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洋香と真紀 その1

 かつての私の友人に、洋香(ひろか)という女の子がいた。

 今から彼女について語る。私の親友であり、最大の敵であった彼女について。


 すべては保育園で、私と洋香が出会った時から始まった。

 彼女とどんな風にして知り合い、何と言って友達になったのか、細かいことはもう忘れてしまったが、私たちが親友になったのは確かこの時だったはずだ。

 当時、引っ込み思案で人見知りだった私は、外交的な彼女との出会いによって、すぐに周りの人間と打ち解けることができた。私たちは本当に仲が良く、喧嘩をしてもちょっとした事で仲直りができ、なにより元気で明るい洋香はいつも私を笑わせてくれる存在だった。

 やがて私たちは小学校に上がり、それぞれが新しい友達を見つけていく中、私は他の子と遊んでばかりいる洋香にこんなことを言った。ほんの思いつきだった。

「ねえ、前みたいにもっと仲良くしようよ。保育園の時みたいに」

 こんな恐ろしいことを言ってしまったことを、今では後悔している。こんなことさえ言わなければ、私たちの生活はもっと平穏なものだったに違いないからだ。


 小学校三年生になったとき、ある問題が起きた。

 きっかけは、真紀という女子生徒が転入してきたことだった。一見大人しそうに見えるが、フレンドリーで、よく笑う子だった。私と洋香は、そんな彼女とすぐにと打ち解け、いつも一緒に行動するようになった。

 しかしある時、真紀と洋香が酷い喧嘩をした。理由はよく覚えていないが、洋香が一方的に真紀に責められているようだった。

 休み時間になると、真紀はわざと洋香の机にぶつかったり、椅子を蹴ったりした。その他にも、植物のスケッチをしている洋香に、どこからかむしり取ってきた雑草を投げつけたり、砂を振りかけたり「バカ」や「キモイ」などの罵声を執拗に浴びせた。

 一方私はというと、ただその隣でひたすら真紀を睨みつけるばかりだった。情けないことに、それくらいしか行動を起こせなかったのだ。

 真紀の意地悪でわがままな態度は、どういう訳か日に日にエスカレートしていった。私と洋香は次第に真紀を恐れるようになり、気がつけばなんでもういことを聞く、彼女の操り人形になり果てていた。

 他の子と遊んではいけない。ずっと友達でいなければならない。真紀は私たちにそう命令した。まるで、意地汚い悪魔とでも契約したような気分だった。一度だけ、私はこの命令に背いたことがあったが、その後ひどい目に遭った。クラス中が私の悪い噂話であふれていたのだ。もちろん真紀の仕業だった。そんな状況の中、真紀はこんなことを言っていた。


「おばあちゃんになっても、ずっと私とお友達でいてね」


 私たち二人は、しばらくの間この好意的な愛情溢れる嫌がらせに縛られて生活していたが、ある時ついに洋香の心が悲鳴を上げた。

 それからとういもの、洋香は学校に来なくなった。その時、ようやく自分が置かれている状況の異常さに気がついた私は、担任の先生にすべてを打ち明けてしまった。

 先生は私に「みんなの前で本当の気持ちを真紀ちゃんに伝えなさい」と言った。何故みんなの前で言う必要があったのかはわからない。だが私は言うとおりにした。

 その日は洋香も学校に顔を出した。私たちが教卓の隣に二人並んで立つと、クラスメイト全員が「何が始まるんだろう」とでも言いたげな様子で私と洋香を見た。

 そして、私たちは言い放った。今考えれば、それはとんでもない告発だった。

「吉岡真紀さん、もう私たちをきょうせいするのはやめてください。命令するのもやめてください。今度から私たちは、他の子たちとも遊びます」



 

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