6.1
放課後、私と彼女は三号棟隣にある文化棟に来ていた。文化棟の一階は視聴覚室、二階は図書室という作りになっている。文学部は放課後図書室の一角を使って活動しているらしいのだ。
階段を上がり、図書室の部屋を開けて中に入る。
「おお。きれいだね」
「そうだな」
ここの図書室は中学校のものとは違い古臭いイメージはなく、しかし新しすぎて扱いに困りそうなこともなく、丁度いい具合に小奇麗な印象をうけた。
手前にカウンターと机が二つ揃えてあり、窓のある一面以外の壁は本棚で隙間なく隠れている。部屋中央には本棚が何列も並んでおり、部屋全体を見渡せないので大きさはよくわからないが、クラス教室三つ分程度の大きさだろう。
「ここで、あってるよね?」
「そのはずだが」
彼女が不安そうな声をあげたので、即座に答える。今図書室には私達二人しかおらず、文学部の先輩達の姿が見えなかった。
運動部とは違い比較的静かな部が多い文化部であっても室内で息を殺せるほど静かにはならないだろう。けれどもどこか本棚の陰に隠れているだけでどこかにいるかもしれない。
とりあえず図書室内を回ってみようと彼女と結論を出した時、教室の静けさを破る音がした。後ろの扉が勢いよく開け放たれた音だった。
驚いて後ろを振り向くと、そこには女子生徒がうつ伏せで倒れていた。その女性は「いてて」と服についた埃を払いながら立ち上がる。
女子生徒は私達の視線に気づくと「いやあ、これはかっこ悪いところを見せちゃったね」と力なく笑った。
この人は。
顔を見てすぐに思い出した。彼女は先週の部活動紹介で一人で勧誘していた快活なセンパイだ。
「ぶんげ……じゃなかった。文学部の仮入部かな? 君たち新入生だよね」
「いえ、仮入部というわけでは。本日は見学に」
「はい、わたしたち今日はここ見学しようかな、って来てみたんです」
「見学か。いやあ見学でも嬉しいねえ。興味を持ってもらえたってことだから。最近はそういう子も減ってねえ。困ったもんだよ」
腕を組んで、うんうんと頷いた。何故あまり歳の差はないのにこの反応なのかは問い返せなかった。問い返す前に先輩が彼女に質問をしたからだ。
先輩は小首を傾げて、彼女を注視する。
「あれ? もしかしてだけど、ひろちゃん?」
彼女はニッと笑って応える。
「お久しぶりです!」




