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血の兄弟ーローマ教会の秘宝  作者: F.Y.ホルムスキー
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二つの影

霧で包まれた街角で、街灯によって二つの人影がぼんやりと浮き上がっていた。それらはほんの少しの間、微動だにしなかった。

背の高い影が口を開いた。

「お前、まさか…」

「残念だったな…。僕も君には用はない」

背の低いほうの影はそう言い残して深い深い霧の奥に姿を消した。

もう一つの影はしばらくそのままたたずんでいた。


その様子を一人の背骨の曲がった老婆が見ていた。彼女は何かきいきい甲高い声を挙げ、近くの家のドアを叩き始めた。家の主人は小言を言いながら老婆を閉め出した。彼女の話を聞く人など、昔からいなかった。

彼女の影もまた、霧に飲まれた。

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