11.5
彼女はブレイクの一員で、今の今まで演技をしていた。飛び入りの私以外は全員が演技だったのだ。
それはつまり、先程彼女が放っていた言葉も演技ということにならないか。
「本当にごめんね」
落ち着きを取り戻した彼女は私から離れ、目元をこすった。
その仕草と今までの彼女を思い返し、あれは演技ではなく本心だったのだと思う。しかし自分の考え以外の支えが欲しかった。思わず口が開く。
「じゃあさっきの君の言葉も、演技ということなのか」
「そ、それは違うの! あ、れは、わたしの本心」
手をばたばた動かして伝える彼女に頷いて返す。
「そうか。ありがとう」
短いやりとりだったが、これは演技じゃないと確信できた。根拠はよくわからない。彼女が必死に伝えようとしているからだろうか。
「アレはね? 最初は吃驚して止めようとしたんだけど止められちゃって。仕方ないからタケさんに合わせようと思ってたんだけど途中から演技だってこと忘れちゃってて、よくわかんないうちにこの口が動いててね、演技と現実の区別がつかなくなっちゃって、いやでもこれが現実というのはちゃんとわかってるんだよ? でもね」
「わかってるよ」
忙しく口を動かす彼女の頭を優しく撫でる。一瞬でも疑った自分が馬鹿らしく思えた。
彼女が落ち着くのを待って、私がずっと抱えていた問いを訊ねる。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「いいよ、なんでも」
「どうして、私と友達になってくれたんだ? 私は君みたいに何も持ってない。名前が似ていることしか共通点はなかったはずだし、すぐに離れていくと思っていた」
彼女は明るく社交的だ。だから一クラスメートとして接せられたと思っていたが、それから私と彼女は一緒だった。
彼女は罰が悪そうな子供のように俯く。
「……怒らないで聞いてくれる?」
「ああ」
ためらいつつ彼女は口を開いた。
「ゆうっちは、わたしの憧れの人なんだ。自分の意思で行動できて、芯の強い女の子。背も高くてカッコイイし、微笑んだときはきっと可愛いしさ」
彼女はふいに俯く。
「ゆうっちと一緒にいれば、私もそうなれると思ったの。ゆうっちみたいになりたかったの」
私の両手をギュッと握って、怯えた様子でゆっくり顔をあげた。
「怒った?」
「どうして、怒るんだ。むしろ嬉しいよ」
私は本心でそう答えた。
「私も同じだから」
「え?」
不思議そうに彼女は首をかしげる。
「君は私の憧れなんだ。辺りを明るく照らし、暖かくしてくれる優しい女の子。小柄で愛らしく、笑顔はとても可愛らしい」
「何だお前ら。似てないけど似たもの同士だな」
彼が馬鹿にしたように私と彼女を、私達を見ていた。私達だけで話していたので傍に彼がいることをすっかり忘れていた。それは彼女も同じようで、恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「それにしても、二人の友情はすごいのな。少なくとも二日前は一緒にいただろ? それだけしか経ってないのに、もう三年は確執があったような奴らのやりとりだったぞ」
「いいじゃない。私とゆうっちはそういうふかーい関係だってことだよ。ね?」
「そうだな、ひろっち」
彼女の自然に出た言葉に満たされ、簡単な返ししか出来なかった。
「あれ、今はじめて」
彼女は口を留めて目を見開き、ふっと頬を緩めた。
「これからもよろしくね、ゆうっち!」
今までに無いゆるんだ顔で、私に微笑んだ。




