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【それでも私は】それぞれの境遇【愛を謳いたい】

 「それでも私は愛を謳いたい」は、「39スレ目 安価で大学決めたら異世界の魔法学校に行くことになった。続30」のネタバレを含みます。



 39スレ目まで読んでから、読むことをお勧めします。



 以下、緩衝材代わりに短編を挟んでおります。




――――――――――――――――――――

 なんで、わたしが、と思わなくもない。

 いやでもねぇ。

 新入生の問題児が入学式でも何かやらかしたらしいのよ。

 で、そうなると、カルロスはどっかに呼ばれるじゃない? 多分ね。わからないけど。でも、何かしでかしたって話を聞いて、すぐに、ばーって走っていくのを見ちゃったのよ、わたし。

 それで、血の気盛んな攻撃の新入生から部屋に入れてくぞー、次は身体強化だ、防御は待てるだろ、魔法具はもっと待てるだろ、って周りが活気付くのを聞いてたら、ふと思ったわけね。

 特殊うちの新入生、どうなってるんだろって。

 まぁ、気になるわよね。カルロス、どっかに走って行ったの見てたし。

 なんと、本当にたまたまなんだけど彼ら部屋の場所まで知ってたし。学年ごとで階が違うから、特殊クラス十数人が横並びとかじゃないのよね。だから本当にたまたまカルロスから聞いてたの。本当に、特殊横並びじゃなくてよかったわよ、馬鹿の四年と一緒の並びとか、嫌すぎて魔法学校やめて陰気臭い故郷に帰るか悩むくらいだもの。

 このクレア・ラブキンがなんとかしなきゃならないって、まぁ、思っちゃったのよ。他の宰領生がどうにかしてくれてればいいけどねぇ。なんか、司会の人選漏れてたとか話漏れ聞いちゃった後だし。あてにできないわ。

 それで、会場を覗きにいったら、案の定、三人あからさまに新入生が固まって、どうしようかって思案顔を突き合わせてるのね。

 まぁ、わたし、うっかりしてたの。

 こんな私だから、里の同世代に馬鹿にされるのが嫌で嫌で仕方なくて、勢いのまま一人で里を出て、王都でやっていくのは不安だからとりあえず魔法学校に入学してしまおうとか考えちゃったわけだけどサ。

 だって、まぁ、あの水色ちゃんで変な呪文で追い立てられたのが怖すぎて、他のこと忘れちゃってたの。仕方ないでしょ?

 今年の特殊うちの新入生、勇者殿下に聖女さま、それに第三皇子閣下なのね。王国の最果て、田舎者は近寄って近寄って、その纏うものの豪華さでようやくそれを思い出しちゃった。

 でも、ここまで近寄っていって何もせずに帰るのも変でしょ? 勇者殿下たちに変な人って思われるのなんて、最悪じゃない。一応、あと四年も私この学校で過ごすわけだし。

 だから、勇気をふりしぼって、自己紹介して、宰領生が諸事情で来れなくなったこと、部屋はどこそこだから、四人で話し合って決めて二人ずつ別れてね、って言うだけ言って、その場を離れた。

 その場に留まるのは無理だったわ。高貴な人って本当にそれと分かるのね。

 勇者殿下と聖女さまにお会いしたってだけで里では自慢になるわ。わたしを馬鹿にしてばっかりだったビアスのやつだって度肝を抜かすに違いないんだから。

 親切な方がお部屋の説明などを一通りしにきてくださいました。忙しいところをわざわざ来てくださったのでしょう、すぐに立ち去ってしまわれました。

 また気まずい沈黙になります。

 クラウディウス様とアルフレード様はそれぞれ全く別のところ見ておられます。どちらか一方に話しかけるという選択を強いられて、私は躊躇しました。私の立場上、クラウディウス様の方がいいに決まっています。でも、アルフレード様に「これからよろしくお願いします」という絶好の機会でもあります。この機を逃したら、お近づきになれない可能性もなきにしもありません。

 そんな雑念を振り払って、私がクラウディウス様へ声をかけようとしました。

 その時、背にしたアルフレード様の方が先に口を開いたのです。

「あ、お帰り……」

 思わず勢いよく振り向いてしまいました。そのせいか、アルフレード様の語尾が揺れて消えます。

 その言葉がむけられたのは、先ほど魔法詠唱して学校長へ連れ去られた彼女でした。

 えぇ、ずるいなんて思ってません。誓って本当です。アルフレード様のその言葉に、ゆるい適当な言葉を返すなんて許せないと思っただけです。どうせ、私に向けられない言葉だったのなら、最後まで聞いておけばよかったと思いました。

 とはいえ、彼女が来たことで、すっと自然に私たちは円になります。正面の彼女の眼力に思わず怯んでしまいそうになりますが、ここで怯んではいけません。

「えーと、まずはご紹介いただけません?」

 口火を切ったのは彼女でした。クラウディウス様に私の紹介を求めたようです。

「本人に訊くこともできませんの?」

 思わず口をついて出てしまいました。

 後悔がきます。

 これで、彼女と仲良くなんてできそうにはありません。

 彼女は、笑いました。

「では、私から。エロイーズ・カネと言います。そちらは?」

 それでも全てが敵とでも言うように目は相変わらず私を睨みつけていました。

 どうやら、苦労してきたお方のように思えます。誰も彼も敵と思わなければ、耐えられないような。

 まぁ、私には関係のない話です。いえ、これから関係なくなります。私と仲良くなんてしても後々悲しむだけですから。

 えぇ。

 余計な人とは関わらない。それが、一番、いいのです。

「あなたに名乗る名前はありませんわ」

 私は今、彼女のように笑えているでしょうか。

 クラウディウス様とアルフレード様がお互い視線を交わすのを感じました。私とエロイーズは睨みあいを続けます。意外なことに、その視線を先にそらしたのは相手の方でした。ふっと急に何か不安に駆られたように瞳が揺れたかと思うと、彼女はもう私を睨んではいませんでした。

 不思議な方だと思いました。

 険悪な雰囲気に陥ったところに、クラウディウス様が仰います。

「さて、二人ずつ部屋に別れるようにと言われましたが」

 どうしますか。

「……」

「……」

「……」

「……」

 誰も、口を開きませんでした。

 私たちにはそれぞれ立場があります。私は聖女、クラウディウス様は第二王子で勇者、アルフレード様は亡命希望の第三皇子。何か提案すればその責任を負わなければなりません。ですから、平民である彼女が、当然の答えを言ってくださるのが一番穏便なのです。

 ここは、女性と男性で別れましょう、と。

 そういう、当然の答えを。

 彼女は何も言いません。どこかよく分からないところをみています。

 ……?

 なぜでしょうか。何も言いません。

 ちょっと、戸惑って、クラウディウス様を伺います。肩をすくめられました。

 彼女は相変わらず、何もない一点を見つめています。

 アルフレード様がため息をつきました。私は、思わずその息を両手で封じ込めたいという衝動に駆られましたが、耐えました。えぇ、耐えました。完璧に。

 クラウディウス様の疑問の視線に、首を振って答えるアルフレード様。ともかくアルフレード様はこうなる彼女を多少ならず見ている、とそういうことでしょうか。

 ……何をしているのでしょうか。やはり、一点を見つめているように見えます。いえ、その目が僅かに右へ左へ動いています。何かを、読んでいるのでしょうか。いったい何を?

 誰かと個人的なやりとりをするならば、心話でいいはずです。私とあのお方がそうしているように。

 いったい何をしているのでしょうか。ふと、クラウディウス様も私同様に彼女を探っているのに気づきました。

 ふと、アルフレード様がどんな表情をしていらっしゃるのか。気になって気になって仕方なくなってきます。どうか不自然に思われないようにと、その様子を伺います。腕を組んで、左足に体重をかけ、呆れた表情で空を睨んでいらっしゃいました。

 心の中の何かが、弾けたような気がしました。木がたわんでたわんで、その力に耐えきれずに折れてしまうように。

 エロイーズさんは、なぜか知りませんが、アルフレード様に待ってもらえるのです。おかえりを言ってもらえて、待ってもらえるのです。

 ずるい。

 私は咄嗟に顔を伏せました。顔が醜く歪むだけで、涙もないのですから。この身体は。もし、アルフレード様に覚えておいていただくなら、笑顔がよかったのです。

 この身にはあまる我儘なのでしょう。だから、胸が痛むだけなのでしょう。

 とはいえ、その悲しみはあまり長持ちしませんでした。

 というのも、

「あみだくじで決めましょう」

 と、ようやく口を開いたエロイーズが言ったからです。

 私は咄嗟にその言葉が飲み込めませんでした。

「あの、線を引いて、というやつですか?」

 クラウディウス様が訊きます。確かにそれしかありませんが、今、この4人で二部屋へ別れようという話をしているのですよね? 私、何か勘違いをしているのでしょうか。

 彼女の答えはイエスでした。

 今、この4人で二部屋へ別れようという話をしているのですよね?

 その疑問で頭がいっぱいになります。

 この状況で、わざわざ、あみだくじ。つまり、アルフレード様かクラウディウス様と同室になりたい、ということです。格好からするに庶民ですから、どちらかとお近づきになってという腹づもりかもしれません。

「貴方が何か細工をされるのではありません?」

 もっと穏便な物言いはできないのでしょうか、私は。アルフレード様にどう思われるか気になって、ちらっとアルフレード様の方を伺います。私の意見に同意してか、何度も頷いていらっしゃいました。

 ちょっと肯定された嬉しさが先に来ましたが、彼女、何か、本当に細工するつもりなんでしょうか?

 そうすると、彼女は何か早口で捲し立てます。流石に、私の言葉に怒ったのでしょうか。チラチラと御二方の様子を見ますが、私と同じく何を言ったか聞き取れなかったようでした。

 えっ?

 紙を所望されたので、クラウディウス様が提供したところ彼女が線を四本ひき、私にその下へ、1と2を二つずつ書き込めと言ってきました。

 本当に、あみだくじしますの?

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