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5.4
その日はその後二つの授業を受け、終った。彼とは話さず、ただ授業を受けてその日を終えた。
彼に真意を聞き出すまでもない。
彼はその後も変わらない調子で授業を受け、特別講習最終日も変わらない差を残した。
後から聞いた話ではあるが、彼の成績を知った塾講師が、成績実績として残したいがため彼を無料で招待したのだという。だから、彼がパラパラ漫画を書いていても何も言わなかったのだ。
彼は他人から臨まれて場に入り、奮闘することなく、頂点をとる。
私は自分の意思で場に入り、奮闘を重ねて、手さえ届かない。
私は心の中で納得した。
これは私に対する試練なのだと。
彼は優秀すぎる故に間違っている道を歩んでいる。
私が彼を正さねばならない。
これは避けられない闘いだ。彼は通らざるをえない障害なのだ。
私は私の道を突き通せるか否か。
それが私に問われている。
ならば受けてたとう。
私は彼に決して屈しない。屈することがあってたまるものか。
そう志して半年を過ごし、私は高校入試に挑んだ。
結果、入学式の新入生代表として、彼が壇上に立った。




