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ブレイク  作者: 湯城木肌
44/48

11.3


「親友か。いいねえ。で、あんたはそれを取り戻したいと。でどうやって取り戻す? こっちには男が二人、あんたは一人のか弱い女の子だよ。腕っ節に自信があるとは思えないしねえ」

 余裕の笑みを保ったまま女性は人差し指を私につきつける。

「あんたの熱い想いは伝わったけど、はいそうですか、って渡しはしないよ。なんにせよ力が無きゃ実現は出来ないのさ」


 その通りだった。

 私はこの場をどうにか出来る力は持ち合わせていない。腕力など問題外だ。


「ゆうっち! わたしはだいじょ」

 未だ男に捕まったままの彼女が叫ぶが、すぐに男に口をふさがれた。それでも彼女は言葉を発しようとしているが、言葉にならない声が聞こえるだけで、意味は伝わってこない。


「黙ってないで何とか言ったら?」

「何をしたら、彼女を放してくれますか」

 相手の眼光に負けないように、睨み返す。

「交渉ね、それしかないとは思っていたけど」女性はふっと表情を変え、私を見下ろす。「じゃあこの二人の相手をしてもらおうかな、この子の代わりに」


 女性の言う「相手」の意味は、詳しく言われなくとも、分かる。女に喧嘩相手を求めるわけはないだろう。異性としての行いを求められている。

「わかった」

 私は目を逸らさないようにして頷いた。


 その方面に関して経験は無く、抵抗もある。しかし、彼女を助けるためならば躊躇はなかった。彼女は私にとって一番大切な人だ。彼女を守れるなら、私がいくら傷ついてもいい。


「駄目だよ!」

 彼女が男の腕をかいくぐりながら、叫ぶ。

「わたしのことは気にしなくていいから!」

「そうはいかない。これは君を傷つけてしまった私の償いでもあるんだから」

「そんなの許さない。ゆうっちがわたしの代わりに傷ついたら、そのほうがわたし傷つくよ! それだと償いにならないでしょ! だからいいの!」

「私は君が傷つくのが嫌なんだ。もう傷つけたくない。分かってくれ!」

「わかんないよ!」

 想いの限りをぶつける。ぶつけてきたものをまたぶつけ返す。

 彼女を説得しようと想いのままをぶつけ続ける。三人組のことなど気に留めず。これは私と彼女の問題なのだ。


「あー、あのさ、なんつーか」

 ふいに背後からだるそうな声が聞こえる。三人組以上に気にしていなかった、彼の声だった。

「これ、いつまで続くんだよ?」

 緊迫感が全く無い気の抜けた言葉が、ぽんと放り込まれた。


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