとか超機嫌悪くなったの、どこぞの爵位もちらしくて、なんというか。
父さま、どうしてこの人たちを使いに選んだの。
その上、そのどこぞの爵位もち、後々この件でイーヴァン兄さまがボロクソ言って恥かかせられたらしい。
まぁなんというか、そのなり行き上、俺はどこぞの爵位もちにめっちゃ嫌われてるらしい。
名前さえ覚えてないんだけど、それって余計に怖すぎる。
まぁ、これにはさらに後日談があって、拗ねてるどこぞの爵位もちに、ソティリオ兄さま、貴族風情が皇族の血を引くものを見下すなとかブチギレたらしくて。
俺のせいじゃない。
俺のせいじゃないって。
でも、すごい逆恨みされてそうなんだよな俺が。いつか闇討ちとかされないよな?
あ、まぁそれで。俺は速攻宮廷から逃げ帰って、近隣住人に超謝ったけど、それとなく「もう関わらないでくれ」って言われて、まぁそうだなって。
母さまだけじゃなくて俺も避けられるようになったってわけ。
これ以上の理不尽、ある?
信じられません。
本当に……本当に。
ピートを囮にするなんて。
エロイーズさんには直接の関係はないはずです。巻き込むようなことをすべきではありません。
それに、白昼堂々、人の多い中央通りで事を起こすなんて。
あぁ、私がもうちょっとしっかりしていれば。
だって、だいいち、あのお方の推測が本当なら、あのお方に勝ち目なんてないのに。
無辜の人を巻き込むような場所で攻撃魔法を使う召喚悪魔がいますか? 死者が出れば召喚者が死罪になりかねないというのに?
「直接攻撃に出なかったね、召喚者を殺そう」とか、そんな、エロイーズさんに何の罪があるというのですか。召喚者に害が及んで反撃しない召喚悪魔がいますか? 何のための不干渉の申し出だと思っているのでしょうか。どうしても手を出したいのなら、陰湿なやり方でやればいいのです。魔法学校から追放するなり何なり、せっかく王侯貴族を脅してすかして手に入れた弱みをここで使って仕舞えばいいのです。それがお得意じゃありませんか。
あぁもう。
もう、こんなの。
あの悪魔の方がよっぽどまともではないですか。
あのお方が軽率な行動に出たと私が知ったのは、ようやく夕食の席でのことでした。クラウディウス様が私を見つけて、夕食に誘ってくださったのでご一緒したのです。そこで、彼の口から、エロイーズさんが疲れて先に寝てしまった、悪魔が言うには聖獣に急に襲われて疲弊したとのことだけども、意味がわからない、と聞いたのです。
空いた口が塞がらないとはこのことですが、間抜けに口を開けているわけにもいかず、とにかく彼女に怪我がなかったか尋ねました。あのお方に直ちに連絡を取りたくなりましたが、クラウディウス様に不審に思われては元も子もありませんので、無難に夕食をご一緒し、なるべく急いで部屋に引き上げてきました。
アルフレード様は消灯の零時まではどこかで時間を潰されるおつもりのようで、お姿はお見かけいたしませんでした。少し寂しさも覚えながらも、今朝のような要らぬ疑心暗鬼の心配のないことにひとまず安心します。
いつものように自分のベッドに横たわって、腹の上に手を重ねて目を瞑ります。
いつも以上に地獄のような時間に、嫌気を覚えながらも、あのお方に心話を送ろうとしたとき、部屋がノックされました。
上体を起こして、一寸、考えます。私に用がある方はいないでしょうし、そうすればアルフレード様のお客様ということになります。ならば、居留守を使ってしまった方が良いでしょう。
そう結論を出したものの、ドアの前の人物は部屋に私がいることを知っているかのように、またノックをしました。
ベッドから降りたのは、もしかしたら、私の意志でなかったかもしれません。訪問者の諦めない熱意がひっそり私に忍び寄ってきて、それに操られたかのような心地でドアを開けました。
知らない人が立っていたら、よかったのに。
そこにいたのは、あの悪魔でした。




