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ブレイク  作者: 湯城木肌
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5.彼との思い出

 彼と初めて出会ったのは、中学三年生の夏のことだ。


 当時も昔もただの知り合いに過ぎない。


 ライバルだとか友達だとか、強い衝突があったわけではないからだ。面と向かって話したことも、今日の廊下での出来事が初めてだった。


 私が中学生の時は今よりもダメな子で、学校の勉強だけでは理解が追いつかなかった。だから進学塾に通うことにした。

入って一年間はさほど成果は出なかったが、学年が上がって三年になると、校内テストでは五位以内に入るようにまで成長していた。市内統一テストでも上位に入ることが出来る程の実力を得ていた。


 自分が得た成果を実感し、小さいが熱い何かを心に感じるようになった頃、夏休みに突入した。進学塾は大抵夏期講習や冬期講習、学生の長期休暇に合わせた特別なカリキュラムが実施されており、私が通っていた塾も例外ではなかった。その講習では普段通っていない人でも一時的に生徒になり、特別講習を受けることが出来る。


 その特別講習に彼も来ていた。


 特別講習では生徒の実力調査と成長度合い確認のために初回と最終回にテストが行われる。結果は教室の後ろに大きく掲示され、自分の実力と他人との差を見つめることが出来るいい機会になっていた。


 そして、彼と私の差を見せ付けられた。


 当時の塾内での上位層の実力は横並びで、順位は毎回入れ替わり、その顔ぶれも変わらなかった。けれども彼はその上位層の争いに加わらず、飛び抜けた実力を見せつけ、私達を寄せ付けなった。


 彼は私達と五十点以上の差をつけ、一位の横に名前を記していた。


 各々が自身の成績に一喜一憂をしているざわめきの中、一位の名前が呼ばれ

るのが聞こえ、自然とその声のほうへ視線を向けた。視線の先にいた男子は掲示された順位を仰ぎ見ながら「おー」と感嘆の声をあげている。

 その彼に、私達と常に競っている男子が首に腕を回して乗りかかっていた。


「くっやしいな、コノヤロー」

「残念だったな」

「ほんとにな。なあ、何でお前勉強してないのにそんな頭いいの?」


 軽い調子で笑いながら、彼に問いかける。


 それを受けて、彼は考える素振りを見せたが、すぐに口元を緩めた。


「お前とは持っている才能が違うんだよ」

「何そのドヤ顔、ムカつくなー」


 彼らはそのやり取りの後も冗談を言い合い、教室を去った。私も掲示の前から離れ、筆記用具等を鞄にまとめ、教室を出た。掲示は授業の最後にされたので、後は帰宅するのみである。


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