再会
ブラム・ストーカーが書きかけの原稿を私に見せながら笑っていた。
「これはかつてない小説になるぞ。ミステリーとホラー、そして伝説とすべてを含むだろう」
「とは言うが、まだたった3枚しか書いてないではないか。だいたい、主人公の吸血鬼がこんな老人では読者が食いつくか微妙だな」
「食いつく!?読者は人間だよ。この吸血鬼は君と同じく、血を飲むと若くなる」
「でも、第一印象は大事だと思うがな」
「…」
少々言い過ぎたかと私は反省した。しかし、ブラムは怒る様子も落ち込む様子もなかった。
「僕は主人公の印象よりも主人公の最期に重きを置いているんだ」
「と言うと、主人公を殺すつもりか…?」
「まあね。心臓に杭を打ち込むか、神の力によって焼き尽くすか…」
ブラムの目が怪しく光った気がした。
「僕は決めたよ」
ブラムは勢い良く立ち上がり、片手を挙げた。
「これでも喰らえ!薄汚い悪魔め!」
彼がその手を振り下ろした途端、大きな十字架が落ちてきた。
私は生きていた。背中がひりひりと痛み、煙が出ていた──。
ん、いや、先程のは夢であるはずだ。散乱したワインボトルがかろうじて私と現実を繋ぎとめてくれた。それにしても皮肉だ。
しかし、先程のが夢だとすると、一つ疑問が生じる。この背中の痛みは一体…。
「ごきげんよう」
振り返ると、昨日のガキがいた。手には十字架、ませた冷やかな目が無性に腹立たしい。
「直ちに私の家から出ていけ!」
と、私は怒鳴ったが、そいつは怯むどころかにたにた笑い始めた。全く気味の悪いガキだ。
「君、昨晩より老けたな」
「二度とその口叩けないようにしてやるぞ!」
「おやおや、坊やは腹ぺこでご機嫌斜めですか?」
何という態度だ。こんなに愚弄されたのは生まれて初めてだ。杭でも打ち込んでやりたい。
「そんな怒るなよ。空腹な君のためにおやつを持って来たよ」
憎たらしいガキは得意気に麻袋をちらつかせた。