3.4
話の流れから、「ブレイク」が何かの団体であることは把握できた。だが何をしている団体なのかはわからない。
私が彼女に問う権利は、ない。
好奇心がないわけではないのだ。彼女が所属していて、彼が入ろうとしている団体の詳細というのは、とても気になってしまう。彼女に興味があるからというよりこれは謎の答えを知ってすっきりしたいだけだろう。
つまりは自己満足でしかない。
彼女の彼への対応からして、あまり言いたい類のものではないのだろう。聞くべきではない。このことは忘れてしまおう。
漠然とそんなことを考えて教室に戻る。
昼休みにやることは基本的に読書か彼女との会話だ。彼女が話しかけてくればそれにずっと付き合うが、彼女が他の友達のところへ向かえば読書をすることになる。
今日の彼女は話したくなさそうだと判断したので、席について机の中にいれている本をとりだす。「玉葱少女」というタイトルの小説で、多重人格を持つ少女が本来の人格を取り戻そうと足掻く内容の本だ。
「ねえ」
挟んでいたしおりにかけていた手を止め、彼女を見上げる。彼女は席につかず、わたしを見下ろしていた。
「ちょっと付き合ってくれない?」
「ああ。わかった」
彼女の提案に驚きつつも、素直に受け入れた。
席を立ち、彼女についていく。