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ブレイク  作者: 湯城木肌
18/48

5.2


 翌日、塾にやってきて教室へ入ると既に彼が席に着いて隣の友達と談笑していた。その他の生徒はまだ来ておらず、塾講師も来ていなかった。


 教室内には二人座れる長机八個が二列で並んでいて、十六人の生徒が一教室で授業を受けることが出来る。塾にはこの教室以外にも二つ教室があり、成績の近しいものごとに一教室にまとめ、指導する方法をとっていた。定期テストによって判断されており、初日のテストはクラス分けも兼ねていたのだった。

 つまり成績が上位の私と彼は特別講習の間同じ教室で授業をうけることになる。


 前から二列目右の机に彼は友人と一緒に座っており、私は前から三列目左の机の中央側に腰を降ろした。彼が机の左側に座っているので私の斜め前に彼がおり、その間に遮るものはなにもない。

 これで彼の努力をしっかりと目に収めることが出来る。そのための位置取りだった。


 しばらくして他の生徒も顔を出し始め席に着いていく。私の隣には誰も座らない。皆親しい友達と机を一緒にして学び、私が一人になることは常だった。

 最後に塾講師がやってきて授業が開始した。


 最初にテストの解説が行われたが、要点を掻い摘んだもので簡単に終わり、その後一問ごとの解答解説が書かれているプリントが配られ、各自復習しておくようにつげられた。

 そしてすぐに授業が始まる。


 塾講師は学校の教師とは比べ物にならない速さで黒板を白い文字で埋めていく。解説は要点を掻い摘んで終るものの、授業は真逆だった。


「点で覚えるのは全部を知り尽くした後だからなー。まずは線を隅々まで伸ばして、流れや理由を頭に叩き込めよー」


 のんびりとした塾講師の口調ではあるが、別の生き物のように手は全く動きを止めない。

 彼の教育方針なのか、信念なのかは分からないが、ここに通うようになって何度もこの言葉を聞いていた。単語や公式だけ覚えていても扱えなかったり意味が分からなかったりしたら一夜漬けさえも意味がない、ということらしい。

 そのため、彼が黒板に書いている間は全く休むことが出来ない。


 せっせとマシーンのように自身のノートに書き写していく。そこで内容について頭を働かせる余裕はない。働くのは手のみだ。


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