表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
9/72

大平原

修正しました  1/1

 迷宮の森を抜けてからアリエルの言葉の通りに進んでいくと平原に出た。


(ここは見覚えがあるな。このまままっすぐにこの平原を抜けてしまえばいいはずだ)


 空からでもこの場所はわかったということか。

 どの程度の速さでここを飛び越えたのかわからないがアリエルが平原というほどには広いのだろう。


 背の高い木や草などが無いためずいぶん遠くまで見渡せる。 

 遠くまで見渡せるというのは隠れる場所がないという意味でもある。

 自分も隠れることはできないが何かが隠れているという危険がない。

 弱者にとっても強者にとっても生きるということに対しての危険度が跳ね上がるだろうが自分なら食うもののこと、休憩のことなどといった問題を気にしなくていいので危険性は低いだろう。

 何がいるかわからないという問題はあるかもしれないがアリエルが言うようにここをまっすぐ横切ってしまうのがいいだろう。


 そうして日が落ちても歩き続けた。


 そうして歩き続けると光が見える。

 どうやら何者かが野営しているらしい。


 どうするべきか。

 

 いつもならば絶対に関わらないのだが俺は隣町までしか知らない。

 つまり今いる場所のことは当然として無頂の山までどう進むのが安全なのか、それがわからない。

 見た目が化け物なのでその手の情報は手に入らないだろうと諦めていたが現地の野営ならば見張りの会話を聞けばある程度この場所のことが分かるかもしれない。

 関わらなくても問題はないが少ない機会なので近づいてみよう。


 近づくと都合良く会話をしているのがわかる。


「…かし…見てもひど…のだ…な」


 少し聞こえにくい。あまり近づきたくないがもう少し近くにいかないとだめか。


「そうだな。でも俺はあれを起こした鬼族が恐ろしいと思ったよ」


「確かに俺もその気持ちはある。でも死者の都なんて言われ恐れられて死んだ後の骨さえ打ち捨てられたままなんて何度見てもやりきれん」


「たしかにそうかもしれんがあそこはもうとっくに終わってるよ。死んでいる数と比べると少ないがそれでも100や200じゃすまない数が悪霊になって町を徘徊してるんだ。幸いというべきかやつらは町跡からは出てこないが善意だろうがなんだろうが中に入ればあっという間に俺たちもやつらの足元に転がってる骨の仲間入りだぞ?」


「頭ではわかってはいるんだがな」


「真面目というか苦労症というか…毎年のように死者の都の鎮魂に出かけては落ち込むのなんとかならんかね。言い方が悪いかもしれないが終わっちまったことなんだから俺を見習ってすこしは関係ないって思えよ」


「お前は気楽過ぎると思うがな。それにこれは俺の性分だからな」


「毎年そうなってんだから知ってるよ」


「む。だがお前だって鎮魂の時いつも難しい顔をしているだろ」


「だから俺はあれを起こした鬼族が怖いだけだよ。怖くて鬼族の森どころか大森林にだってほんとはいきたくないんだよ。できることならこの大平原の見回りとかになりたいわ」


「ここなんて生き物なんかほとんどいないだろう。そんなところの見回りなんて俺たち軍のやることじゃないだろ」


「だからいいんじゃないか。楽だと思うぞ?それに騎士団様のやりたくない雑事を任されてるんだ扱いとしちゃあんまかわらんだろ」


「お前はまたそんなことを…いいかそもそも俺たちがやってる鎮魂だってな…」


 聞きたいことは聞けたな。

 あとは話が長くなりそうだし撤退するか。




 二人の話をまとめると、ここ大平原に生き物はほとんどいない、死者の都というのが大森林という場所か鬼族の森の近くにある、というものだった。


 ちなみに先ほどの会話に出た鬼族というのは俺でも知っている強力な種族だ。

 凄まじい身体能力を持っており特に腕力と生命力が凄まじい。

 なんでも最下級の小鬼ですら素手で岩を砕くなんてことを聞いたことがある。当然岩を砕いてもびくともしない体の硬さもあるらしい。

 しかも体が半分残っていたら死なないしそれほどの傷でも三日あれば完治するらしい。


 なんにしても大平原は安全ということが分かったんのでそのままここを抜けることにする。


 そして歩きながらアリエルに先ほどの会話について気になったことを聞いてみる。


 鬼族の森というのがどこか知っているか?


(たしか鬼どもが土人族の血を引いた王の治めていた都を攻めていると聞いたことがあった。土人族の都が死者の都ならばその近くにある森にでも住みついているのだろう)


 意外に詳しく知ってるんだな。


(そういった戦いが好きなやつらもいたからな)


 竜でも周りの争いごとなんか気にするんだな。あまり興味がないのかと思っていた。


(そんなやつもいるということだ。私はあまり興味がなかったがな)


 今回はそれが役に立ってるんだから何が役に立つかわからないものだな。

 

 しかし土人族の都か。

 今は死者の都なんて呼ばれてるらしいがアリエルが知ってるくらいだから昔は大きな町だったんだろう。


 悪霊は悪霊を襲わない。やつらは生きているものしか襲わないというのは有名な話だ。

 ならばやることは一つだ。

 土人族の作る武具は質のいい鉱石が多いらしいから久しぶりに鉱石の食事をいただくとするか。どうせ都が滅びているなら誰も気にしないだろうから安全だしな。


 死者の都に行くか。


(悪霊同士なら襲われることもないだろうからそれでいいかもしれんがそんな場所に何をしに行くというのだ?)


 食えそうなものを食いに行く。

 この平原は食うものはなさそうだしさっさと抜けるぞ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ