3.3
「それで話って? 今ここでいい?」
可愛らしい仕草で彼女は彼に視線を向ける。
彼女は私と行動を共にすることが多いが、その中でも親しみやすい彼女は高校でも新たな交友関係を築いていた。彼女に惹かれた周りの人が仲良くなろうと近づいてきたせいもあるだろう。少なくとも私にはそう見えた。
そうやって近づいてきた人たちを今日まで彼女の横でよく見ていたので彼もそうだと思っていた。だが違うと先程否定されたばかりだ。何の話だろうと考える間もなく彼が続ける。
「俺をブレイクに入団させてほしいんだ」
「ブレイク?」
呟いて、彼女に視線をやる。英語の”break”なら、よく使う意味は「壊す」だ。前後の単語によっては、「道を切り開く」や「くじける」といった意味でも使えたはずだ。
彼女は「え」と発した後、表情が固まる。
数秒の沈黙の後、「それって、どういう」とだけ口にしていた。
「そのままの意味だよ。ひろっちが所属しているブレイクに、俺を入れてもらえないかってことだ」
曖昧な笑みを浮かべ、「うん、分かった。……タケさんに話してみるよ」と彼女は答える。
「ありがとう。じゃあよろしくな」
彼は腕を軽く上げて礼をつげると来た道へと帰っていった。
「そうなると、ああなるよね」
彼女は眉を吊り下げた笑みで呟いた。