6.5
ついてきてくれると勝手に思っていた。
一人で帰宅しながら先程の彼女とのやりとりを思い返す。
一人で帰るのは、彼女と帰宅の方向が違うから当然の話ではある。
彼女と一緒に帰りたくはあるが、道が異なる以上それは望んでも仕方ないことで、そのことで落胆することはない。
ただ私が部活に入部しようとしたら、彼女も自然と同じ部活に入るだろうと、勝手に考えていた。そうでない場合など考えてもいなかった。
例えどこに行ったとしても、彼女は私の前に、隣に、後ろにいると、思っていた。
いることが当たり前で、傍にあるかどうかなんて意識せず、いつのまにか一人過ごすことがなくなっていたことに気づかないほど自然だった。
寂しい。
「寂しい?」
何故寂しいという文字が浮かんだのか、よくわからなかった。
寂しいような気もする。
けれど、私は本来一人であったし、それが常だった。
部活が一緒でないだけでクラスでは同じであるし、部活に入っていない今と触れ合う時間は同じだ。
何も変わらない。
私と彼女の放課後は今までどおり交わらず、同じ時間を過ごすことはない。
同じはずなのに、変な気持ちが渦巻いている。
自分の気持ちは読書で登場人物の気持ちを読み取るように把握することは難しいのだ。
気持ちはいくら描写したところで、文章化して客観的に理解することは出来ない。想像で補完するしかない。自分の気持ちであればなお更できるわけが無い。
「そうだな」
自分の中で結論をつけ、考えるのをやめる。
答えが出たとしても、自分のダメさが明るみに出て、終わりだ。
そうに違いない。




