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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
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誤字修正しました  2/25

 門があった方からでは僅かに屋根が崩れているだけに見えたが、扉を開けてみると家の中は酷いことになっていた。


 家から離れた場所が巨大な拳が振り下ろされたかのように抉れている。抉れた地面の周りには大量の瓦礫が存在しており、家の一部だったのか地面だったのかですら分からない。

 この惨状を見る限りでは、こいつの家が壊れた原因は飛び散っている瓦礫のせいのようだ。もっと言うなら、何かによって地面が抉れらた衝撃で壊れたと言えなくも無いが……その原因は分からない。


「…コワ、レタ…スワル…ナイ……ココ…スワル」


 …壊れたから座る場所が無い。ここ…地面か? に座れと言うことだろうか?


「座っていいって言ってんのか?」


「…ソウ…イイ……」


「じゃあ座らせてもらうか。…あんたも、突っ立てないで座ればいいんじゃないか?」


 たしかにそうだな。まずは座るか。


 適当な大きさの瓦礫を軽く手で払ってから腰を下ろす。

 俺がそうしたのを確認してから、ザックが俺の後ろに座った。


(さて…では、話してもらおうか。貴様の家が壊れているのは理解できたが…それが何故、私たちの責任と言うことになっている?)


 アリエルの言葉には、何を話すにしてもまずはこれを教えろ、とでも言うように有無を言わせぬ迫力の様なものを発しているのが俺にも理解できた。

 そのアリエルの言葉を聞いた水精の体が波打つように揺れる。先ほどまではすぐに返事をしていたと言うのに、今回はすぐに返事をしない。


 これは、怖がらせてしまっているのではないか?


『アリエルさんは竜なのですから、ある程度は仕方ないのではないでしょうか』


「……イワ…オチテ、キタ…ツヨイ、チカラ……ケッカイ…ヤブル…タマ……コワレ、タ」


 岩が落ちてきて、強い力で結界を破って、玉が壊れた。と言っているのか? ……何を言っているのか全く分からない。


「強い力で結界を破った…か。しかし、岩ねぇ。………あ~、水の嬢ちゃん。もう少し詳しく話してくれないか?」


 水精はザックの言葉を聞き、こちらを向いた。

 …俺は質問していないのだが、何だというのだろうか?


(答えてやれ。もちろん、今後もな)


 なるほど。話していいのかどうかの確認か。


「…オオキイ……シカク…イワ…オチテ、キタ……マモリ、チカラ…ヨリ…ツヨイ……オオキイ…イッショ……タエラレ、ナイ………ケッカイ……コワレタ…」


 …分かりにくくなったぞ。

 辛うじて分かる部分は、大きくて四角い岩が落ちてきた、の部分だけだ。


『…大きくて四角い岩、ですか………』


(大きくて、四角い岩…か)


 二人とも含みのある言い方だ。

 大きくて四角い岩に心当たりがあるのだろうか?


「大きくて四角い岩、ねぇ。で、それが落ちてきた、と。そう言いたいわけか?」


「…ソレダケ……チガウ…デモ…ソウ………アッテ、ル」


「まあ、大体はあっているって認識でいいんだよな?」


「…ソウ…」


「なるほど、言いたいことは分かった。だがよ、それがここを案内するって話とどう関係してくるんだ?」


 ザックがそう言った事で、俺は勘違いに気づいた。

 俺は、水精の家まで行くと言うことに対して案内すると言う言葉を使った。

 だがザックは、案内すると言う言葉をこの大地の裂け目を案内すると言う意味で受け取っていたらしい。


「…アソコ…コワレテル…タカラ、モノ…アル……アゲル、イイ……デモ…カワリ……アタラシイ…イエ…ミツケ、ル……」


 ザックにどう説明するべきか迷っていた時、水精が抉れた地面のほうを指差しながらそう言った。


「…宝物だと?」


 水精の発した「宝物」と言う単語を聞いたザックの言葉が硬くなった。

 一言しか発していないが、先ほどのような適当な感じはなくなっている。

 しかし宝物か。水精の宝物とやらがどんな物なのか、かなり気になるな。


(水精の宝物か。壊れているらしいが、貰っておけばいいのではないか?)


『ですが、宝物をあげる代わりに新しい家を見つけるように言っているのではないですか? 壊れていると言ってしますし、簡単に頷いてしまうのも面倒だと思うのですが…』


(家に関してだが…死者の都に穴を掘って、そこに水を入れれば問題ないはずだ)


「…シシャノ…ミヤコ…?」


 水精がアリエルの言葉に反応して死者の都の名前を出した。

 言われて困るものでもないが、いちいちアリエルと会話している時に割り込まれるのは面倒だ。


(こちらの話だから気にするな)


 アリエルがそう言うと水精は頷いた。


「…死者の都…」


 水精が黙ったと思ったら、次はザックの口から死者の都の名前が出た。

 しかしザックは、一言だけ死者の都という名を出しはしたがそれ以降は何も言葉を続けない。何かを考えているのか、それとも知らないだけなのか。

 どちらなのかは分からないが、一人で考えているだけなので気にしなくてもいいだろう。

 それよりは水精の家の話を気にするべきだ。


 アリエルが言ったように、本当にそんな適当な物でいいのかにかなり疑問が残る。


(魔力と安全があればどこに住処があるかは問題ではない。そうでなければ、こんな場所で生き残れるわけがないだろう)


 …言われてみれば、確かにそうだな。

 ここにあるのは水と岩ばかりであり、どう見ても食料があるようには見えない。そんな中で生きているのだから、必要な物は人間のそれとは違うのだろう。


 まあ、家を用意できるのであれば何でもいいか。宝とやらを見せてもらおう。


(家の件は何とかしよう。だから貴様の言う宝とやらを貰おうか)


「……タカラ…コッチ…」


 水精が移動を始めたので俺も立ち上がりその後に続く。

 ザックは俺が立ち上がったことで水精が移動した事に気がつたのか、あわてたように立ちあがった。その後は喋ることなく俺の後ろについて来ている。


 そして移動したのは、すぐ近くにある瓦礫が散乱している地面が抉れている場所だった。

 見た感じでは瓦礫しかないが、ここがなんだと言うのであろうか?


「…コノ、アタリ…アル……イッパイ、アル…チイサイ、イッパイ…」


 水精は地面を指差してそう言っている。

 一体何があるのかと思い視線を下に向けるわけだが、やはりと言うべきか何かがあるようには見えない。大量の瓦礫が転がっているだけだ。


「…ん? こりゃもしかして…」


 しかし、ザックにとってはそうではなかったようだ。

 水精が指差した辺りの地面に屈みこんで比較的小さい石を除けると土を払うように手を動かす。するとその場所には、水色に光る何かの欠片のようなものが存在していた。

 ザックはそれを手に取り覗き込むように顔を近づける。


「…間違いねぇ。かなり小さいし欠けてるが、こりゃ水玉じゃないか」


 水玉?


『確か固形の水の名前ですね。絶対に蒸発せず、水玉が持つ魔力のおかげで小さな物でも一粒飲めば一日は脱水を抑えられるとか…探索者や討伐者は当然として、騎士にも人気の品ですね。水妖を倒した時、稀に残すと聞いた覚えがあります。…その人気から、なかなかの値段で取引されているらしいですよ?』


 …そんな物があったのか。聞いた事もなかったな。


(それはそこそこ魔力を蓄えた水妖が、水場から離れて獲物を狩に行く事ができるようにと体内で作り出す物だな。大きさにもよるが、水妖や水精にとっては宝になるのかもしれんな……まあ、私たちにとっては全く役に立たんが。しかし、人間はこんな物を欲しがるのか)


『遠出をしなければいけない際、荷物を減らす事ができますからね。乾いた土地に大量に撒けば雨が降らなくても土地が枯れないなんて話も聞きます。価値が出て当然ですよ』


「……ここにも…これも、これも………これもじゃないか」


 俺たちがそうして会話している間にもザックは次々と水玉を見つけていく。

 その見つける速度は、目的の物がどこに落ちているのか最初から分かっているかのような早さである。


「…これはデケェな。でも、やっぱ欠けてんのか。今まで見つけたやつも全部欠けてるし………そういや、結界が壊れたとか言ってたな……この量の水玉と瓦礫…あいつの話も考えるなら……ここに散らばってる水玉を結界の核にしてたのか? ……ありえない話じゃないな。何の仕掛けも無くこれほどデカイ結界張ってるなんて話よりはよっぽど現実的だが……いろいろ問題もありそうだな。なあ、あんたはどう思う?」


 そんなこと分かるわけが無い。だから俺は首を横に振ることで答えた。


 だがまあ、この水玉が水精の言っていた宝なのだろうと言う事は理解できた。

 特に苦労したわけではないが、見つけたものが俺にとって役に立たない水玉だったとは…何となく拍子抜けしてしまうな。


「…そうか……お、ここにもあるな」


 そうして話しているうちにまた一つ水玉を見つけたようだ。

 本当に物を見つけるのがうまい。四つほど瓦礫を動かせば確実に一つは見つけている。


「……イッパイ…アル……ワタシ…タカラ、モノ……ゼンブ……アゲル…ダカラ、イエ…ミツケテ…オネガ、イ」


 俺からしてみれば大した物ではなかったが、約束は約束だ。ザックと分かれた後になるが、死者の都に池を作る事になりそうだ……水が凍らないようにメディアに話しておく必要もあるかもしれないな。


「全部もらっていいのか?」


「…イイ…デモ…イエ……ミツケテ…イッショ…タノ、ム…」


「…もしかしてなんだがよ、嬢ちゃんはこれの代わりに家を見つけろって言ってんのか?」


 ザックのその言葉に俺と水精がほぼ同時に頷く。

 家を見つける――と言うよりのは作ることになるわけだが…まあ、その辺りのことは俺の役目になるだろうし、ザックにはあまり関係ないだろう。


「これだけの量の水玉の代わりに家をねぇ。そりゃぁ、これだけ水玉があれば家くらい立つだろうけど……こんな場所に職人呼ぶなんて絶対無理だぞ?」


 俺が何とかする。ザックは気にしなくていい。


「そうか? あんたがそう言うんなら、そっちに任せることにするか」


 俺の返事を確認したザックは、俺に背を向けて再び屈みこんだ。そして先ほどのように瓦礫を退かしながら地面の確認を始める。

 そんな姿を見ながらこれからどうするかをアリエルたちと共に考えようとした時、ザックが独り言を話すかのような気軽さで話を始めた。そう――


「そういやよ、さっき嬢ちゃんが『死者の都』って口にしただろ? その死者の都なんだがな、最近強力な悪霊が現れたって話題になってんだ」


 ――死者の都の話を。


 ザックが死者の都の話を始めた時、無くなったはずの心臓がはねた気がした。

 確かに、先ほどその名前は出た。だがザックは、何故今、その話を始めたんだ?


 俺のそんな考えなど知らないとでもいうように、ザックは気にした素振りも無く先ほどまでと変わらず瓦礫を退かしながら水玉を回収している。


「それなりに前の話だが、大草原にある小さな村が襲われたのが事の始まりでな。村は壊滅。村の人間もかなりの数が犠牲になったらしい。だがまあ、ここまでならそう珍しい話じゃないだろ? 魔物の大群が悪霊の大群に置き換わったってだけの話だからな。問題はここからでよ。なんとその悪霊の大群は、逃げた村の人間を追いかけて近くの領地にまで攻め込んだんだ。で、その領地で騎士団と神殿のやつらと戦闘になった。……最初は、誰も勝利を疑って無かったんだが、蓋を開けてみれば酷いものでな。結果は惨敗。騎士団の半数以上がその戦いで死んだって話だ。詳しい事は教えてもらえなかったが、神殿のやつらが使う鎮魂歌も効かなかったらしい」


「結果的に神の慈悲とやらで助かったらしいが…まあ、神殿の連中が言ってる事だからな。そこは当てにならん。とにかく結論から言っちまえば、生き残りが居て、その生き残りが悪霊たちを危険視したって話だ。で、その連中がルフ要塞って名前の要塞を作ったらしくてな……今は討伐者ギルドの凄腕から始まりいろんな連中が集まってるらしい。炎帝、聖火、翁なんて古参の連中から、竜牙の姫って呼ばれてる新参。王都から派遣された騎士団と神殿の中でも選りすぐりの神官。賊みたいな連中と魔術師…最近では、鬼族も参加してるなんて話も聞くが……詳しい事は分からん」


「ちなみに、一回死者の都を攻めたらしいが失敗したって話だ。炎帝も、敗北してしばらくの間身動きが取れなかったとか聞いたな。……どこまで本当なのかはわかんねぇが、炎帝が敗北した相手は悪霊の王種だの、賊もどきの連中が死者の都に攻め込んでほとんど死んだなんて話もある。そのせいで作戦を練り直す事になったなんて話も聞くな。……だがな、死者の都には不老不死の秘法があるなんて話も聞くんだよ。騎士団の連中はそれの有無を確認するために賊を使っただの、竜牙の姫はその力の一部を手に入れただの…マジでよく分からん話ばっかだ」


「まあ、結局何が言いたいかって言うとよ――しばらくはあそこには近づかないほうがいいって事だ。話だけ聞きゃ面白そうだが、味方に背中からブスリなんてしゃれにならん。そんなくだらねぇ事じゃ、死んでも死に切れねぇからな。あんたなら大丈夫かも知れねぇが……そんだけ強けりゃいろんな連中に根掘り葉掘り聞かれると思うぜ。まあ、俺みたいな小心者の意見だから参考くらいにしておいてくれ」


 俺はザックの話を聞き終わった時、ザックが何故この話を始めたかのかという事など完全に忘れていた。

 ただ、頭の中は疑問が溢れている。


 …どういうことだ? 俺はそんな事をやれと命じた覚えは無いのだが…

 いや、それはいい。いや、よくは無いのだがすでに起こってしまっている事だ。どうしようもない。

 それより、ザックの話を聞いてようやくルフ要塞ができたのかを知る事ができたな。まさかいつの間にか人間と戦っていたとは…

 …いや、違う。そうでもない。


 悪霊の王種だと?

 炎帝と戦ったなんて話があるということは……もしかして、俺の事か?

 と言うより、不老不死の秘法? 確かに珍しいものを集めているつもりではあるが、何のことなのかまったく分からないぞ。


(ずいぶん面白い事になっているのだな)


『面白いかどうかは別にしても、思ったよりも面倒な事になっていましたね』


 ……それだけなのか?


(死者の都が狙われている事に変わりも無いだろう? 所詮、相手の事情が分かっただけのことだ。私たちには何の関係も無いではないか)


 そう、なのだろうか?


『アリエルさんではありませんが、その話自体はもう終わった事ですから考えても仕方ないですよ。まあ、何のことなのかわからない事も言っていましたから、すべての話が終わっていると言うわけではなさそうですが』


 要するに、考えても無駄だと?


『そこまでは言いませんが、特別な対策をするほどではないでしょう』


 …そんなものなのか?


『アリエルさんも言っていますが、相手の事情が分かったところでどうしようもない事もあります。今回の事がそうである以上、気づくか気づかないかの違いしかありませんよ』


 …言われてみると、確かにそうなのかもしれないな。

 先に手を出したのがこちらだったという事は分かったが、だからと言って何かが変わるわけではない。

 手を出さなければ見つかるのはもう少し遅かったのかもしれないが…言ってしまえばそれだけだ。いつかは見つかり、そして今と同じ状態になっただろう。


 …


 まあ、その事はいいか。考えても仕方ない。

 そんな事を考えるよりは、水精の家をどうするかを考えたほうが今後に役立つだろう。

 ザックの話を聞いた事で話がそれてしまっていたが、結局水精の家をどうするかは考えていないからな。…だがまあ、それも結局はザックと別れてからの話になるだろうが。




 ザックは死者の都の話を終えても、しばらくの間は水玉を探していた。だが腰につけた袋がいっぱいになったことに満足したようで、水玉を探す事をやめて立ち上がり、腰にある袋を取り外してこちらを振り向く。


「大体こんなもんだろ。じゃあ、約束通りこの迷宮の『宝』だ」


 そう言いながら手に持った袋を俺に手渡してきた。

 …そう言えば、ザックとはそんな約束をしていたな。

 別に忘れていたわけではないが、水玉をもらっても役に立たないし…そもそも、水玉は俺の考えているような『宝』では無い。

 要するに、必要ないのだ。


 だから俺は、その袋を受け取らずに首を横に振った。


「……これで全部だぞ? 別に、何処にも隠してないぜ?」


 そうじゃないと言った意思を伝えるため再び首を振る。


 水玉は、俺には必要ない。金にしても良いし、別の迷宮に行く時のために取っておいてもいい。お前が好きに使え。


「そりゃありがたいが……さすがに気前が良すぎないか?」


 お前の情報が、俺にとってそれだけ価値のある物だった。そう思ってくれてかまわない。


 これは半分以上本心だ。

 水玉は、俺にとって必要の無いものだった。金にするのも面倒だし、俺に水分は必要ない。そもそも、金にしたところでロウの商品を買う以外の使い道が無いのだ。

 だが、ザックの話は面白かった。

 役には立たなかったが死者の都のことも教えてくれもした。

 それにザックの手持ちに自由に使える金があれば、面白い話を調べてきてくれるかもしれない。


「嬉しいこと言ってくれるな。だったら、ありがたく貰っとくぜ」


『良かったんですか?』


 さっき言った通りだ。別に問題ないだろう。


『元は水精の物であったのですから、家を作る際に何かの役に立ったかもしれませんよ?』


(壊れている時点で大したことには使えん。こいつも、それが分かっているからの行動だろう)


 別にそんな考えは無いわけだが…まあ、訂正する必要は無いだろう。


「じゃあ見つけるもんは見つけたし帰るとするか――て言いたいとこだが、嬢ちゃんの家の件があるんだよな。何とかするっては言ってたが、伝はあるのか?」


 大丈夫だ。


「そうかい……それとよぉ…かなり言いにくいんだが、嬢ちゃんを転移で街中に飛ばすなんて出来ないわけだが、その辺りはどうするつもりだ?」


 その辺りの事も考えてある。


 ザックにそう伝え、転移の宝珠を取り出す。


「なるほど、ちゃんと考えてあったわけか。余計なお世話だったな」


 まあ、ザックにはああ言ったがこの転移の宝珠は偽物だがな。

 見た感じでは転移の宝珠にしか見えないが、魔力がこもっていないただの玉でしかない。ザックと別行動をするための言い訳として持ってきた物だが、最後の最後でようやく役に立った。


 俺はこいつを連れて行く。ザックは迷宮都市に帰ってくれていい。


「……なら先に帰らせてもらうとするか。それと、次の探索はいつにするんだ?」


 次の探索はこいつの家を見つけてからになるから詳しくは分からないが、そう時間はかからないはずだ。


「分かった……あんたが来るまで迷宮都市からは出ないから、次も絶対声かけてくれよ」


 ザックはそう言い転移の宝珠を発動させた。

 しばらくして転移が完全に発動しザックがこの場所からいなくなる。


 ザックもいなくなった事だし俺たちも帰るとするか。


(そうだな…そう言えば水精。貴様、名前は無いのか?)


「…スイ…」


(スイか。ではスイよ。約束通りお前の家を作ってやるからついて来い)


 アリエルの言葉にスイが頷き、その二人のやり取りに応えるように門が現れた。

 その光景を見たスイはすぐに俺の背後に回ってくる。

 別に何かを言われたわけではないが、急かされているような気がしたので俺は特に何かを言う事も無く門を潜って大地の裂け目を後にした。





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